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幻想い足跡  作者: うさぎ
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絡まった声

『幽暗の間』では、吸血鬼議会と元老院の間で、長らく計画されながらも突如として勃発した戦いが繰り広げられていた。敗北の代償は……消滅である。無論、議会も元老院も、この『虚無の宇宙』の舞台から退くつもりは毛頭ない。


 ドロットとラスティが激しく斬り結ぶ、鋭い剣先と刃が火花を散らし、両者の力がぶつかり合う瞬間、『無限の公理が紡ぐ世界』が形作られ、さらに激しい衝突によってその世界は砕け散った。

 ドロットは刺突剣を素早く反転させ、瞬時の体勢変化でラスティの腹部へ蹴りを叩き込む、ラドロットは軽やかに後退しながら「どうしたんだ、ラスティ? その程度が貴様の実力か? 吸血鬼の名折れだぞ……。」と嘲るように吐き捨てた。

 真紅の心の源が剣身に渦巻き、ドロットは鋭い突きを放つ、その刃先は、まさしくラスティの急所を狙い貫かんとしていた。


 ドカン! 真紅の『流星』が『地面』を叩き割る、その膨大な力により、『幽暗の間』の『半数』の時空座標が粉塵と化し、時空の破片が飛散した。虚無のクレーターからドロットが立ち上がり、さっと衣装に付いた時空の破片を払いのける。その剣先は、かろうじて致命傷を回避し、虚無に佇むラスティを指していた「次は、必ず貫く。」


 しかし、自信満々のドロットは気づいていなかった......ラスティの長い前髪の陰に潜む、不気味な微笑みを。

 ......

 ......

 吸血鬼議会――その議員たちは確かに一人ひとりが優れた実力を持ち、進取の精神に富み、冒険心に満ちていた、しかし……所詮は若すぎる(その大半は宇宙戦争時代に成長した存在だ)……若すぎるのだ。

 一方、元老院の面々といえば、そのほとんどがブルダの時代から名を馳せた古強者揃い。新鋭の若手と、歴戦の強者――その実力差は明白だった。


『幽暗の間』コア座標の議場では、戦いの幕が開けて間もないというのに、吸血鬼議会が誇っていた数的優位は早くも崩れ去っていた。ラスティがドロットに押され気味となる中、元老院の古強者たちはドロットの娘ルビーの指揮のもと、縦横無尽に戦場を駆け巡っていた。


 確かに、議会の精鋭たちが死に物狂いの反撃で数人の元老を討ち取る場面もあった、しかし、もはや流れを変えるには至らず、吸血鬼議会は後退を重ねるばかりだった。


 両陣の激戦のさなか、「名詞」も「概念」も「定義」も「公理」も「設定」も、さらにはそれらの概念密度の階層に至るまで、すべてが新たに創造されていく。仮説上の理論や構想──(証明されず、自明ともされない、まだ誰にも受け入れられていないような「仮説公理」さえも)例えば、『ィアナ』を超越する何か──『ィアナ女神』のような存在すら、今、ここで仮定されようとしていた。


「あとは貴様だけか……。」『幽暗の間』は無限の星晶石に照らされ、さほど暗くはなかった、むしろ、炎のように燃え上がる鮮紅色が空間を満たしている......。


 ルビーがこの血塗れの宴に臨むために選んだ月白色のドレスは、もはや鮮血にまみれていた。汚れた血が彼女の整った顔に張り付き、まるで生き物のように這い落ちる。その血まみれのハイヒールが踏みしめる時間と空間のすべてが、美しい深紅に染まっていた。

 振り向くと、暗紅色の瞳にドロットの姿が浮かんだ「父上、こちらは片付けました。」


 議会の上級議員は全て始末した……あとは目の前の女を殺せば……ドロットは憎悪に歪んだ笑みを浮かべ、心の源は暴乱のエネルギーで満ちていた。


 だがその時「ふ……。」ラスティが笑った。

 ......

 ......

『幽暗の間』の外、無限に広がる宇宙空間では、聖なる教会の艦隊が吸血鬼の血衛たちと激戦を繰り広げていた......誰一人として『幽暗の間』で起きている異変に気づいてはいない……かもしれない。


 これは血の匂いしない戦争だった、聖なる教会の艦隊の砲撃を受けようと、『光の懲戒隊』たちの『心の源』で浄化されようと、あるいは吸血鬼に貫き殺されようと、それは単なる死ではなかった。あたかも『物語そのもの』から削除されるように、彼らの存在、他の人物や場所との歴史的つながり、あらゆる関係性が『消失』してしまう――まるで最初から存在しなかったかのように、完全に消し去られるのだ。


 だからこそ、どちらの陣営も手を血に染めることはない、戦闘の余波で破壊された無限の異なる階層の『宇宙』を除く。


 しかし、戦闘の中に不穏な動きが現れた、聖なる教会の教皇ケイトと、ラスティの二人の親衛隊である。


「ふ……ついに時が来たようだな……。」ケイトが淡々と呟くように言うと、二人の親衛隊は互いの目を見交わし、やがて揃って教皇に向かってウィンクした。

 ......

 ......

 戦場から無限に遠いどこかに結界に隠された時空座標

 白薔薇の紋章旗が時空の織りなす風に翻る中「あら、もう勝負がついたのかしら?」

 退屈すぎて眠気に襲われていたジェシカは、ロサリンの肩をぽんと叩きながら「ねぇ……聖女殿下~、そろそろ出発してもいいんじゃない?」


「違う……何かがおかしい……」ロサリンは眉をひそめ、躊躇いがちに呟いた「もしかすると、聖なる教会の動きは……私たちが考えているほど単純ではないのかも……。」

 そしてロサリンは振り向き、ジェシカと視線を合わせると、とため息混じりに応じた「はいはい、分かったわ。予定通りに進めましょう。まったく、ジェシカったら……。」


「いえいえ!ロサリンは最高~」ジェシカはさわやかに笑いながら、心の源を滾らせ、戦艦を起動させた「さあ、行くわよ、お嬢さんたち!同盟者の支援に行きましょう……わたしについてきて、大暴れしちゃうんだから!」

 聖なる教会の、規模ばかりが大きく実用性に欠ける宇宙規模の巨大戦艦からなる艦隊とは異なり、白薔薇の戦艦はあくまで実用本位の、標準的なサイズだった。


 白薔薇の聖殿騎士たちは、この言葉をずっと待っていたかのように、一斉に戦艦を起動させた、ジェシカはロサリンに手を差し伸べながら、宇宙で最も輝く星のような笑顔を浮かべた「さあ、いらっしゃい、ロサリン聖女殿下。」


 ロサリンは頬を薄く染めながら、苦笑いして首を振った「もう……本当にあなたには勝てないわね。」白いレースのグローブをはめた手を、女騎士の手の上にそっと置きながら「じゃあ、頑張ってちょうだいね、ジェシカ団長。」騎士と聖女が瞳を合わせた瞬間──宇宙に無限の百合の花が咲き乱れた……。


「聖女殿下と団長ったら、あんなに仲良しなんて……まさか……。」

「わわわ……禁断の愛だぁ~……超うらやましいですぅ……。」

「ぐっ……~聖女殿下、早く団長様と結婚してくださいよ~。」


 聖殿騎士たちは恋人同然の二人を眺め、羨望の眼差しを向けていた……彼女たちは長年、女性ばかりと接してきた少女たちなのだから……ただ、そんな騎士たちの感慨に、ロサリンの頬はますます赤く染まっていくのであった……。


 ただ、騎士団の中に……妙な影が二つ混じっているようだった……漆黒と純白の改良型エルフ・カーブドブレード、そして鬼気迫る大弓を携えた姿が。

 ......

 ......

「ちぇっ、白薔薇の女どももついに来やがったか?」虚無に立ちながら、ケイトは不満げにそう呟いた。


 膠着状態にあった戦況は、第三勢力の強引な介入によって早々に決着がつくこととなった「あら、まことにお気の毒さまですわ、聖なる教会教皇陛下、少々到着が遅れてしまいましたようで。」ロサリンは微笑を浮かべながらケイトの面前に進み出ると、優雅に一礼を捧げた。


「構わん、ロサリン……聖女よ、デートで淑女が遅れるのは、不文律の礼儀というものだ。」ケイトは作り笑いを浮かべながらそう返した。


「ちぇっ……。」ジェシカは軽蔑の眼差しでケイトを一瞥したが、ケイトは気にも留めず、剣先で『幽暗の間』の入り口の時空座標を示した、そこには無限の歴史の痕跡と強力な結界が刻まれていた「さて、我々の計画を実行に移すとしようか?」


 ロサリンは変わらぬ微笑みを保ったまま「まあ?では、陛下はどうなさるおつもりですの?」


 ケイトもまた笑みを浮かべ、その表情には揺るぎない自信が満ちていた「ならばただ……力ずくでぶち破るのみ!!!」


 光の力が狂ったようにケイトへと奔り、彼の全身は無限の光に包まれた、しかし、その両手には光とは全く逆の闇が凝縮されていく――「神光黒淵しんこうこくえん!」


 無限の光の力が凝縮され、圧縮され、やがて恐怖の黒洞ブラックホールと化して――『幽暗の間』へと叩きつけられた……。

 ......

 神光黒淵しんこうこくえん

挿絵(By みてみん)

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