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幻想い足跡  作者: うさぎ
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無限の夢

 すべての人がずっと前を見て進めるわけじゃない、ィアナに過去を捨てろなんて、ィアナには絶対にできない。ただ、ィアナの過去のうち、どれだけが本当のことだったのか?ィアナはますますわからなくなってきた……すべては最初から完成された状態だった、でも、このすでに完成されたすべての中に、どれだけが自分の決断だったんだろう……。

 ......

 ......

 ィアナ……それはわたしの今の名前です……わたしが唯一認めている名前でもあります。わたしの名前は二つしかありませんが……。


 わたしは、この虚無宇宙、ひいては世界全体の住人ではありません、いつの間にか、どこかの宇宙に誕生してしまった。わたしは自分が何者なのかを知らない、だが、この世界とわたしは相容れないということだけはわかっている。この世界の全ては、わたしを判定することもできず、わたしを閉じ込めることもできない。どれだけ公理法則を書き換え、新たに追加しようとも……そう、永遠に。


 わたしはただの通りすがりだった……最初は本当にそう思っていた。一方で怯えながら両親の庇護に隠れ、では味わったことのない、本来ならわたしのものではないこの愛情を貪るように享受しながら、一方で偽善的に自分に言い聞かせていた、彼らはあなたの両親ではない、あなたにはこんなことを享受する権利はない……。


 六歳の年になるまで……あの悲劇が起こるまでは。今ではもう両親との楽しい記憶はほとんど覚えていない……だが、あの夜宇宙全体を焼き尽くした炎だけは……深くわたしの心に刻み込まれている……それは悲しくて、苦しい記憶ではあるけれど、それでもわたしにとって両親の記憶の中で最も完整な一部分なのだ……それ以外には、わたしは彼らの名前さえ覚えていない……ただ彼らがわたしに向かって叫んだ一つの名前だけが……『第一因(金色の無限)』。


 わたしはあの日を決して忘れない……パパとママが生きながら引き裂かれて、滴る血肉と焦げる炎……宇宙全体がかき混ぜられるように渦巻いて……そしてわたしに向かって差し伸べられた……あの温かな手を。

 ......

 ......

 台所には女の慌ただしい姿があった、食器を洗いながら、女性は同時にケーキ焼き機の動きにも気を配らねばならなかった。


 黒髪のロリ少女がぴょんぴょんと台所に飛び込んできた、左手には可愛いうさぎの人形を抱え、暗金色の瞳は潤んでいて、思わず可愛がりたくなるような表情「ママ~、今夜のおやつはなぁに?」少女は甘えたように女性のエプロンを引っ張りながら、げに尋ねた。


「ふふん~、ィアナの大好きなマロンケーキよ。もうすぐ焼きあがるから、パパも呼んできて。」女性は慈しむように少女の頭を撫でた「焼きあがったらお皿に乗せるから、パパと一緒にダイニングで待っててね。」


「やったー!マロンケーキ~マロンケーキ~。」ロリ少女は歓声を上げて部屋から飛び出していった。


 ロリ少女は楽しげな小鳥のように、台所のドアを押し開け、暖色の魔法灯に照らされた廊下を抜け、本に没頭している男の後ろにそっと近寄った「プシュッ、わたしが誰だか当てて?」少女はつま先立ちになり、白く小さな手で男の目を覆い、わざと低い声で尋ねた。


 男は困ったように笑った「おやめ、愛しき我が娘よ、パパは君のそんな悪戯に耐えられないからね。」


 二人は前後して書斎を出た、その時、廊下の温かく明るかった魔法灯が突然、消えてしまった……。


「きゃあ!」先頭を歩いていたロリ少女は突然の暗闇に驚き、すぐに父親の背後に隠れた「大丈夫、大丈夫、ィアナちゃん怖がらなくていいよ……今夜はパパとママからサプライズがあるんだからね。」暗闇の中から、男の優しい声が響いてきた。


「サプライズ?」ロリ少女は眉をひそめた。今日が何の特別な日か、彼女にはさっぱりわからなかった、しかしすぐにまた笑顔になり、と尋ねた「どんなサプライズなの、お父様?」


「ダイニングに行けばわかるよ。」男は笑いながら、少女の頭を優しく撫でた。


 二人がダイニングに着くと、冷たい月光がステンドグラスを通して部屋に差し込んでいた、女性は食卓の前に座り、二人を微笑みながら見つめている……テーブルの上には高級なクリームケーキが置かれ、6本の赤いろうそくが立てられており、ろうそくの明かりに照らされて「ィアナ」という名前が浮かび上がっていた。


「ィアナ、誕生日おめでとう!」男と女が同時に言った声は、ロリ少女を泣かせそうなほど優しかった……あたたかい……これが家の感じなのか?自分の中に、過去の無限の歳月で一度も味わったことのない感覚がじんわりと広がるのを感じて……そして、意気地のない、ロリ少女は泣いてしまった……。


 嬉しいはずなのに……笑っているはずなのに……涙が……涙が勝手に溢れてきて……。


「あ、ありがとう……パパ、ママ……。」ロリ少女はとうとう号泣する冲动をこらえ、素早く袖で涙を拭うと、両親に向かって満面の笑みを浮かべた……。


「あははは、本当に子供だな、こんなことで泣いちゃうなんて!」男は、泣きたいのを必死にこらえて笑顔を作ろうとするロリ少女の様子を見て、思わず笑った「ィアナ泣かないで、クリームケーキが好きじゃないの?大丈夫、後からマロンケーキもあるから。さ、願い事をしてごらん、ィアナ。」


 ロリ少女は本で高くされた椅子によじ登り、生まれて初めて敬虔な気持ちで、ゆらゆらと揺れる六本のろうそくの火に向かってその時の願い事をした。どんな願いをしたのか……ィアナはもう覚えていない……覚えていない……他の記憶と同じように……。


『家が見つからない第一因プライム・コーズ


 願いを込めたロリ少女は敬虔にろうそくを吹き消した……ふうっと、六つの小さな明かりが消えていった……。


『無限の情報量エントロピーの彼方で……。』


「お誕生日おめでとう!」女性はロリ少女をぎゅっと抱きしめ、男はあの温かく明るい魔法灯を点けた……。


『母を求めて絶望的に啼き続けても……。』


 灯りはもはや以前のような温かさではなく……まばゆいばかりの真紅に変わっていた。ロリ少女は恐怖の叫び声を上げて母親の懐に飛び込み、次の瞬間、ステンドグラスの割れる音が響いた……何か……おかしな笑い声を立てるものが、この部屋に侵入してきた……。


『無限の囁きしか聞こえない……。』


「はははは……。」崩れ落ちるような笑い声と共に、侵入者は手を一振りして眼前の障害物を粉砕した。男は勇敢にも母娘の前に立ちはだかり「逃げろ!」必死の思いでパニック状態の二人に叫んだ。ずっと笑い続けていた侵入者は、緩やかだが止めようのない歩みで、一步一步、男に向かって近づいてくる……。


『道に迷った第一因プライム・コーズ……。』


「来ないで……来ないで……ィアナ!早く逃げて!普通の子供でいなさい……『第一因(金色の無限)』には戻ってはいけない。」侵入者は手に父親の血だまり頭部をぶら下げ、全身も血まみれになっていた……殺戮によってもたらされた鮮血……まるで地獄から来た魔獣を前にしているようだ。母親も同様に侵入者によって真っ二つに引き裂かれ、その血しぶきがロリ少女の顔に飛び散った……今や彼女の瞳に映るのは、ただ血の赤だけだった……。


『目覚めよ!』


「うそだよね……。」冷たい液体が目頭から溢れ出る……絶対にうそに違いない……あんなに温かかったもの、守ると誓ったもの、この命でただ一つ愛したもの、わたしの……家……がたった一分もかからずに……。


 侵入者の手から滴る鮮血が凝縮し、時空と論理を歪め、法則さえも……全てがかき混ぜられ、宇宙全体がそのうずに飲み込まれていった。


「うそだ……うそだ……うそだ!!!!絶対にうそなんだ!!!」ロリ少女は全てを顧みず侵入者へと突進していった……。


『目覚めよ!!!!第一因(金色の無限)!!!』


 黒髪のロリ少女から金色の光が暴走し、宇宙も、多元宇宙も、全実在宇宙も、虚無宇宙も、世界全体がてが金色の光に飲み込まれていった、黒髪のロリ少女の暴走する力の前で、あらゆるものが生滅した、論理も、定義も、法則も、概念も、そしてそれらを超える全ての全てが、全てを飲み込む漆黒世界へと変じた。


『今は、まだ早すぎる。ひとまず全てを忘れよう。』ィアナと同じ声が、どこからともなく響いていた。


 暴走の力は、おさまった。再び黒髪のロリ少女から力がほとばしり、世界は暴走する力に飲み込まれる前の姿に戻った。


 パパ……ママ……もう喉がカラカラで声も出ない……このまま死んでしまうのかな?パパとママと一緒に……わたしの家と一緒に……こんな終わり方でも……きっと後悔はないよね?


「バカ!何してるの!?」華やかなドレスを着た赤髪の吸血姫が、歪み混ざった宇宙に突然駆け込んできた、捻じれた宇宙の時空の嵐も、彼女を止めることはできなかった。


「まったく!」赤髪の吸血姫はむっとした様子でロリ少女を抱き上げ、背後に鮮やかな赤い翼を広げた......時空がジャンプする……。


 ロリ少女の意識が徐々に遠のいていく……カラカラに乾いた喉から、かすれた声が絞り出された「あなたは……天使さん?」

 ......

 ......

「はぁ……はぁ……。」ィアナは深く息を吸い、全身がすでに汗でびっしょり、ゆったりしたパジャマが体にぴったり貼りつき、とても不快な感じだった。


「またあの夢を見たのか?醒時には何も思い出せないくせに、夢の中で再現され、ますます鮮明になっていく……。」ィアナは無意識に、そばに寝ているはずのジョイとシェリを探そうとしたが、ここは見知らぬ部屋だった「ここは……?」


「あら、ィアナ、目が覚めたの……。」傍らからエラのくすり笑いが聞こえた、彼女はィアナの隣に寝転がり、背をベッドのヘッドボードにもたれかけながら、分厚い本を手にしていた「ィアナは本当に寝相が悪いわね。」


「え?……」

 ......

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