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幻想い足跡  作者: うさぎ
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かく乱と花嫁

 結界が砕け散ちた刹那、魔法陣の中心から妖艶な影がふわりと舞い上がった、この世のものとは思えぬ威圧感を放ちながら……。


 瞑想中のジョイが突然目を開いた「なんて強大な霊力……ィアナ!」速すぎる身のこなしで赤い閃光と化し、霊力が爆発した場所へと飛び去った。


 書斎では、エラと星が同時に身震いし、信じがたい表情を浮かべると、その場から瞬時に消え去った。


 世の全てを見下ろすような眼差しで、ドリスは時空の彼方に高々と浮かび、死の神殿から舞い散る花びらが今も魔法陣から溢れ続けていた。


「ィアナ……ィアナ姉さん……これがあなたの体に宿っていた魂……? まさか……こんなにも強大だなんて!」ラナの声は震え、ィアナの背後に小心翼翼と身を隠した。


 ィアナも呆然とした。彼女は突然、自分が犯した過ちに気付いた。『世界の秩序』を乱してしまったのだ。『世界』は既に完成された状態だったのに、ィアナのせいでそれが乱れてしまった!今のドリスは、『無限の過去』におけるジョイと同じく、自分を知らないはずだ。


「初めてドリスに会った時、相手は『わたしたち前から知り合いでしょ?』という顔をしていた……そういうことだったのか……」もしそうだとしたら……。


「ィアナ!」ジョイの声がィアナの思考を遮った。ジョイはィアナを背後に護ると、空中に浮かぶドリスを睨みつけ、警戒と緊張の色を浮かべた。ジョイの実力は並大抵ではない――『吸血鬼の大乱』や宇宙戦争で妹たちを守り抜いたほどの強者だ。しかし今、彼女の表情は明らかに深刻だった。


「そちは何者だ!」エラと星も到着し、ジョイの左右に立ちながら、ドリスを見上げる目には強い警戒心が宿っていた。


 魔法陣は次第に収縮し、消えていった。舞っていた桜色の花びらも散りゆき、芳しく美しい花びらが敷き詰められた室内に、ドリスは優雅に降り立った。その動作は流れるように滑らかで、しなやかだった。足先が床に触れると同時に、彼女の膨大な霊力と威圧感も潮が引くように消えていった。


「さっきからずっと、ずっと…呼ぶ声が聞こえてたわ。その声はあなたなのね?」ドリスは眠そうな目をこすりながら顔を上げた「ふぁあ…もう何年寝てたかしら?わからないわ、『非可算』ね......で、こんなわたしを起こして、何か用かしら?かわいいお嬢さん。」


 ィアナはジョイたちに手を振り、心配無用と伝えると、緊張した面持ちでドリスに近づき尋ねた「えっと……ドリス……?」


「はぁ?」亡霊の姫は可愛らしく目をこすり、伸びをしながら言った「それ誰……? まあいいわ。この時代の魔法は随分進歩してるのね。せっかく出てきたんだから、すぐに帰るつもりはないわよ~。(自分で出るのは面倒だし)」


 ジョイやエラ、星の警戒をよそに、ドリスはィアナの前にふわりと浮かび、優雅に古式ゆかしい礼をとった「初めまして、美しき半吸血姫ダンピールさん。」


「えっ…あ、あの…こんにちは! 私はィアナです…ドリスお姉さん、わたしのこと…覚えてませんか?」相手が明らかに「知らない」という態度を見せたため、ィアナは思わずそう尋ねた。


「え? ドリス? それ誰?」亡霊の姫は天然そうにまばたきをした。


「やっぱり……『世界の状態』が乱れちゃった……これって召喚成功なの? 失敗なの?」ィアナは顔を手で覆い、ぼそりとつぶやいた。


 ドリス――いや、亡霊姫がと首を傾げた「え~?」


 ラナ(顔を覆いながら)「やっぱりこうなると思ったわ……。」


 ジョイ、エラ、星がと声を揃えた「ィアナ、これは一体どういうことだ?」

 ......

 ......

 星屑の雨がしとしとと瑠璃窓の結界を打ち、その雨音でイニンは夢から覚めた。


「ユーナ……。」目覚めたイニンは、まだ夢の中の情景に未練があるように、無意識にその名を口にした――日夜思いを馳せながら、ただ遠くから見守るしかないあの人。いや、視線を合わせただけでも互いを傷つけてしまうような存在「ダメなんだ……イニン、もしイニンが私に近づいたら……イニンはきっと……。」


 目を開けた瞬間、自分がたった一人きりだったことを、はたして幸運と思えばよいのだろうか。


「もう、いなくなったのか……ユーナ。」イニンは目を閉じ、昨夜ユーナが枕にしていた枕をそっと撫で、彼女が寝ていた毛布に手を滑らせた……まるで彼女がまだ傍にいるかのように。だが、仮に傍にいたとしてもどうだろう? もう抱きしめることはできない。なぜなら――彼女を傷つけてしまうから。彼女はもう、何も覚えていないのだ。


 こんな自分は、少し悲しいだろうか? でも、もういい……だって、彼らがいるから……彼らが傍にいてくれるから……。


 ドンドンドン! 突然のノックの音――「イニン姉さん! おはよ~! 早起きした姉ちゃんにはご飯あるよ~。」続いて孤児たちの賑やかな声が聞こえてきた……。


「うん! 起きたよ!」守りたいものがある限り、このわたしは絶対に倒れない!


「はははは……イニン姉さん! おはよう!」孤児たちの中で最年少の姉妹、メイメイとルルが同時に声をかけた。


「おはよう、イニン姉さん。」イニンの隣の部屋のカリンも目を覚まし、まだパジャマ姿のカーメンジェリンに微笑みかけながら、元気すぎる子供たちに声をかけた「いい加減にしなさい、メイメイ、ルル! 早く朝ごはんを食べなさい! そこの君たちも、廊下で喧嘩はダメよ!」


「え~、カリン姉さん厳し~い。」メイメイとルルが同時にぷくっと頬を膨らませた。一方、「喧嘩」していた子供たちは互いに「にらめっこ」……どうやら目で何か勝負を挑んでいるようだった…。


 カリンは呆れながら首を振り、洗顔に行こうとしたその時、イニンに呼び止められた「待って! カリン……こっち来て。」


「まずい……まさか昨夜の音が……バレたのか?」カリンは無理やり笑顔を作りながら振り向いた「な、何ですか……イニン姉さん……。」もし本当にあのことが知られていたら……あぁ……恥ずかしすぎる……。


「もう、カリンったら……早くこっちにおいで。」


「は、はい!」ドキドキ……ドキドキ……心臓の鼓動が早くなる……どうしよう、どうしよう。


 カリンが緊張でどうしようもない気持ちに囚われている中、イニンは彼女の胸元――リボンに手を伸ばした「リボンが曲がってるよ、カリン~、気をつけてね。」イニンは優しい微笑みを浮かべた。


「ふう……。」カリンは思わず安堵の息を吐きながら、同時にどこかさみしいような気持ちにもなった「うん、ありがとう、イニン姉さん……。」


「ねぇねぇ……ルル、イニン姉さんとカリン姉さん、仲良しだね~。とっても親密だよ。」

「うんうん!でも、もしかして親密すぎるかも……ってことは……。」

「きゃ~~~!」

 二人は同時に顔を赤らめて歓声を上げた。


「ふふっ。」二人の悪魔っ子ロリの戯れ言を耳にしながら、イニンは思わず笑みを零した「ねぇ、カリン。苦労してここまで育てたんだから、他の男なんかにあげるわけにはいかないわ~。いっそカリン、わたしの花嫁にならない?」


「えっ……ひゃああああっ!?」カリンの顔が一気に真っ赤に染まった「花嫁ですって!?」


 その愛らしい反応に、イニンは思わずカリンの小さな頭を撫でた「あらあら~冗談よ。カリンって本当に可愛いわね、顔中真っ赤になっちゃって~」


「イニン姉さん!!」

 ......

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