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王女救出作戦

 荷物を兵舎に置いて、

四人はジャン達十三人と出立した。


「なんだよバレル。

もちっと気合い入れろや」


「のうジャン。ワシらいる?

こんだけ兵士がいたら山賊などすぐに片付くじゃろう」


フッっとため息をついて

「きっと奴ら

美味い酒を隠し持っているに違いないのだが」

と、アルフレッド


だら〜っと出たヨダレをすばやく袖で拭き取り

「まぁ姫様救出とあらば、

一肌脱ぐのも吝かではないがの」


思わず言ってしまう「チョロ〜」


「なんか言うたか、翼」


「いえ、何でもありません」


「そういえば王様からもらった路銀、兵舎に置きっぱなしになっとったら不用心じゃろ」


「あぁ、アレなら大丈夫です。

重かったのでレーカスさんに持ってもらいました」


ピクっと反応したのはアルフレッドとバレル。

「翼!その話、今朝のことか?」


「いいえ、パーティーの後だから……」

天を仰ぐアルフレッドと

眉間を手で押さえて俯くバレル。

しまった!

翼は、ルーカスの本性を知らなんだ。


「そういえば野郎(ルーカス)随分とスッキリした出で立ちじゃないか。……おい」

前を歩くルーカスの肩をつかもうとするが、

アルフレッドの手が見えているかのように

サッっと左に避ける。

「この野郎!」


「朝から暗かったのはこういうことじゃったか」


「まさか100万Gだぞ!全部するなんて事あるか」

呆れるアルフレッドに


「ルーカスじゃぞ」

バレルは、さらっと諦めモード。


ガクっと肩を落とすアルフレッドに

「何の話ですか」

話がのみこめていない翼が、爽やかな笑顔で聞いてくる。

「翼……、後で話す」



「おいルーカス!こっちだ」

行先も分からいのにドンドン先を行くルーカスが道を間違えた。

ジャンが前に立とうとするが、

ルーカスは話を振られないようにするのに必死だ。


そうこうするうちに、目的地に到着する。



山の中腹にちょっとした平地があり、元は村だったのか

何軒かの小屋が建っている。

山賊のアジトらしく、目つきの悪い輩が何人か屯している。


「結構いるな」

三十人以上、もしかしたら四十人いるかも」

木陰に身を寄せてジャンが、ルーカスに意見を求める。


「まずは、人質の安否やけど……」

ルーカスが、後ろ見る。


その顔めがけてアルフレッドのパンチがが飛ぶ。

ルーカスは難なく練習用の木の槍でパンチをいなし顔を近づける。

「心配すんな、金ならあの中にある」

そう言うと、クイッっと親指で後ろの家を指す。

「はずや」


アルフレッドは、なんだか怒るのも馬鹿らしくなってきた。


村の中央にある比較的大きな家が怪しいのう。

して、どうする?」

横で様子を伺っているバレルが呟く。


「行ってくるよ」

そう言うとアルフレッドは、一団を抜けて裏へ回った。


「と、なると。

儂らは騒いで囮にならんとな」


「イヤイヤ。まずは、身代金を払うふりをして中へ

行きましょう」

至極真っ当な意見を言ってジャンは、

重そうな袋を兵士二人に持たせ、アジトへ向かった。



直ぐに気づいた山賊共は、大声で仲間に知らせる。

「来ましたぜ」

ぞろぞろと下卑た顔付きの奴らが集まってくる。


「金は持って来たんだろうな」

へっへっへっと、持っている短刀を旨そうに舐め回しながら山賊が近づいてくる。


「もちろんココにある。

フローラ様は、無事なんだろうな」


「まぁ、いまのところはな」

人波を掻き分けてドレッドヘアの男がジャンの前に立つ。


ジロリとジャンの後を見ると、手下っぽい男が

「後に十人。隠れてやすぜ」


ふん!っと鼻で笑う男

「たった13人で何が出来る」

彼の言葉の後、家々からドンドン人が出てくる。

五十人近くいるようだ。


「まさか、コレほどとは……」

目をむきつつも、首をかしげる。十三人?


「怖気づいたのか、兵士長。

まぁ、貰うものを貰おうか」


仕方ない。

「おい」っと部下に持たせていた袋をドレッドヘアの男の前に置く。


ナイフを舐めていた男が、袋を開ける。

「なんだあコレは」

「どうした」

「お頭。銀貨や銅貨までありやがる」


「100万Gなんてまとまった金、我が国にあるものか。

あちこちからかき集めてどうにか、用意したのだ」


「怪しいなぁ。

本当に100万Gあるのか、数えてみろ」


手下たちが集まる。

中にはちょろまかす輩もいて、まともに数えている奴はいない。


「チョットまて!これでは、あからさまに……」


「あ〜ん。文句あんのか」


「姫様の無事を」

ドンドン金を懐に入れる手下達、もはや聞く耳を持つものはいない。


ジャンも山賊を無視して奥へ進もうとするが、

行く手を長剣が塞ぐ。

「誰が動いて良いと言った」

ドレッドヘア男の前で動けないジャン。


「コイツ……、できる」




一方裏へ回ったアルフレッドは、

大きい家の侵入に成功、手下を数人始末していた。

フッっと一息ついた後から気配がする。

振り向きざまタガーで首を狙うも、

見たような木の槍で防がれる。


「あっぶないやんか」

「何しに来たんだよ」

「ワシもおるぞ」

「あっ!僕もいます」


四人が、死体を挟んで立ち話しを始める。

「で、姫様の居所はココで合ってるのかの?」

「いや、聞く前に襲ってきたので」

っと、アルフレッドは下をむく。


「使えへんなぁ」

グアキッ!

結構な勢いでアルフレッドのタガーがルーカスの練習用の木の槍を砕いた。

「あああ〜、知らんで

道場から借りてきた槍こわしてからに。

壊したん自分ちゃうからな」


「馬鹿なことしとらんで姫様探さんかい」

バレルが言うと、翼が手を上げる。


「あのう〜」

「なんじゃ、姫様見つけたんかい」

「いえ、そうではなくて。

おトイレ行ってきてもいいですか」

そう言うと、口もとを抑えて小部屋の戸を開ける。


「剣を持ったこともないって言っていたからな」

「ほやけど、綺麗な死体やと思うで。

流石と言うか」

「なんだ、褒めてんのか」

「べつに〜」


「おばばばばー!」

変な叫び声を上げて、

トイレからゲロまみれの翼が出てきた。


「なんじゃ、汚い勇者じゃのう」

続けて素っ裸の女の子が手を縛られた状態で出てきた。


山賊に嬲られた後があるものの、その姿には凛とした

気高さがただよう。

「フローラ姫でございますか」


「いかにも、(わらわ)がフローラじゃ」

三人が片ひざをつく。


「こら、いつまでレディの裸をガン見している」

尻もちをついたまま呆けていた翼が、

三人と同じ様に並ぶ。



「姫様、お召し物は?」

すると、フローラ姫はスッと死体を指さす。


「その下じゃ。

あの者たちはいろいろな物をしまっておった」


よっこいしょ。

どっこらせ。

ルーカスとバレルが死体を端に寄せると、

取手の付いた床が見えた。


アルフレッドが取手を引っ張ると、

地下へ続く階段が見えた。


小柄なバレルがスルリと階段を降りると。

「おいこりゃ〜、結構溜め込んでおる」


まず下から、ドレスやら靴やらが出てきた。

突っ立ったままの姫様に、

アルフレッドがドレスを着せる。


次に金貨の袋が

「それ、ワシらの国の金貨じゃ」


「なんや、こんなところにあったんか」

「よくもまァしれっと、そんな事言えるな」

「他の国の金貨もあるぞ」

続々と金貨の入った袋が地下室から出てくる。


「まさか、コレ盗むつもりじゃないですよね」

「翼、このままでは野盗の資金にしかならない」

「助かったで!コレで旅費の」

「ルーカスさん、旅費はあるでしょう」

「それが、隙をつかれて山賊に

奪われてしもてん。……スマンかった」


「それならこのお金は」

「そうや、ワイらの金や」

「そういうことでしたか、つまり山賊から

取り返したということですね」

「そうや、そうやねん」


「チョロい。チョロ勇者だ」

アルフレッドはぶつくさ言いながら、地下から出てくる

宝石の類で姫様を飾る。


「おいルーカス、チョット手伝ってくれんか」

「なんや」

長身を折りたたんでルーカスが降りると

「ほんまかいな、コレは!」

大声と共に長い槍が下から出てきた。


「ああ!久しぶりに見たなこの大身槍(ひりゅう)

槍とともにルーカスが出てくる。

「そうやねん。御師匠さんから譲り受けたワイの宝や」


3分の1が両刃の穂で3分の2は、璃を基本にした龍雲が白銀きらめく柄。

見事な一品だが。


「そんな大事な物を博打のかたに売るとは、情けなくないのか」アルフレッドが、目を瞑って首を振る。


「こんな物もあるぞい」

バレルが取り出したのは双剣。

狐が掘られている鞘。


「コイツはナーヴィスの国宝、孤双剣(きつねび)

アルフレッドが手に取り、フローラ姫に見せる。


「良い。褒美じゃ」

フローラ姫は、手に取らず。

アルフレッドに微笑んだ。


「有難き幸せ!

このアルフレッド、姫様の騎士となりましょう」

狐双剣を頭上に掲げ、宣誓する。


「いや、騎士はおる」


「アルフレッド。姫様は、聞いてまへんで」

アルフレッドは、さっそく腰に装備して嬉しそうだ。


「欣喜雀躍とは、このことよのう。

とは言え、国宝があると言うことは国の中枢に

横流しした輩がおるということとなるが……」


「目星はついておる。

たぶん(わらわ)を売ったのも同じ者であろう」


流石じゃ、ボゥ〜っとしているようで

しっかりと周りが見えておる。

しかもこの年でこの胆力。

存外、苦労されておるのかもしれんのう。


めぼしい物を出すと、バレルが出てきた。

「これ以上は、持てんだろう。

おい、翼。

金はお前が持て、どうせ人を斬れんのだしの」


「ヒドイですよ。実際人殺しはゴメンですけど、

コレ結構重いですよ」


「体力もついて一石二鳥じゃ」


「それじゃ、ひと暴れしますか」

表の扉を開けるとともに、アルフレッドの姿が消える。


「流石やな、ほなワイも続かせてもらいましょ」


外では、ジャン達が野盗に囲まれて

今にも殺されそうな雰囲気だ。


最後にバレルと翼、フローラ姫が家から出てきた。

(わし)、お守役か」

両手に金貨の袋を重そうに持っている翼と、

宝石類をすべての指と両腕と首、それに頭までのせられているフローラ姫。

相当重いのだろう、姫様はヨロヨロだ。



まず、野盗の一人がルーカスに気づいた。


ブンブンと大身槍(ひりゅう)を振りまわし近づいて来る

男に野盗共はざわめく。


「おいありゃ、地下室に置いてあった槍じゃねえか」

手下の言葉に奥を見遣ると、金銀や宝石をを持った

奴らがアジトから出てくる。


「ああー、他にもいたのかよ」

ジロリとジャンを睨見つけるドレッドヘアの男。

「だが、たった三人で俺たちと渡り合おうとはな」


「へっへっへ、全くお頭の言うとうりだぜ。

俺たちゃ奪う側で奪われんのは我慢ならねぇんだよ」


言うが早いか五人でルーカスを囲む。

しかし、あっという間に頭や喉が切り刻まれ

五体の死体が転がった。


「ふざけやがって」

今度は、20人以上が、ルーカスを囲む。


……ドレッドヘアの頭目は

後ずさった。

冗談じゃねえ。

アレはは名槍だとしても、

とても振り回せる重さじゃねえんだ。

コイツらあの男のヤバさに気づかねえのか。

……そうだコイツラを人質にすりゃあ。


振り返った頭目が見たのは、

アルフレッドによって解放された正規軍の13人。


「年貢の納めどきだ」

スラリと剣を抜くジャン。


「じゃあ、雑魚は俺たちで始末するか」

アルフレッドの掛け声に、兵士たちの士気が挙がる。


「うぉー!」っと12人の兵士が、野盗に迫る。

それから五分と掛からず討伐は終わった。


ただ一人、孤軍奮闘していた頭目も、

手下全員を失った事を悟り

剣を捨てお縄についた。


こうして無事フローラ姫を救い出し、

ジャンたちと勇者御一行は、帰途についた。

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