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隣国 ナーヴィス

 翌日、4人は王族達に見送(おいださ)れて旅立った。

スカウトのアルフレッドは、先頭を歩いている。

その後ろでバレルと翼が並んで話していた。


「ナーヴァスって、どういう国なんです?」


「んあ~、そうじゃなぁ。普通の国じゃよ」


「……、話終わっちゃうじゃないですか。

もっとこう美味しいものがあるとか、美人が多いとか

ないんですか?」


「ふぅ~ん。

ナーヴァスとウチらの国は、姉妹国でな。

お互いの王族がよく婚姻を結んでいる。

なので、国の法もあまり変わらず国の雰囲気もあまり変わらん。それに2日で着くほど近いしな。

のう、ルーカス」

バレルが、後ろを振り返って話をふる。


「うん」


「なんじゃい。暗いのうおぬし」


「そんな事ないで……」

最後尾をトボトボと付いてくるルーカスは、

訓練用の槍を手に目をそむけている。


「ルーカスさんって、無口なんですね」


「ふん!こいつが無口な時は、だいたい何があったか分かるけどな」


「いつまでへこんでいるんだ。

もちっとシャキッとしろ!スピード上げるぞ」

そういうと、アルフレッドはデブとは思えないほど

俊敏に走り出した。


『速い。

こんなスピードで山道を登るのか?』

翼は、ゼイゼイ言いながら後を追う。

『それにしても、3人とも流石だ。

バレルさんは本当に猿のように登って行くし、

ルーカスさんはトボトボと走っている。

なんだよ!見た目はトボトボなのに、速い』


昼食をとるために小川についた頃には、

翼はもう、音を上げていた。

「速すぎますよ」


「えっ」

アルフレッドは、目を見開いて翼をみている。


「体力ないのう勇者様は」


「いやいや、もっとこう馬車を使うとか。

のんびり歩くとか」


「今の山道を馬車で通れと……」

アルフレッドが、呆れる。

「勇者様には、もちっと体力をつけてもらわんとのう」



昼食後、またペースが上がる。


「もうー!勘弁してよ。

思っていた異世界と違いすぎるよ」


「ほぅ。どういうふうに思っておったのじゃ」

バレルが後ろ向きに走りながら問いかけた。


「そりゃ女の子達にモテモテで、みんなが僕のことを狙っているんだけど、僕はそれに気づかないで……」


「女にモテて気づかない男っているのか?

もしいたら俺がぶっ飛ばしてやる」

アルフレッドは、憤慨している。


「イヤイヤもちろん僕が無茶苦茶チートで、

周りからも最初はバカにされてて……」

ゼイゼイと翼の息があらい。


「話ながら、走るのキツイ」


すると、前でアルフレッドが止まっている。

なんだ、休憩か?と思っていた翼に向かって

双刀のタガーを抜いた。


「なんですか」

身構える翼に向かって、刃を突き出し


「そういえば勇者様の実力を知らないんだ」


「えっ!」


「そりゃあかん。アルフレッドの前でモテモテとか、

ケンカ売ってるとしか思えん」

レーカスがボソボソと言う。


「とはいえ実力程は知っておきたいところじゃ」


「えっ、誰もとめないの?

アルフレッドさん。ちょと待ってよ」

翼が両手を突き出してアルフレッドに止まるよううながす。

「僕、生まれて初めて剣を持つんだ。

人を斬ったことはもちろん、剣を交えたこともない」


3人は呆れた。

まさか剣を持ったこともないなんてコイツ、役に立つのか。


「私達の仕事は、勇者様を魔王城まで送り届けること」

「そうや、連れて行ったらエエだけ」

「そうと決まれば、急ぐのじゃ」


3人は、以前にも増して早く駆けだす。


「チョト速いよ」


最早、翼の言葉は誰の耳にも入らなかった。




「ひぃ~ひぃ~」翼が、前のめりに倒れる。

翌日の早朝、ナーヴァスの門前に一行は立っていた。


「いやー、休まずに気合い入れて走ったら

着いちゃたな」

チロっと舌を出すアルフレッド。


勇者様(こいつ)死んでへんか」


「ヒィヒィ言っているから大丈夫でしょ」


門番が一行を見つけ寄ってくる。

「よう、早かったな」


「先に知らせが来とったか」


何度も行き来しているせいで、お互い顔見知りである。

門番は、通行手形(パス)も確かめずに国の中へ案内する。


「でもちょうど良かった」

普段にもまして馴れ馴れしい門番に、バレルは

訝しんだ目をして尋ねる。


「なんか良くない話があるようじゃの」

近くの兵舎に十数人の兵士が屯している。


「ああ兵長!いいところにやって来ましたよ」

「よう、バレル。話を聞いて早めに来てくれたのか」

兵長と言われた男ジャン・イルゼオーネは、

これまた馴れ馴れしくバレルのかたを抱く。

二人は、飲み友だ。


「話はなんも聞いていとらんわ。と言うか嫌な予感しかせんのだが」

「何のことか分からんが、とにかくお断りしよう。

我等は夜通し駆けて来て疲れているんだ」

「そうや、使わんのやったら兵舎のベッド貸してんか」


アルフレッドが怪訝な顔で、ルーカスを見る。

「ホテルだろー!金はあるんだ。

なんでこんな硬いベッドで寝なければならん」


「ああ、ちょっと待ってくれ。

ホテルは紹介するし、多額の報奨金も出る話なのだが」

休む方向へ行っている話を、ジャンが無理やり引き戻す。


報奨金。と言う言葉を聞いてルーカスが身を乗り出す。

「まァ話だけは、聞いてもエエんちゃうか」


「大きな声では、言えないが」

ジャンが四人を手招きする。

円陣を組んでジャンが話始める。


「実はフローラ姫

が誘拐された」

大事(おおごと)じゃないですか。

ちなみにそのお姫様は、可愛いのですか」

「コラ翼!いま質問することじゃなかろう」

「イヤ、バレル。それはたいせつなことだぞ」

「それはエエから、報奨金ってナンボ貰えますの」


ジャンは、四人の話を無視して話を続ける。

「今日の昼までに身代金100万G払わなければ、フローラ王女の身の保証はしかねると」


「で!」

頭をゴリゴリ押し付けて来る翼にジャンは

「フローラ王女様は、その名の通り花の妖精の様な御方だ」


そこで翼とアルフレッドが頷いた。

「「行こう!!」」


四人は兵士達の列に加わった。

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