汚れ仕事
時間をさかのぼる事少々、
マフィアのアジトではアルフレッドが
ポルカ司教とナーヴィスのマフィア
サルサ・アネモス相手に戦っていた。
司教のジジィがごっついクルスをブンブン振り回してこっちへ投げつけてくる。
避けた先でマフィアの兄貴が剣で切り込んでくる。
その剣を双刀でいなす。
そこへまたごっついクルスが飛んでくる。
で、避ける先に切り込んでくるので、またいなす。
たぶんこのコンビネーションが、二人お得意の
必勝パターンなのだろうが、初手を躱したら
後はワンパターンだ。
繰り返す攻めに
避けるだけで攻撃出来ない。
流石に必勝パターンなのだろうから付け入る隙がない。
お互いに決め手に欠けていた。
「相手が女性ならばいつまでも楽しみたいのだが、
男相手にその気はないんだよ」
まァ向こうもそう思っているようで、
そろそろ勝負をつけたいのか、
目配せで何やら合図を送っている。
こっちとしても手詰まり感否めないところだったから
と、相手が呼吸を合わせていた。
左右同時に合撃されると避けようがない。
ドア付近まで後へ飛び、2人がけのソファをけり上げる。
互いが見えなくなると、
ソファの上へ素早く。
人は往々にして自分の目線より上は、
死覚になりやすい。
が、そこは手練れ。
司教のクルスが上へと飛んだ。
年老いて目が悪くなったとしても目の端にとらえた獲物を逃すほど腕は衰えていない。
アルフレッドの上着にクルスが食い込む。
司教とマフィアの兄貴がそれに気づいた時には、
アルフレッドは司教の右下まできている。
ジュバッ!
司教の右脇腹と右脇下を同時に切り裂き、
飛び込むと左手で司教の喉元を刺す。
右手はマフィアの兄貴の攻撃を予測して防体勢をとりながら右足で蹴り上げる……?
っと、司教が左手でアルフレッドの腹を押さえつけた。
目を真っ赤にして、首から血吹雪を散らしながら、
左手一本でアルフレッドが動きを封じている。
その力は相当なものだ。
サルサ・アネモスはとっさに上へ服だけが舞い上がったことに気づきソファの左下へ剣を突き刺していた。
なんの根拠もないが、歴戦の感が来るならココと
反応した。
もしアルフレッドが
コチラに来ていたら即死だったろう。
アネモス兄弟は生まれつき目がいい。
二人とも避けたり、いなしたりと、
相手の攻撃を躱すことを得意といている。
故に彼らは常に二人以上で戦いにいどんでいた。
その相方が今屠られている。
どうするか?
悩む間もなくその目は、動けないアルフレッドを捕らえていた。
サルサ・アネモスは、ニヤリと勝利を確信した。
バタついても左手の拘束は解かれない。
司教自身は白目をむき、
生命活動は終えているというのに。
たぶん司教が若い頃やりあっていたら、
こっちがやられていたに違いない。
目の前には勝利を確信したマフィアの兄貴が
剣を振りかぶる。
アルフレッドは腰を回転させて、
プルプルと腹を揺さぶり出した。
「アネモスの兄さん」
意識外から声がした。
サルサ・アネモスは目に絶対の自信があるからこそ、
視覚外からの襲来は相当ヤバい。
バッと振り向いた先には、ドアから顔を
のぞかせたキャンディがいた。
「ナイスだ、キャンディ」
振り向いたその一瞬。
プルプルしていた振動が超振動へとかわり、
アルフレッドの身体が細くなった。
正確には上半身だけが細身のイケメンになり司教の拘束から逃れた。
双刀を振り下ろす。
キャンディに気を取られたマフィアの兄貴を斬った。
「ぐぁー」
剣を落とし仰向けにサルサ・アネモスが倒れる。
アルフレッドは司教の腕の下へ潜るように縮んで
元のおデフに戻っていた。
オドオドと中に入ってくるキャンディ。
やっと拘束から逃れたアルフレッドが落ちている剣を
キャンディに渡した。
「旦那の仇なんだろう」
キャンディはその剣を受け取りサルサ・アネモスの
胸の上に突き立てた。
あと少し力を込めればトドメを刺すことが出来る。
が、あと一押しが出来ない。
キャンディは泣いていた。
「なんで、なんで……」
普通よほどの覚悟がなければ、人殺しなど出来ない。
たとえそれが旦那の仇だとしても。
それが当たり前だったと、アルフレッドは思い出した。
「へへへへ、お前は俺が居なくちゃなんもできねぇ。
いい子だからその剣置いて二階でお寝んねしときな」
ヒューヒューと虫の息だが、サルサ・アネモスの目はまだ死んでいない。
「寝るのはお前だよ、永遠に起きてくるな」
アルフレッドはその剣の鍔を指ではさんで、
静かに胸へ沈み込ませた。
「アガがぁ」
「悪かったなぁ。
こんな汚れ役は、俺たちの仕事だった」
キャンディは、震えている手をそっと下げて
胸に刺さっている剣に触れた。
「いいや、ありがとね」
そのまま置いておくわけにもいかず。
アルフレッドは、キャンディを連れて教会へ向かった。
寝床があの二階らしいが、
さすがに「じゃあな」っというわけにはいかない。
マフィアのアジトは全滅させたが、
教会に司教のような奴がまだいるならキャンディは無事では済まないだろう。
ここで後顧の憂いは無くしておきたい。
敬虔な信徒らしいキャンディの案内で来た教会は
夜闇の中、遠くからでもわかるくらい
煌々と明かりが灯っていた。
「おじゃまするよ」
大きな扉を開けると一人の老牧師と年老いたシスターが三人不安げに祈りをささげていた。
「あれ、他には誰もいないのかい」
アルフレッドが問いかけると
「司教様は只今大切なご用事で外出されております。
他の若い司教様付きの方々はお城の方へ参られましたが何か御用でしょうか」
気弱そうな老牧師が応える。
後ろの方からシスターの声がする。
「おや、キャンディじゃないか。
大丈夫なのかい、また叱られたのかい」
どうやらキャンディを気遣ってくれているようだ。
「うん」
入って来たキャンディにシスター達が駆け寄る。
「血が出てるじゃないか、
早くコチラに」
「ああ、コレはあたいの血じゃないんだ」
せっせと世話を焼いてくれるシスターを見て
アルフレッドは、一息ついた。
ここなら大丈夫だな。
皆がキャンディの元へ行くのを見て
アルフレッドはそっと扉から外へでた。
「お城ってことは、また姫様絡みか、
……しゃあねぇ。
あいつら誘って行くか?」
どうしようか迷いながらアルフレッドは、酒場で小耳にはさんだ賭場へ足を伸ばす。
「早く行かないとルーカスの奴。
又!スッカラカンになりかねないからな」




