表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/50

41:愛の勝利※ラーダイン視点

「わかった。俺の負けだ」


 僕が剣を突きつけている相手――赤い青年が、負けを認めた。

 その敗北宣言はあまりにもあっさりしていて、聞き間違いではないかと疑ってしまうほどだったけれど、確かなもので。

 僕は誰にも気づかれないように、安堵の息を漏らしていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 正直、アイシャを傷つけようとした彼を許せるはずがない。

 ダミアン・プランス。隣国の皇太子であり『血塗れの狂戦士』と名が高い男だ。


 ここで負けたらアイシャが死んでしまうと思って力の限りを尽くしてなんとか勝つことができたが、勝負はかなりギリギリだった。勝利したのは奇跡だと思う。


 そんな男を、降伏宣言程度で野放しにすることを認めるのか?

 問われれば僕は否と答えるだろう。本当であるなら、今すぐここで殺すべきだ。


 だけど僕は、僕の姫君の意見を尊重しようと思った。

 アイシャが許すと言うなら、今だけは見逃してあげよう。


「――もちろんもう一度挑みかかって来るようなことがあれば、今度ばかりは許しはしないけど」


「怖いこと言うなよ金髪野郎。もう俺に闘う意志はないから剣を下ろせよ。なんなら腕を落としてくれてもいいぜ?」


「そんな物騒なことはしないよ。アイシャの前では、ね」


 アイシャの前でなければ、腕くらい切り落としてやっていたさ。せいぜいアイシャに感謝してほしいものだ。

 ダミアン皇太子はそのまま解放され、舌打ちしながらも文句は言わずにそそくさと自国へ帰って行った。


 躊躇いなく人々の命を散らし、暴れ回り、そして去っていく。

 まるで嵐のような男だった。できれば二度と会いたくないものだ――。


 そうそう、最後にあの男はこんな言葉を残して行ったな。

 『その女、なかなか思い通りにはならねえぜ? せいぜい愛想尽かされないように躾けるんだな』だったか。

 まったく余計なお世話だ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 勝利したのは奇跡だ、と言ったけれど、それは正しくない。

 僕らの勝因。それが今わかった気がする。


 口にするのは小っ恥ずかしいけれど、きっとこれは愛の勝利ということなんだ。

 僕の想いがダミアン皇太子より優った、ただそれだけの話。


 僕が何年もかけて高めていたこの恋心が誰かに負けることなんて絶対ないのだから。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編版はこちら

作者の作品一覧(ポイント順)



作者の婚約破棄系恋愛小説
あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ