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40:皇太子との決闘②

「君が化け物並みに強いことはこの目で見てわかった。だけどその武器には一つ弱点があるんだよ。……鎖の部分を剣で絡め取られたとしたら、君はどうするのかな?」


「――ッ! お前、何しやがる」


「何って、僕の姫君が勝つためのお手伝いだよ。一人の男として当然のことじゃないか」


 そう言って微笑むラーダインは、いつになく勇ましくて素敵ですわ。思わず称賛の声を上げたくなりますが、ここは自重いたしませんとね。

 ――防具の破片による礫を避けることで精一杯だったであろうダミアン皇太子に追撃を与えたのはラーダインでした。彼はわたくしの行動を見て礫が気を逸らすものだと悟ってくださったようで、急遽攻撃手段を考えてくれたのでしょう。

 まるで心が通じ合っているかのよう。さすが、長年婚約者としてわたくしの傍にいただけありますわね。


 ダミアン皇太子の武器であるモーニングスターは威力が強いですけれど、鎖を絡め取られ、制御できなくなった途端に使い物にならなくなります。

 ラーダインの長剣によって鉄球が抑えられている間が一番の好機。わたくしはダミアン皇太子の元へ馬を走らせ、全力で彼を突き飛ばしましたわ。


「うぐっ」


 苦鳴を上げながら吹き飛んでいく皇太子の姿は、先ほどまでの獣のような獰猛さから一転して驚いたような顔をしており、なんとも滑稽に見えました。


 ちなみに、その際に彼の手から離れたモーニングスターをラーダインが回収。

 一方でわたくしは皇太子を仕留めるため、馬から降りて身一つで座り込む彼の前に立ち塞がりましたの。


「――これで終わりですわ、ダミアン・プランス皇太子殿下。わたくしたちを所詮雑魚だと侮ったことが敗因ですわね」


「侮ってなんかねえよ。一応これでも本気で戦ってやったつもりだぜ?」


 ヘラヘラ笑いながら、そんなことを宣うダミアン皇太子。

 そしてそれと同時にわたくしの胸にかぶりつこうと歯を光らせているのですから油断なりませんわ。


 しかし彼の思い通りにはさせるはずがなく、


「あなたのアソコ(息子)を潰して差し上げてもよろしいかしら?」

「それ以上僕の姫君に何かしたら、君の首が飛ぶよ。それを承知の上なんだったら別に好きにすればいいけど」


 わたくしはダミアン皇太子の股間へ、そしてラーダインは喉元へとまっすぐに剣を突きつけていましたの。

 上下を攻められたダミアン皇太子は、さすがに反撃の余地がないようで、悔しげに唇を噛み締めておっしゃいましたわ。


「そんなに俺の嫁になるのは嫌かよ」


「もちろん。わたくし、あなたのことを好きになれませんもの。お慕いしていない殿方の元へ嫁ぐなんて、やはりできませんわ」


「なら俺を殺せ」


 彼の言葉に、正直驚きがなかったとは言えません。

 命乞いをするとは思っておりませんでしたけれど、てっきり最後まで悪あがきをするだろうと考えていましたの。なのに殺せだなんて、予想外過ぎる反応だったのですわ。


「一体どういうつもりであなたがおっしゃっているのか存じ上げませんが、それはできかねますわ」


「なぜだ? お前らにとって俺は敵だ。殺したいだろう」


「殺したいほど憎んではいます。ですがあなたの命を奪ったところで何にもなりませんもの。わたくしが求めることはただ一つ。――約束通り、降伏なさい」


「わかった。俺の負けだ」


 そしてまた、ダミアン皇太子があっさり敗北宣言をしたのも意外でした。




 ――こうしてわたくしたちは、ダミアン・プランス皇太子との決闘に、勝ったのですわ。

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