表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/50

38:思い通りにならない女と気に食わない男※ダミアン視点

「……クソ、どんどんどんどん邪魔な奴が湧いて来やがるじゃねえかよ」


 口の中だけで呟きながら俺は舌打ちしていた。


 黒髪の奴をやっと追い返すことができた――というより結局女が弾き飛ばしたんだが――と思ったら、次は金髪の小僧が邪魔しに来るなんて、つくづくついていない。


 もう少しで王太女をものにできると思っていたところでこれだ。何が「僕の姫君」だ、胡散臭い野郎め。

 格好つけにしか見えない。正直言って萎えるだけなのだが。


 さらには気に食わないことに、金髪野郎は俺に剣を向けて来た。

 きっと俺を一般兵だとでも思い込んで舐め切っているんだろう。そう考えると少しだけ俺の残虐な部分が刺激された。


 こいつをぶちのめしてやりたい、と久々に心から思った。

 女を躾けるのは後回しだ。とりあえずは早くこっちのうるさい蠅をぐぅの音も出ないくらいに叩き潰さなくてはならない。それに、女を助けに来た勇者気取りの金髪野郎のプライドをべきべきにへし折ったら楽しそうだ。


 しかも王女の方は「戦いをやり直したい」だなんてふざけたことを言い出している。

 本当なら鼻で笑ってやりたいところだが……まあそれも一興になるかも知れない。何より俺が金髪野郎を下せば、この女の歪んだ顔が見られるわけだしな。


 だから、


「面倒臭えが戦いは嫌いじゃない。いいぞ、ちょっくら乗ってやろうじゃねえか。――お前ら二人とも二度と立ち上がれないようにしてやるぜ」


 俺は嗜虐的な笑みを見せながら、女の挑戦を呑んだのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ほらよ、これがお前の武器だ。返してやるよ」


 俺は王女に短剣を投げ返してから自分の鉄球を握りしめる。

 相手は二人。だがどちらも雑魚だ。公爵令息とやらの方は黒髪に比べればまだマシな体をしているものの、とてもじゃないがまともに戦えるような体つきはしていない。

 もって数十秒だろう、と俺は考える。殺す前にできるだけ痛ぶってやろうか。


「……どこからでもかかって来い。手加減はしてやらねえぞ」


 俺がそう言い終えるかどうかという時、再び馬に跨ったアイシャ・アメティスト・オネットが短剣をぶん回しながら襲い掛かって来た。

 狙いは悪くない。だが、女の細腕では威力が弱い。それでは俺を殺すことはまずできないだろう。

 一方、反対方向からは金髪の奴も飛び込んで来る。挟み撃ちにしたら勝てるなどと馬鹿なことを考えているんだろうか、こいつらは。


 ――ねえダミアン、覚えておきなさい。戦いってのはねぇ、相手を甘く見たらダメなのよ。素人こそ思わぬ隙をついて来るものなの。だから常に警戒して全力を尽くしなさい。


 そう言ったのは、確か幼馴染の女だったように思う。

 俺が最初に戦いのやり方を教わったのはあいつだったし、今でもあいつは間違いなく俺より強いだろう。……ただ、戦いを好まないだけで。


 いけない、どうでもいいことを考えていたら手元が狂う。

 今はこの戦い……もとい『遊び』に集中することにしなければ損だ。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編版はこちら

作者の作品一覧(ポイント順)



作者の婚約破棄系恋愛小説
あなたをずっと、愛していたのに ~氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

この度、婚約破棄された悪役令息の妻になりました

悪役令嬢は、王子に婚約破棄する。〜証拠はたくさんありますのよ? これを冤罪とでもおっしゃるのかしら?〜

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!

公爵令嬢と聖女の王子争いを横目に見ていたクズ令嬢ですが、王子殿下がなぜか私を婚約者にご指名になりました。 〜実は殿下のことはあまり好きではないのです。一体どうしたらいいのでしょうか?〜

公爵令嬢セルロッティ・タレンティドは屈しない 〜婚約者が浮気!? 許しませんわ!〜

隣国の皇太子と結婚したい公爵令嬢、無実の罪で断罪されて婚約破棄されたい 〜王子様、あなたからの溺愛はお断りですのよ!〜

婚約破棄追放の悪役令嬢、勇者に拾われ魔法使いに!? ざまぁ、腹黒王子は許さない!

婚約者から裏切られた子爵令嬢は、騎士様から告白される

「お前は悪魔だ」と言われて婚約破棄された令嬢は、本物の悪魔に攫われ嫁になる ~悪魔も存外悪くないようです~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ