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30:皇太子と裏切り侯爵令息の戦い

 『血染めの狂戦士』ダミアン・プランス皇太子。

 そして宰相の息子にして王国の裏切り者、デイビー・ヴォルール侯爵令息。


 二人は向かい合い、右に左に跳躍を繰り返しながらそれぞれの武器を相手へ届かせんと攻撃を放っています。

 そしてその周囲ではプランス大帝国軍と第三勢力の私兵団たちがぶつかり、血飛沫が舞う苛烈な戦闘を繰り広げておりました。



「おい、お前、弱っちいじゃねえかよ。逃げてばっかじゃねえでどんどんかかって来いよ」

「私は持てるだけの力を尽くして戦っているつもりだ。それを侮辱されたくはないな」


 互いを睨みつけながらそんな風に言葉を交わしながらも少しの隙もない攻防を繰り広げる様にわたくしは目を瞠るしかありませんでしたわ。

 それまでわたくしと兵士が(おこな)っていた揉み合いなどとはまるで次元の違ったもの。それを間近で見せつけられて、わたくしの弱さを突きつけられた気がいたしましたの。


 たとえわたくしが割り込み、奇襲をかけたとしても瞬殺されてしまうことでしょう。

 ダミアン皇太子はともかく、デイビー様が一体どこでここまでの戦闘力を身に付けたのかは謎ですけれど……この者たちには敵わないことがわかってしまったのですわ。


 ――だからと言ってここで退いて、一体何になりますの。


 デイビー様はわたくしに逃げろとおっしゃいました。それはすなわちわたくしを戦力外として見ていることの証左であり、きっと『王太女を危機から逃した英雄』として名を上げるつもりに違いありませんわ。

 しかしわたくしはそんな彼の意志に従うつもりはさらさらありませんでした。兵団長やその他の兵の皆さんの死を目の当たりにして、自分だけ逃げるだなんていう選択肢を選ぶことなんてできませんもの。


 けれど行動を起こすにはどうしても力が足りない。武器を持たないわたくしには戦況を覆すことなど不可能なのです。

 故に、わたくしは悔しい思いをグッと堪え、ダミアン皇太子とデイビー様の対決の行く末を見守ることしかできないでいるのですわ。


 悔しい思いに唇を噛み締めている間にも戦いは続いていますわ。


 デイビー様のポイズンナイフが、そしてダミアン皇太子のモーニングスタが風を切り、戦場を暴れ回ります。

 二人の戦いが膠着状態にある一方で、私兵団たちはなんと驚くべきことにプランス大帝国軍を圧倒し、その多くを血の海に沈めていましたの。きっと帝国軍は油断したか、急に割り込んで来た第三勢力に対応し切れなかったに違いありませんわね。


「……これで我々の優勢は確実となった。ここで投降すれば命だけは見逃して差し上げてもいいが」


「俺が投降? 小僧、ふざけんなよ。俺がお前みたいなガキに負けると思ってんのか」


「私とあなたにそんなに年齢差はないかと」


「けっ。俺のこと舐めんな」


 その一言から戦いのレベルが上がったのは明らかでした。ダミアン皇太子がやっと本気を――今まで本気ではなかったのは驚きですが――出したのですわ。

 モーニングスターの動きの速さが二倍ほどになり、その上狙いの正確さと言ったらありません。もしもデイビー様が避けるのが一瞬でも遅ければ彼の頭を砕いているような容赦ない攻撃ばかり。


 しかし第三勢力の方も負けてはいず、帝国軍に勝利して手が空いたため、ダミアン皇太子へと次々と襲いかかっていきます。人数としては一対百以上。戦力差が大きすぎて『普通』ならばダミアン皇太子に勝ち目などないでしょう。


 ですが当然のように彼が『普通』であるわけはなく――。


「俺がやっと念願の女に会えたってのに鬱陶しいな。さっさと死ね、雑魚どもが」


 次の瞬間、ダミアン皇太子を取り囲んでいたはずの第三勢力軍が一斉に薙ぎ払われ、血肉と化していたんですの。

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