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21:開戦

「火の番だというのに寝落ちをしてしまうとは、とんだ失態ですわ……。穴があったら入りたいとはこのことですわね」


 わたくしは呟き、頭を抱えていましたわ。

 昨晩、兵団長と話しているうちに眠ってしまったようですの。まだ見張りの最中だったというのに……。

 他の見張りの方々にはたいへん迷惑をかけてしまいました。皆、「殿下はまだお若くいらっしゃるのですから仕方ありませんよ」などと言って笑って許してくださいましたけれど、それはつまり子供扱いされているということと同義ですわ。


 もう二度と兵士の皆さんの足手まといにならないよう気をつけなければなりません。勝手について来たわたくしのせいで困らせてしまうことなどあってはいけないのですわ。

 それに、せっかく預けていただいた信頼を裏切るようなことはこれ以上したくありませんもの。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 昼間は馬を走らせ、休息をし、暇さえあれば戦の本番のために剣の腕をさらに鍛える。そしてまた進み、夜になったら適当な場所にテントを貼り、乾パンと干し肉だけの相変わらず簡素な食事を取ってから野宿をする。

 そんな日々を繰り返し、兵士たちとの交友を深めたりなどしながら、やっと少しずつ慣れて来た頃……旅は終わりを告げましたの。



 ――旅立ちからちょうど三日目の朝。

 朝食の席で兵団長が、こんな報告をしたのですわ。


「東方に少し行った先の国境付近に帝国軍の姿を確認したであります。至急、向かうべきかと」


 朝食を無理矢理胃に詰め込むようにして食べ終えたわたくしどもは、急いでテントを片づけ、国境へと向かいましたの。

 できるだけ帝国軍をオネット王国に入れたくない。そんな思いがあったからかも知れませんわ。


 国境には馬であっという間に着きましたわ。

 人里離れた場所で、普段はほぼ誰も立ち入らないような荒野。

 そしてその荒野には、無数の人影――帝国軍の姿がありましたの。


 それを視認したオネット王国の兵士たちは一斉に武器を取りました。相手の数は多く、五百人ほどしかいない王国側はかなり不利でしょう。それでももう後には引けないのですわ。

 ここで少しでもプランス帝国軍の数を減らすことができれば上等ですわね。そんなことを思いながらわたくしもアメジストで彩られたお気に入りの短剣を握りしめましたわ。


 帝国軍側もやっとこちらの姿に気づいたのでしょう。一斉に怒号のような歓喜の声のような、わけのわからないものが上がります。

 そしてまもなく両軍が衝突し、王国側と帝国側の両方から高らかな笛の音が鳴り響きました。戦の始まりを知らせる合図ですわ。


 ――こうして、わたくしたちの血みどろの戦争が幕を開けましたの。

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