歴史の始まり
とある理由で、日ノ国の中心にある県、伊南の火焔神社に訪れた、火焔 手毬は人々が、古森の火焔神社で祀られている守ノ神を何故崇めるのかと社の近くに住んでいる老人に聞くと「わしらが生まれるずっと昔に、この世には鬼というものが存在していた。鬼は、刀で首を斬るか、心臓を潰さないと死なない。鬼を狩る者、鬼狩りに会わないようにしながら鬼は、人々を喰らっていた。 鬼を恐れる人々を守る為に動いたのが、この神社の神達なんじゃ これにその事が書かれておる」そう言いながら重そうな書物を出すと老眼鏡をかけて読み始めた・・・これから語られるのは日ノ国の過去の話である。
時は、鼎ノ正1960年 7月15日
日ノ国の中心にある伊南県餅崎市で、祭りへ行く為に近道の裏路地を歩いている時雨は、今日も、何の事件も起こらずに、祭りが始まると思っていた。お腹を空かせた牛鬼が、いる事を知らずに。
・登場人物
紅月 時雨
19歳 紅森の自然を守る番人、秦嶺の娘。白狐で人々からは、幸せを運んでくれる狐といわれている。
火焔 棟煉
20歳 伊南県の守ノ神 鬼狩りを仕事としている、古森の妖狐。
榊 蒼
17歳 古森の守ノ神である、棟煉の側近。
人が多かったため、裏路地を使って祭りが開かれる場所へと歩いている若い娘から、お腹がなる音がした。「…お腹空いたぁ 家を出て来る前に、何か食べてくれば良かった」誰も来ないだろうと、下を向いていたのが、駄目だった。ドンッとぶつかってしまい、謝ろうと顔を上げようとしたが「ん?うまそうな娘だなぁ。残念だねぇ、お嬢さんよ。さあどうだい? 今から食われる気分は?」恐る恐る顔をあげると、しゃがれた声で不吉な事をいう者は、頭は牛、首から下は鬼、血のように赤い瞳には、"夕"と黒で刻まれていた。ここに、鬼がいると思ってなかった。声を出したいが、母上が『鬼に出会った時は目を合わせてゆっくり下がりなさい』と言っていたのを思い出して、鬼の目を見る。すると、意外そうに鬼は言う。「へえ、食べられるのが怖くないのかい」人を殺すなど、遊びだと思うくらいの余裕は、いったいどこからくるのだろうか。そう思いながら、ゆっくりと後ろに下がる。下がったのは良いが、ドスッという鈍い音がした。「ぐっ,,,」背中を打った痛さで、声が出る。「おっとっと、もう下がれないよ。どうするんだい?」牛鬼は、もう逃げたって、どうせ結果は同じなんだから大人しくしたらいいじゃないか、と独り言にしては、かなり大きな声で言っていた。そんな大きな声を出したら、人が来ると思うんだが…。状況を忘れて、心の中でツッコミをするが、次の言葉で一瞬思考が停止した。「待つっていうのは、退屈な事だねぇ。まぁ、これから食べるから問題は、ないんだけどね」嗚呼食べられるのか。頑固な性格がここででる。くたばってたまるかと思うが、足が動かない。もう駄目か。死を覚悟して目を閉じるがいつまでたっても痛みが来ない。代わりに声がした。「そんなに大きな声を出したら、人が来るだろう」と呆れたように言ってから、グシャッと何かが、落ちる音がした。うめき声が聞こえたが、少しすると、聞こえなくなり、静かになった。「大丈夫か?」あのしゃがれた声ではなかった。恐る恐る、閉じていた目を開くと目の前に、琥珀色の目をした青年がいた。「…鬼は?」聞くとこは、そこかと心の中で突っ込む。「倒したから、気にしなくていい。……名前は?」倒したと言われ、安心した。来てくれなかったらどうなっていたのだろうかと考えたが、すぐにその考えを捨てて「紅月 時雨と申します。助けて頂きありがとうございました」丁寧に名乗れば、不機嫌そうな表情をして「そんなに畏まらなくていい 普通に、話してくれないか。名乗り遅れたが、火焔 棟煉だ。貴方の父上は紅森の番人か?」火焔…どこかで聞いたことがあったが思い出せない。というか、少し上から目線なのと、不機嫌そうな表情が気になるが、まあ今は、関係無いだろう。質問に答える方が先だ。「はい なぜ、知っておられるのですか?」思わず、丁寧に言ってしまったが、今度はあまり気にしなかったらしく「覚えさせられたからな。そうだよな、蒼」名前を呼ぶと、すぅと音を立てずに暗闇の中から、現れ「そうですが、無理矢理、覚えさせられたみたいな言い方は、おやめください」と親のように注意してから、こっちに向いて、「榊 蒼と申します。この時間帯は鬼が活発になる頃なのですが、どうするつもりですか」よく見てみると、蒼の目の色は、水色に見えるが光の当て方で、別の色に見える。「蒼、その言い方どうにかならないか。……どうするんだ?」「どうするとは?」何を訪ねようとしているのか、わからずに聞く。「あの感じだと、また狙われる。それが嫌なら、俺が護衛するが」またあのような目をに遭いたくは無い。お願いしたいがお金が必要だろう。財布を出してきたのを見た蒼が「別にお金は、いりません。棟煉様は?」「お金を貰いたくて、この仕事をやっているんじゃない」…それは、仕事とは言わないんじゃないだろうか。「……分かりました。護衛、頼んでいいでしょうか」そう聞くと頷いて「蒼、他の見回りを頼んだ」「分かりました。では、失礼します」と言い終わると、目の前から消えた。「えっ?」反応が面白かったのだろう。軽く笑って、理由を説明する。「蒼は、時間を操れるからな。その力を使って消えたというわけだ…。行くか」「はい!」大通りから漂ってくる食べ物の匂いを嗅いで、グゥとお腹がなったのを聞いて、「奢るから、好きなものを食べていい」「それは、自分で買います。」助けて貰って、護衛を無料でしてくれているのだけでも、ありがたいというのに。「分かった」やり取りをしているうちに、大通りに着いた。自分より一つ背の高い棟煉を見上げる。首元に黒色の石のようなものが見え、何だろうと、首をかしげる。見ているのに気付いたらしく、「これは……後で話す」少しためらった後、言った。何か訳があるのだろう「分かりました」頷いた時雨には、その話がこの国の未来に、関係していることなど考えもしなかった。
続く
・作者の後書き 初めて書いた小説です。変な所がありましたら、言ってください。リクエスト募集中です。古森の狐は、鬼を狩るの話は、少なくても20話、多い場合で約50話ほど書くつもりですので楽しみにしてください。 次の話から3人ほどキャラを登場させるつもりです。