第21話 鉄血のセフィナ ②
「協力感謝する、ギルドの副長よ」
セフィナが重いフックでモンスターを倒してしまった後、兵士たちはすっかり平静さを取り戻していた。20名程はそろっていたはずだが、セフィナに礼をする指揮官と数人以外は、市場の復旧や調査のために散って行ってしまった。
「いいえ、私たちがモンスターを取り逃がして迷惑掛けたわね」
「とんでもない。我々もギルド員の手を借りず、確実にモンスターを殺すことが出来ればこのような事態にはならないだろう。不甲斐ないものだ」
「王国軍の協力は絶対に欠かせないわ、自信をもっていいのよ」
セフィナからの気遣いの言葉に、一瞬だけ指揮官は眉をひそめた。この王国に兵士とギルドの明らかな身分の違いというものはないが、それがまるであるような、つまり彼らが下であるとも取れる言い方は彼のカンに障ったはずだ。
「……有難い」
指揮官の言葉は一度途切れた。何か言葉を探してるようだ。
「特にラタイアで実戦経験を積んでいるあなた達は一番信頼しているわ」
「ここでもギルドと協働してやっとのことではあるが……」
「それは私たちも一緒よ。また、全員で協力して戦う日が来るわ」
「そうだな、今度の決戦が中止となったのは残念だったが、準備はいつでもできている」
中止となった決戦―――ラタイアイ平原で行われるはずだった作戦のことだろう。あそこにはギルドメンバーと合わせて、ラキア王国軍も勢ぞろいしていた。しかし、きっと上手くいくかわからない戦いにこうも意欲的なのは少し意外だ。
「海峡まで敵が迫ってるのは変わらないし、そう遠くはないはずね」
戦いがまたあるだろうということを確認し、安心したところで指揮官の彼も町の復旧作業へと去っていった。
それとともに、俺の方へセフィナが歩いてきた。
まずい―――と俺の本能が感じ取る。追放の1件から初めて顔を合わせるが、今となっては部外者であるだけの俺……問答無用で始末されてしまう可能性もゼロではない。
「数日ぶりね、アレス」
「ああ、ブレウスは一緒じゃないのか?」
ギルドマスターと一緒じゃないセフィナは珍しい。
「ギルドマスターなら、あの壁を作ってからすぐに残党狩りに行ったわ。あんたには関係ないんだけどね」
そういってセフィナは先ほど通りの建物を突き破って出現した城壁を指さした。
「あれは何だったんだよ」
「それはもちろん、あの上を走ってここまで駆けつけるためよ」
「それはよく考えたな、でも俺の風の《加護》があればもっと楽なのになあ」
わざとらしく頷く動作をして見せる。いつの間にか横にいたユクリアも同じく「うんうん」とやっている。