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第20話 鉄血のセフィナ ①

鉄血―――と叫びながらモンスターを殴り殺したのは勇者ギルドのサブマスター、セフィナだった。

 赤く光る腕が元通りになるのを見つめた後で、彼女は兵士たちの方を向く。

「危なかったわね、兵士さん」

 2発の打撃により見事モンスターを倒して見せたセフィナの佇まいに、おお……という感嘆の声が兵士たちから上がる。

 彼女は視線をそのまま俺の方へ移し、すこし驚くような顔をした。

 やばい……俺、殺されるのか?

「あら、アレス。なんでこんな前線都市に、モブの貴方がいるの?」

 目が合うなり、毒づかれる。

「だれがモブだ……お前こそ何でこんなタイミングよく飛び出てきてんだ」

 セフィナの疑問より、こっちの疑問のほうが先に湧いてきた。なぜ俺たちが戦闘してるところにこう都合よく登場することができたのだろうか。

「それは、こいつらを追っかけて来たからよ」

 セフィナは倒したモンスター、そして未だに俺が捕えているモンスターを順番に指差して言った。

「追っかけて?」

「そうよ、追い返すのに失敗したやつらが何匹か居てね……まああんたには関係ない話よ」

 ふん、と彼女は鼻を鳴らす。どうやら心の底から嫌われてしまっているみたいだ。

「それより、あのそよ風を止めてもらっていいかしら」

 不機嫌なままの声色で言われる。再び《加護》を馬鹿にされカチンとくるが、もはや続ける意味も無いのでおとなしく従った。

「ああ……しっかり倒して見せろよ」

「ええ。出来ないあんたの代わりにね」

 心底むかつくな!と心の中で叫ぶ。そして、突風を止めると、やっと自由を取り戻したモンスターがこちらへ向かってくる。

 彼女の《加護》が再び発動し―――構える拳は赤い光を取り戻す。

 この加護について、俺は詳細を聞いたことはない。本人はそれを分かっているのかすら知らないが、外から見てわかるのは、とにかく「筋力」って感じのスキルを得ていると云うことだけだ。

 モンスターはさっき倒されたやつと同じく、一辺倒に叫びながら突進してくる。こいつらは魔界の生物の中でもかなり知能の低い部類だろうが、図体の大きさとどう猛さは人間にはとてつもない脅威だ。

 その巨大なモンスターの突進にぽつんと一人の女が対峙する。とてつもなく異様な光景であるはずだが、この場面に限ってはとてつもなく頼もしい。

 モンスターがセフィナに肉薄する。彼女は右腕を、重い袋を放り投げるように振り、こぶしをモンスターの側頭部へぶつけた。

―――ドサリ。

 気を失ったか命が絶たれたか、殴られたモンスターは眠るように地に崩れた。


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