第1話 死にかけの《勇者》と〈モブ〉 ①
人類最強の《勇者》たち、そしてモブの兵士たち。
彼らは魔界からの侵略軍に敗北してしまい、全滅する。
しかし、《勇者》たちはあるチートスキルで復活できるのだ。
「誰か、助けてくれ……」
俺の右に横たわっている兵士が掠れた声で言った。
でも誰も助けてくれる人なんか居やしないさ。
だって、俺たちは魔界のモンスター達に負けて全滅したんだから。
「あんた……アレスか……?」
そうだ―――と返事をしようとした。
「あ゛……」
しかし俺は喉が潰されていて、まともな声は出せなかった。
「お前ら《不死の勇者》でもそんなこっぴどくやられるんだな」
ああ、そうだ。
俺は喉を潰されている上に、脇腹にも鎧を貫く大穴を開けられていた。冗談かと思うくらいの大きさの空洞が身体にできていて、あぶら汗が止まらなかった。
もちろんこれはモンスターの攻撃によるもので、出血もまた、止まることはなかった。
だが俺に話しかけている兵士も、身にまとう鎧はほとんど原形をとどめて無かったし、その留め具や吊り革は千切れ、残っているのは腰当てくらいだった。鎧の下の衣服も血に染まり赤黒く変色してしまっていた。
―――お前もボロボロじゃねえか、と視線を送ってみる。
「何見てんだよ、俺はやられて当然だろ。なんだってモブなんだから」
こいつは自称モブらしい。言われてみれば確かに顔も覇気がなく、鎧の色合いも地味だった。
「生きてるだけでほめて欲しいぜ。なぜなら〈モブ〉だから」
二回言うな、二回。こいつはそのうち語尾に〈モブ〉ってつけそうだ。
「ところでよ、これだけの死人を出しても、人間は勝てないんだな……」
それは俺も心が痛いね。
「《不死の勇者》も兵士もみんな集められたのにこのざまだ」
俺たちが死に体で会話をしていたのは《ラタイアイ平原》の真ん中らへんで、ここを中心にして平原には俺たちのほかに数千の兵士たちも同じように倒れてこんでいた。
その中でたまたま俺たちは死ねずにいた。多分みんな死んでるわけじゃないが、結局、誰も動いてないので同じことだろう。
「《勇者ギルド》のお前らとなら故郷を守れるって思ってたんだが」
死にかけの癖に兵士はため息をついてから言った。
「これでこっちの大陸も終わりだな。家族も故郷も」
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