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決意の裏には

亀投稿で申し訳ありません。来週テストが終わったら頻度上げれると思います!


 どんな手を使ってでも家族を守って見せる。そう誓ったからには、僕はあの日を絶対に迎えさせる訳にはいかない。その為に必要なのが、現状把握だ。今、僕が行うべき1番重要度の高い案件。

 それをしないからには何も話にならない。まず、自分の年齢すら不明では、いつ10年前のあの(一家惨殺)事件が起きてしまうかも分からない。それに、対策もまだ何も決まっていないのだ。今、事件が起こってしまえば前回となんら変わりのない結果になってしまう。

 現状把握をする事で、どれだけ猶予があるのか、あの事件に対抗する為に何が出来るのか、何を最優先で進めるべきか自ずと見えて来る。

 その為に、僕は現在自分が置かれた状況を事細かに知っておく必要がある。

  幸い、と言っても良いのか分からないが、現在僕は記憶障害を起こしていることになっているから分からない事は気兼ねなく聞くことができる。しかし、重要なのは現状把握ではなくその後だ。

 僕は自分の学力、知識力をお父様に認めてもらい、信頼を得なければならない。そうすれば、僕の話も聞き入れてくれるだろうから警備の強化もできる。前回は、苦労したけどしっかり領主をしていたからお父様に認めて貰えるような思考は出来るはずだ。

 それから、強力な魔力を持つ事を示し、魔力操作を教えてくれる家庭教師を家に迎える。前回の人生では魔法を扱う練習よりも領主としての仕事の方が最優先で動いていた為、魔法を使った記憶は殆どない。勿論、少しくらいなら魔力を使ったことがあるので、きっと優秀な子供には見えると思う。

 それにしても時間がない。あの日があと数年後だとしても、今の僕が何を言っても警備体制の見直しはされないだろうし、魔法の制御が出来るようになるか分からない。

 だから、早速家庭教師を付けてもらい、学力を見てもらい尚且つ魔法の操作を習う為に魔法士も寄越してもらおう。そう、お父様に頼もうと思ったが、あの事件の記憶を思い出して僕は考えを改めた。あの日倒れていたのは家族と使用人だけじゃない。私兵たちもいたのだ。根本、侯爵家の警備を強くしても変わらないという事に気がついた。

 そもそもの話、侯爵家の私兵がそこら辺のゴロツキなどに負けるはずがない。となると、屋敷を襲って来た奴らはそれなりの手馴れ、または魔術士などが挙げられる。バーリントン侯爵家には魔法が使える人はいない。まず、魔法が使える人はとても少ない。人口の1割もないと言われている程なのだ。勿論、お父様もお母様も兄妹誰も魔法を使えない。そうなると必然的にバーリントン侯爵家の中であの事件の犯人に対抗できるのは、唯一魔力を持つ僕だけという事になる。それに、正直な所あんな体験は誰にもして欲しくない。あんな気持ちになるのは僕だけで十分だと思っている。だったら、あの事件の存在ごと消せばいい。誰にも気づかれないように僕が1人で事件の犯人(奴ら)を排除する。そう考え、僕は誰にもバレないように魔力操作を出来るようにする事にした。

 思考が脱線してしまったが、やはり現状把握は必要不可欠なので、僕はお父様の執務室へ向かった。

 アポ無しだったのに笑顔で出迎えてくれたお父様はあっさりとこの時代の僕について教えてくれた。

 お父様は僕の頭を撫でながら、現在6歳で、無邪気で少し悪戯っ子な男の子で、臆病なところがあり、1人で行動する事は少ない。そう教えてくれた。

 僕はお父様の話を聞きながらとても懐かしい話を聞いている気分になった。それもそのはず、()()()()の僕の行動は前回の()()()の僕と同じなのだから当たり前の事だ。


 「エール、君は私と同じこのダークグレーの髪を特に気に入っていたんだよ。それは覚えているかい?」


 勿論、覚えている。ダークグレーの髪に関しては、幼少期だけの思い出じゃない。前回もお父様とお揃いのダークグレーのストレートの髪が大好きで、と言うよりも尊敬するお父様とそっくりだと言って貰えるのが嬉しくてみんなに自慢していた。あの事件の後もだ。お父様の様な立派な領主にになる為の勉強も、務めも、ダークグレーの髪が僕の心の支えの一つだった。


 「ええ、覚えていますよ」


 そう言うと、お父様はまた少し笑みを深めて、僕の髪に触れた。


 「真っ白になってしまったけど、君が私と同じ髪色だった事は変わりない事実だ。あまり悲しまないでくれ。それに、この色はこの色でとても綺麗で、お母様とお揃いの碧瞳がとても映えるな」


 お父様はそう言うと、僕の頭をまた優しく愛おしそうに撫でた。僕は、お父様の手の温もりを頭で感じ、泣きそうになってしまった。そして、前回(前の人生)最後に触れた時のお父様の冷たさを思い出していた。

 周りは業火で焼き尽くされ、暑いというのにお父様の肌は真冬の凍えそうな時の様に冷たくて、硬かった。今思えば、それは死後硬直だったのかも知れない。だとすれば、僕は一体どのくらいの間夢の中でうつつを抜かし、家族を放って置いてしまったのだろうか。僕は罪悪感を感じる顔を顰めた。

 そんな僕をお父様は抱きしめて、トントンと一定のリズムで背中を叩いてくる。お父様の温もりと、背を叩くリズムを心地よく感じる。この体は、まだ6歳だったか。6歳児の脳には少しばかりか難しいことを一日中考えていたからか、疲れ切った体はお父様の腕に落ちていった。


 「お休み、エール」

 

 そう言って、眠った僕の頬に流れた涙をお父様が拭き取った事など、その時の僕は知らない。

 

死後硬直は死後2時間程で始まるらしいですよ。エールはどれだけ寝てたんでしょうかね。

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