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消えた光

気づいたら1ヶ月も放置してました汗


 陛下への挨拶は入場の時と違い、爵位が高い人から行われるため、随分と早く順番が回ってきた。僕はお父様とお母様と一緒に挨拶する事になっているが、リュヌは従者なので、僕の後ろに立ち、挨拶が終わるまで頭を下げているこのになる。なので、リュヌは僕の後ろに蒼白い顔で控えていた。


 「ああ、従者でよかった。挨拶しないで済む。顔伏せてるだけだから顔色バレないし、本当に従者でよかった」


 ぶつぶつとリュヌは僕にしか聞こえない声量で呟いている。よっぽど出会った時の方が宜しくない状況だった気がするが、彼はあの時より今の方が顔色が悪いな、と全く関係ないことを考えながら順番を待った。ひとつ前の人が立ち去ると、僕はお父様とお母様と並んで陛下の前まで進み、お父様と一緒に辞儀を、お母様は辞儀ではなく、美しいカーテシーを見せた。


 「陛下、並びに妃殿下、殿下、本日は殿下のお披露目(社交界デビュー)にお招きくださり有難う御座います。こういった節目にお祝い出来ますことと大変喜ばしく思います」


 お父様は辞儀の姿勢をとったまま挨拶の言葉を述べた。


 「面を上げよ」


 陛下の命で僕たちは顔を上げ、陛下の方を向いた。

 陛下は、僕の記憶より大分若く、健康そうだった。白く染まっていた髪は、まだ美しい金色で、濁る事なく、澄んだ碧色をしていた。僕が最後見た時は、肌艶も悪く、不敬に当たるので絶対に口が裂けても言えないが、ヨボヨボのお爺ちゃんみたいだった。歳はお父様とそんなに変わらないはずなので、当時50歳くらいだったはずだが、それにしては老け込んでいた。あの時の国の情勢はあまりよろしくなかったので、心労が溜まっていたのだと思う。脱線してしまったが、現在のまだ若々しい陛下は、誰が見ても美しいと述べるような逞しくも儚げのある美丈夫だった。


 「イーサン、ネージュ夫人、そして、エールよく来てくれた。エールのことは災難であったが、無事で何よりだ。今日は快気祝いだと思って存分に楽しんでいってくれ」


 そう言うと、陛下はおおらかに笑いお父様と抱擁を交わした。

 「はい。では、これで失礼します」


 お父様が最後に礼をして陛下との挨拶は終了した。そして、また次の人が前に出て陛下に挨拶をしていく。陛下はあんなにおおらかに笑っているが、挨拶はこの会場にいる貴族全員がする為相当な労働なはずだ。僕は密かに関心してしまった。

 王族の席を後にした僕たちは、挨拶回りという名の情報交換ををし始めた。勿論、最初は高位貴族の方々。その次に同じ派閥の方々。挨拶回りはパーティーの目的といっても過言ではない。僕も()、伯爵としてパーティーに参加した時は沢山の人に挨拶をして情報を仕入れたものだ。ただ、僕は現在子供なのでお父様とお母様について回って挨拶をするだけなので大した情報を仕入れることはできなかった。

 暇だったのでリュヌと一緒に食事でもしようかとお父様に話しかけたその時、大きな爆音と共にシャンデリアの光が消え、会場はパニックに陥った。

 暗闇の中から誰かの叫び声が至るところから聞こえてくる。慌てながら動く衛兵、逃げ惑う人達、全然似てないのにあの時を思い出し、体が震えた。手先が冷たく力が入らない。何が僕をこうさせるのか。回らない頭で考えても答えは出ない。呼吸がだんだん浅くなり、ヒューヒューと嫌な音をさせた。すると、誰かに抱きしめられた。


 「エール様、大丈夫です。俺が一緒にいますから」


 その声で、僕を抱きしめているのがリュヌだと知った。リュヌは僕を落ち着かせるようにトントンと一定のリズムで背中を軽く叩いた。


 「エール、大丈夫か?怪我はしてないか?」


 不意にお父様の声が聞こえた。


 「は、はい。だい、じょうぶです」


 普通に返事したつもりが、自分から発せられた声は弱々しく震えていた。


 「大丈夫、大丈夫よ。もうすぐ明るくなるから。それに、お父様もお母様も一緒だから心配ないわ」


 お母様は僕を安心させるように優しい声でそう言った。それから、少し経つと目が暗闇に慣れ、誰がどこにいるか判別出来るようになり、お父様とお母様が膝をついて、僕に目線を合わせながら心配そうに見つめていることにやっと気がついた。

 

 「もう大丈夫です」


 そう言うと、2人は僕の頭を優しく撫でた。そして、お父様は真剣な目で僕の目を見つめこう言った。


 「今度こそは守るからな」


 初めて言われた言葉だった。どちらかと言うと、僕の言葉だと認識していた言葉。「今度こそは守る」これは僕が()()()から掲げていた1番の目標だった。何故か涙が流れて止まらなかった。お父様とお母様、みんなが亡くなった()()()から僕は誰かに愛された記憶がない。ただただ、人に愛されると言うことはこんなにも温かいことなのかと胸がいっぱいになった。そうか、僕は()()()から誰かに愛されることに飢えていたのか。何故か止まらない涙でそのことに気がついた。


 やっと震えが落ち着いてきたと思ったその時、シャンデリアの灯りが一瞬にして灯った。


 「あ、明るくなりましたね!」


 リュヌが良かったと声を弾ませて言った。それに答えて「良かったね」と言おうと思い、何気なく王座の方を向くと、ローブで全身を隠した細身だが高身長の人が陛下に剣を突きつけていた。同じように周りの人も気がついたようで、またしてもいろんなところから悲鳴が聞こえた。そして、陛下に剣を突きつけた男が拡張魔法を使い、ここにいる全員に聞こえるように話し出した。ただ、その内容は思いも寄らないものだった。


読んでいただきありがとうございます!

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