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知らない夜会に

お久しぶりです!

夜会編開幕です( ̄▽ ̄;)


 家のとは比べ物にならないくらい豪華で大きなシャンデリアに、その光を反射する銀食器。そこら中から聞こえるグラスのぶつかる音、貴族たちの話し声、オーケストラが奏でるワルツ。それらが騒めきとなり一人一人の声をハッキリと聞き取ることは難しい。色とりどりのパーティードレスが花のようにあちこちに咲いていて、まるで庭園にいるかのようだ。

 僕は入場口でお父様とお母様、リュヌと共に呼ばれるのを待っていた。この夜会は王族主催。爵位を重んじるこの国では夜会の入場だけでも順番がある。まずは爵位の低い男爵から入って行き、子爵、伯爵、侯爵、公爵と入場して行く。そして、最後に王族が入場し、王と王妃がファーストダンスを踊ると本格的に夜会が始まる。


 「エール、お前は本当に大人しいな。兄さんや姉さんが初めて夜会に出た時は『いつになったら中に入れるんだ!』って何回も何回も聞くもんだから参ったのに君は聞かないんだね」

 

 お父様が僕の頭を撫でながら嬉しそうに言った。それに同調してお母様も僕を撫でながら、エールは兄弟の中で一番賢いかもしれないわね!なんて言って喜んでいる。


 「そんな事ありませんよ。だって、今は伯爵位の人たちが入場しているから、僕らの出番はまだまだ先なの分かってますから」


 僕が苦笑いしながら言うと、丁度タイミングよく、入場口に立って入場する人の名前を呼ぶ係の人が、大きな声で伯爵の名前を言っているのが遠くから聞こえてきた。


 『アルフィ・クレメンス伯爵並びに、エミリー・クレメンス伯爵夫人の御入場です!』


 声に合わせて大きな扉が開き、クレメンス伯爵は奥方をエスコートしながら会場へ入っていった。

 僕は伯爵から目線を外し、お父様とお母様を見る。


 「ね?まだ伯爵位の人たちだから、まだかかるよきっと。それに、僕もう6歳なんだからそんなこと言わないよ」


 肩をすくめると、お父様が困った様な顔をしていた。


 「ん?お父様どうかなさいましたか?」


 僕が怪訝そうな顔をしていたのか、お父様は僕の頭を再び撫でながら弱ったなと口を開いた。


 「実は、エールは他の子たちと違って、みんなより早めに夜会に参加してるんだよ。他の子はみんな10歳から夜会に出ているから、エールがそんな事言ったら兄さんや姉さんは形無しじゃないかと思ってね」

 

 僕がびっくりしていると、お母様も同じ様に思ったらしく、眉をハの字にして困った様に笑った。


 「そうね、あの子達よりエールは大分大人みたいね」

 

 よくよく考えてみると、(逆行前)のときは両親と夜会に出たことが無かった。行ってもお茶会程度だった。()初めて夜会に出た時は1人で、ろくに会話もできず、ひたすら質問攻めにあい、もみくちゃにされて大変な想いをしたのを思い出した。最初から違和感はあったのだ。もう、一度経験しているはずなのに、こんな夜会は来た覚えがなかったのだ。場所は王宮なので来たことはあるが、僕の知っている王宮の作りと何処か違う気がする。だけど、両親と夜会に行ったことなかった事を思い出し納得した。この夜会は僕が来たことのない、初めて見る風景だ。覚えが無くて当然だ。

 そんな事を1人悶々と考えていると、肩をチョンチョンと突かれた。突かれた方を見ると、リュヌが、挙動不審に辺りを見回しながら僕を縋る様な目で見てきた。


 「エール様、俺、緊張で心臓が口から飛び出そうです!俺ちゃんと生きてますか?これ夢とかじゃないですよね?」


 リュヌの背中を撫でて落ち着かせながら僕は、リュヌに言い聞かせる。


 「リュヌ、緊張するのは分かるけど、もう少し落ち着いた方がいい。それに、君は生きているし、この夜会は本物だし、夢じゃないよ」


 そう言うと、リュヌは驚愕の表情と、地獄に落ちたと物語っているような悲壮感漂う表情をさせた。


 「誰か、夢だといってくれ!」


 リュヌは弁えてるようで、周りに迷惑にならない音量で叫んだ。


 「リュヌ、諦めた方がいいよ。きっと、この先何回もこういったところに来る事になる。今のうちに慣れた方がいい。大きくなってからヘマするより、まだまだ子供の時にヘマした方が大分マシだよ」


 そんな事をリュヌと話していると、両親に話を聞かれていたようで、お父様は僕らを愛おしいそうに見つめながら、今度は片手片手で僕とリュヌの頭を撫でながら話し出した。


 「そうだ、お前たちはまだ子供なんだから失敗して当たり前。存分に間違えて、失敗して成長しなさい。人は、失敗や過ちを経て成長するんだ。だから、失敗を恐れないで体当たりしてみたらいいさ」


 そんなお父様の言葉に僕はリュヌと顔を見合わせ、元気よく返事をした。

 そんなこんなしているうちに、大分時間が経っていたようで、とっくに伯爵位の入場は完了していた。そして、待ちに待ったバーリントン家の順番が回ってきた。


 『イーサン・バーリントン侯爵並び、ネージュ・バーリントン侯爵夫人、エール・バーリントン侯爵令息の御入場です!』


 その声を合図にバンッと大きな音を立てて扉が開いた。

 僕は新たなる悲劇の始まりへと一歩を踏み出した。

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