夕陽より赤く、赤々と
テストがあったので、だいぶ遅れてしまってすみません!
1人、2人と僕らは牢屋の中から子供達を出していき、地上まで連れて行った。子供は思っていたよりも多く、衰弱している子も多くいた。これでは僕らが助けを呼びに行って、大人が来るまで待つなんて悠長なことを言っていられる余裕はない。
しかし、僕らは子供である上、今現在体力が有り余っている奴など1人もいない。寧ろ疲れ切っている。よって、誰が助けを呼びにいくなど無理に等しいだろう。だからと言って、助けを呼ばないのは更に悪手。時間が経てば今伸びているここにいる大人たちが起きてしまう。
そうすれば、僕らの今までの行動は無意味となる。
かと言って、子供たちで騒ぎを起こせして、大人たちが駆けつけて来れば、伸びている奴らを疑問に持たないわけがない。酔っ払いと、変態は僕らがやって無いとは言え、魔術士に関しては完全に僕の魔力の濃さにやられている為言い訳が立たない。
僕は牢屋から出した子供達を安心させるように、僕がどうにかするからと話しかけながら、何か自然な流れで大人が駆けつけてきてくれないものかと思案する。
ふと、子供の鳴き声がした気がして顔をパッと上げた。ここにいる子供達は緊張状態な上、衰弱し切っているから泣く力もなく、どの子もぐったりとしているからおかしいと思ったのだ。
しかし、周りを見渡しても子供は依然とぐったりしたままで泣き出しているかなどいない。空耳だったかと、遠目で目の前に聳え立つ廃城を見つめたそのとき、僕は目を見開いた。
廃城が赤々と燃えていたのだ。
びっくりして後ずさってしまい、脚がもたれて転倒してしまった。慌ててもう一度廃城を見ると、廃城は燃えておらず、真っ赤な夕陽によって燃えているように見えていただけだった。まるであの日の記憶を呼び覚ますかのようにただただ赤かった。
「大丈夫か?」
頭上から声がして、声の方に顔を向けると、少年が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「城が燃えているように見えたんです。少し嫌な事を思い出して慌てただけ…」
そう返すと、少年は興味なさげに「ふーん」とだけ言った。
「みんなもう限界だよ。みんな牢屋から出してたけど、逃げる体力なんてないよね。どうする?」
少年は僕に夕陽なんか見ている場合ではないと、今からどうするのか催促して来た。
「ええ、みんな限界です。だけど、夕陽を見ていい事思いつきました」
そう彼に告げると、彼は本当かと驚いたように目と口を開き僕を見て来た。
「ほ、本当か?」
彼もきっと限界なのだろう。震えた声で僕に呟いた。
「勿論ですよ。善は急げという事で、僕はさっさと実行してくるので、子供達を城に近づけないよう見張っていてください」
そう言うと、彼は素直に頷き、子供達の中でも一際小さな子達がいる場所へと歩いて行った。
正直なところ、彼に今からやる事を見られたくなかった。それに、きっと彼も他の子供達と等しく衰弱している。ましてや、僕を庇って負傷しているのだ。休ませてあげたかった。
僕は彼の背中を見送ると、廃城へと足向け、歩き始めた。
廃城に着くと、僕は前幼いときにオークションの商品として売られそうになった時の事を思い出していた。
たくさんの仮面を被った奴らに、僕をじっくりと舐めるように見る目。全てが恐怖の対象であり、僕の心と身体をボロボロにさせた原因だった。だから、初めて放った魔法は抑制が効かず、威力を増してしまったのだ。
僕はそんな事を思い出しながら、廃城の壁に手をつき、魔力を送り込んだ。そして、あのオークション会場を再現するかのように、火の海を造り上げた。
夕陽よりも赤く、目立つように。
誰かがいち早く僕らを見つけ出せるように。
勿論、僕ら子供達を誘拐した、地下にいる奴らには騎士団に捕まって貰わなければならないので、火が地下に行かないように操作する。
僕が魔法を使えると分かっている魔術士には、僕の事を話さないように魔術を施したから大丈夫だとしても、この火災をどう言い訳しようか。そう思案しつつ、僕は子供達のいる場所へ向かった。
僕が、子供達の元へ着く頃には、直ぐに消せることのできるレベルだった火は、城を覆うように赤々と燃えていた。夕陽のあの赤に負けないくらい赤々と。
周りがもうすっかり暗くなっていたおかげで、城を燃やす赤い火はとても目立ってくれていた。救助が来るのは時間の問題だと判断した僕は、子供達にもうすぐ助けが来るから大丈夫だと、声をかける。
きっと、あの事件を見た第三者はこんな風景を見たのだろうと、燃える廃城を見つめながら、一度燃えた自分の帰るべき屋敷に想いを馳せた。
次でこの章終わりです!(多分)