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小さな救世主

あけましておめでとうございます!

しばらく開けてしまって申し訳ありません。どの様に話を発展させて行こうか迷っているうちに大分時間が経ってしまっていました。

一向に明るい話になりませんが、今年も『【連載版】いつだって残酷なこの世界で〜貴族令息の逆行復讐劇〜 』をよろしくお願いします。m(_ _)m



 (旦那様)は完全に気絶している様で、魔術士に引きずられても全く起きる気配はない。

 魔術士は男の脚を持ち、牢屋の端まで引きずると雑に放り、穢らわしいものを触ったと言わんばかりに顔を顰めながら手を(はた)いた。


 「ああ、なんと穢らわしい。折角の主人(あるじ)直々に仰せつかった任務だというのに。この駒本当に役に立ちませんでしたね」


 魔術士はコツコツと足音を鳴らしながら、ゆっくりと此方(こちら)に歩み寄って来た。

 そして、少し離れた場所に立つと、僕を見定める様に上から下に目線を動かした。


 「やはり、流石は我が主人と言ったところでしょうか。子羊の様に震える様子も大変美しい。これでやっと僕も主人に認めて頂ける!」


 魔術士の口調は徐々に早くなり、高揚しているのがよく分かる。それに、笑いながらも目が血走っている所から察するにこの魔術士は()()という人物に狂酔している。まるで悪魔に取り憑かれたかの様に。

 魔術士はその主人を思い出しているのか、目をうっとりとさせながらこっちを見た。

 目が合った。その時何故か既視感を覚えた。この気味悪い笑顔を僕は知っている。そう思った。

 そして、笑みを浮かべた口元を見た瞬間、正体に気づいた。この(魔術士)は、僕を()()()あのピエロなのだと。

 僕を()()()ピエロは、仮面をしていたから顔全体が見えたわけではない。だけど、僕を見て笑った時の口元が同じだった。それが、僕の野生の感にこいつはあの時の(ピエロ)だと訴えさせている。

 こいつが僕の感通りあの時のピエロだったのなら今後生きられるのは困る。なんたって、こいつが生きていれば僕はまた()の様に無様に殺されてしまうからだ。不安因子の種は摘んでおこう。そう思いながらニヤニヤと笑う魔術士(ピエロ)の動きに警戒しつつ()るタイミングを見計らう。

 僕が上体を上げると、魔術士は逃げ出されると思ったらしく術を発動させた。


 「やめろ!」


 術を喰らいそうになったその時、地下牢に甲高い鋭い声が響き渡り、声と同時に小さな影が牢に侵入して来た。影は素早く魔術士の背後に回ると、高く跳び、頭にしがみ付いた。


 「うわぁぁぁ!」


 大声を出して魔術士にしがみ付いた子供は、己を剥がす為暴れ回る男を離すまいと必死にしがみ付く。


 「離しなさい!私の美しい顔に傷がつく!」


 魔術士はそう叫ぶと、少年に術を放った。

 術を食らった少年は吹っ飛び、バンッと大きな音を立てて壁にぶつかり床に横たえた。目の上を切った様で、そこからどくどくと血が流れ出し、鉄の匂いが充満する。

 

 「ああ、この子はもう使えない。ですがまあ、部分別にすれば十分貰い手が見つかりそうですね」


 魔術士は冷ややかな目で少年を見ながら言った。

 その言葉に僕は目の前が真っ赤に染まったのを感じた。そして、感が確信へと変わった。

 やはり、魔術士は()()()のピエロだったんだ。

 そう思うと、ついさっきまで魔術士(こいつ)に恐怖を感じていたのに、恐怖など消え去り、禍々しい憎しみの感情だけが決壊したダムの様に溢れ出した。


 「はっ、はは」


 乾いた笑いが牢に響く。


 「ゔっ」


 唸り声に振り向くと、床に横たえた少年が此方を心配そうに見つめていた。壁に全身をぶつけ、血を流し、人の事を心配している余裕など無いはずの子供がだ。その姿は痛ましく、過去の自分を彷彿とさせる。

 何故理不尽にも、力の無い子供がこんな仕打ちを受けなければならないのか。

 禍々しい憎しみの感情と共に、全身に魔力が満ちていくのが分かる。

 ガタッと音がし、音の方を見ると、魔術士は怯えながら僕を見ていた。そして、小さ過ぎて聞こえない様な声で"ごめんなさい"と何度も呟いた。

 僕は更に魔力を放出し、魔術士に圧をかける。


 「許してやろう。だが、二度目は無い。次有ったとしたらお前の首はないと思え。話は騎士団にしろ。そして、罪を償うんだな」

 

 正直な所、殺してしまいたいほど憎んでいる。だが、僕を惨殺したの()()の魔術士だ。今のこいつではない。しかし、子供たちの誘拐はまた別問題。それに、こいつが()を殺したのだとすると、今現在(事件前)既に何か有益な情報を持っているかも知らない。そうなると、殺すよりも首輪で繋いでいた方が得策だ。そう思案しながら僕は魔術士に僕のことを話せない様に術をかけた。

 僕は魔術士に術がかかっているか確認すると、床に横たえている少年の元は駆け寄り介抱する。少年は全身打撲と目の上を少し切っただけで命に別状はなく、意識もはっきりしていた。

  

 「大丈夫か?」


 楽な姿勢になる様に手を貸しながら聞くと、少年は気が抜けた様に笑った。


 「ふっ、ああ。君のおかげで助かった。ありがとう」


 そう言うと、彼は頭を下げた。


 「いや、こちらこそ自分からやりに行ったのに君に助けてもらって」


 自分から挑発し男を誘導したが、逆に襲われてしまった事に反省しつつ、本音を言った。

 すると、彼は困った様に僕の言葉を肯定した。


 「本当だよ。忠告したのに自分から挑発するからびっくりしたよ」


 彼の発言で気が付いたが、この少年は僕が入れられた牢の隣に入れられていた少年だった。

 

 「そんな事より、他の牢屋に入れられている子たち出してあげないと!みんなそろそろ限界なんだ」


 少年はハッと顔を上げ、僕に訴えてきた。

 彼にはまだまだ聞きたい事はいっぱいあったが、他の子たちの事を考え、安全の確保と救援の要請を最優先する事にした。


 「まずは、牢から子供達を出しましょう」


 僕がそう言うと、彼が頷いた。それを合図に僕らは他の子どもたちを外に出すためにと駆け出した。


 

 

少年の名前どうしましょうかね笑

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