狼の誕生日と三匹のこぶた
その日だけは大人しくしていた。
何故なら今日は僕の誕生日だから。
だから今日だけは意地悪はしないでおこうと決めたんだ。
末っ子のこぶたさんに呼ばれた。
理由は分かっている。きっと僕の誕生日を祝ってくれるのだろう。
僕は出来たばかりのワラの家へと招かれた。
ワラの家は風通しが良く、涼しくて良い感じだ。
でも、どうやら僕の誕生日を祝う為に呼んでくれたわけじゃないみたいだ。
「どうだい。凄い家だろう?」
僕は笑顔で頷いた。けれども、ワラが鼻に入って大きなクシャミが出た。
ワラの家は見事に吹き飛んでしまった。
次男のこぶたさんに呼ばれた。
理由は分かっている。多分僕の誕生日を祝ってくれるのだろう。
僕は出来たばかりの木の家へと招かれた。
木の家は優しい匂いがして、暖かいぬくもりがした。
でも、どうやら僕の誕生日を祝う為に呼んでくれたわけじゃないみたいだ。
「どうだい。凄い家だろう?」
僕は飛び切りの笑顔で頷いた。けれども、木くずが鼻に入って大きなクシャミが出た。
木の家は見事に吹き飛んでしまった。
長男のこぶたさんに呼ばれた。
理由は分からない。僕の誕生日を祝ってくれると嬉しいな。
僕は出来たばかりのレンガの家へと招かれた。
レンガの家はとてもしっかりしていて、それでいて居心地が良い。
でも、やっぱり僕の誕生日を祝う為に呼んでくれたわけじゃないみたいだ。
「どうだい。凄い家だろう?」
僕は弾けんばかりの笑顔で頷いた。けれども、レンガの粉が鼻に入って大きなクシャミが出た。
レンガの家は見事に吹き飛ばなかった。
「誕生日、おめでとう」
長男のこぶたさんが、奥からケーキを取り出した。
「おめでとう」
「おめでとう」
ワラだらけの末っ子こぶたさんと、木くずだらけの次男こぶたさんが、後からやって来て拍手で僕の誕生日を祝ってくれた。
「ありがとう」
僕は涙で前が見えなくなった。
皆で美味しい料理を食べて、とても素敵な時間を共有した。
少しだけ、と、こぶたさんがブドウのお酒を出してくれた。
初めて飲むお酒の味は美味しかった。
でもそれ以降、僕の記憶は無くなった。
気が付いたら、こぶたさん達は誰かに食べられていた。
読んで頂きましてありがとう御座いました!!
(*´д`*)