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黄昏の時代に Act6

手がけるのは魔法と機械の融合。


それが世界に与える影響は?!

まだ魔鋼機械の黎明期のことだった・・・

研究室ラボにマコトの声が響いた。


魔法と機械の融合による力の発揮・・・

<魔鋼>と呼ばれる事になる、戦争に革命を生み出す魔法の機械。

魔法使いの力を与える事に因り稼働する戦闘機械。


マコトが危惧しているのは、魔法を持つ者がほぼ女の子であるという事。

古から、魔法使いは魔女とも呼ばれ恐れられて来た。

但し、魔法を信じる者のみの話なのだが。


魔法を信じる者は、何を根拠に語るのか。

眼にしたとしても信じられると思うのか。

信じない者には、唯の偶然としか思えない事としか映らないだろう。


この現代で魔法が存在している事を認識している者は僅かしか居ない。

不可思議な力が存在している事を知る者は、当事者にしか解らない事でもあった。


魔法が存在していた事は、古文書などからも伺い得たが、確たる証拠があった訳ではなかったのだ。

近世のなり古文書の研究も進むと、研究者の中から実験を試みる者が現れた。

誰がどのように魔法を使えるのか。

魔法とは一体何なのか・・・そして、力は役立てられるのか?


研究者は偶然に、見つけた。

魔法使いには、物質を変換させる能力が備えられている事を。

古から伝えられている通り、属性を持つ石に因って。


秘められた力を行使するには、属性のある秘宝石まほういしが魔法使いには必要なのだと。

発見された秘宝石を偶然手にした者が、魔法使いであったことから発見されるに及んだという。


事実はどうであったかは知らされていないが確かに魔法は存在し、

魔法を行使する者もまた存在している・・・


現代に至るまで、知られざる存在であった魔法使いが俄かに着目を浴びるようになったのは、

魔法が人の世界に与える力を研究されるようになってからだった。


魔法と機械・・・その合さった力が齎す物とは?


ミユキが少し怯えた様な顔を向けてくる。

物静かな青年が発してしまった声色に。


「あ・・・ごめん。驚かせちゃったね?」


マコトは詫びながらも、ミユキに訊いた。


「ミユキさんは魔法使いだと言っていたから。

 僕の研究している機械に関りがあるから・・・ミユキさんの部隊が」


女性ばかりの部隊。

その実情は、魔法使いばかりを集わせた秘密部隊なのだろう。


ミユキは受領する為に駐屯していると言った。

しかし今現在、戦力になるような装備には程遠いと感じていた。

試験もろくに出来ない・・・どれ程のリスクが伴っているかも判らない。

決定的に魔法使いたる者が不足していた。

危険を伴う実験だから、おいそれとは行えない。

結果、実用にはまだまだ研究と実験が必要だった。


「まだ・・・ミユキさん達に渡せられるような物ではないんだよ・・・」


自分が担当している実験結果がまだまだ実践部隊に渡せられるような物ではないと言い切った。

普通の武装ならば、実施部隊に渡してからも改修を繰り返せばよい。

だが今、自分が担当している魔鋼の機械は、まかり間違えば人身事故を引き起こしかねない。

それも受領した部隊を全滅させ兼ねない程の・・・


「マコト様・・・私達に与えられるのは魔法使い専用の武器なのですか?」


分かっていたであろうに。

ミユキはマコトが心配している事には触れず、


「だとすれば、やっと私達にも活躍の場が与えられる事になるのですね?」


マコトはミユキが何を言っているのかが解らなかった、解る訳も無かった。


「私達魔法使いは、各地より集わされたのです。

 特別な任務を与えるからと・・・国家の為に、と言われて」


話し始めたミユキの顔が儚げに見える。

なぜ軍隊に入ったのか、なぜ女官から軍人となったのか。


「マコト様、私は宮廷に務める北面の神官巫女でした。

 古来から受け継いできた力を宿す者として。

 ですが、最早それも必要のない事になったみたいなのです。

 今は世界が相手となったと、外国が主敵になったから・・・と」


神官巫女の務めが天皇を御守りする事に在るのは聞いた事があった。

それはまだ世界を相手にする以前の話。

日の本国内が騒乱の最中にある時代に造られた官職。


「祖先から受け継いできた神官巫女の役目も、もう必要のない事なのだとか。

 ですから女官から役職を外され、使い道のある軍に入るように命じられました。

 それが御上の命ならば、受けねばならなかったのです。

 私も出来るのであれば技術士官の道を目指したかったのですが、

 御上から命じられたのは魔法使い専門の部隊創設に尽力せよとのお達し。

 魔法使いを集わせた部隊に因り、日の本を弥栄いやさかに奉ぜん・・・と」


ミユキが自分がどうして軍隊へ、女子だけの部隊へと入る事になったかを教えた。

それは逆らう事の赦されない時代の荒波だというのか。

女官として召し抱えられていたミユキが、軍隊へと下らされた理由。

それが自分の研究している<魔鋼>に因るのだと判ったマコトが。


「ミユキさん、でも・・・でもだよ?

 魔法使いに与えられる機械は、未だに実用の域には達していないんだ。

 まだまだ実験を繰り返さねば、使い物にはならない。

 それには・・・危険な実験を行わねばいけないんだよ」


マコトは研究室ラボに置かれた機械の一部を観て、まだ使用には堪えないと教える。


「マコト様、お話は良く解ります。

 勉強なさっていた研究の成果が、今ここに実を結ぼうとしているのでしょう?

 私達がここへ遣わされた意味は、出来上がった武具を受領する事。

 それがまだ使用に耐えないものであろうと、受け取ったからには使わねばならないのです」


どれだけの危険が伴おうとも、軍隊に在っては否応も無い。


「マコト様がご心痛されるのは良く解ります。

 自分の手にした物が扱う者に危害を加えるかも知れない・・・

 もしかすれば甚大な被害を産んでしまう。

 ・・・解られているだけに実験が必要なのですね?」


急にミユキが微笑みを浮かべて訊いてきた。


「え?!まぁ・・・そうなのだけど。

 実験と云っても、不安な部分が多いから。

 手直ししながらじゃなければ、とても行えないよ」


マコトが言いたい事がミユキに伝わったのかどうか。

不安げに話したマコトに対し、微笑みを浮かべて訊いていたまま。


「マコト様が行いたいように実験為されれば?

 ここには魔法使いが集っているのですから?」


暗に部隊の女子を使えと言っていた。

受領しに集った他部隊の魔法使いを独断で使える筈もない。

それこそ越権としか言いようがない事なのに。


「マコト様が魔法使いの身を案じられておられるのに、

 どうしてその魔法使いが黙っておられましょう?

 誰も請け負わないと言うのなら、私めがお受けいたしますわ!」


耳を疑った。

自分がどんな危険があるかも判らないと言ったのに。

目の前の魔法使いミユキは自分が請け負うと言い切っている。


「馬鹿な!ミユキさんを危険な目になんて合わせられない!」


ミユキを想って言ったのだが、


「あら、マコト様は自分の実験に自信がございませんの?

 私はマコト様ならきっと成功されると、想っておりますのよ?」


マコトに対して信頼の言葉を返してきた。


「で、でもっ。もしかの可能性だってあるんだから・・・」


自分を信じて身を投げ出す覚悟を示すミユキに、それ以上言えなくて・・・


「成功する可能性の方が高いのでしょ?

 私はマコト様の事を信じると申し上げたのです。

 何も疑ってなどいないのですから、ご心配などいりませんよ?」


自分がもう実験を請け負うと決めたかのように答えてくる。


― どうしてそこまで信用できるのだろう・・・


見開いた眼で微笑む顔を見詰めてしまう。

何がミユキをそうまで言わしめるのか・・・と。


「ミユキさん、君は僕を信用すると言ったね。

 どうしてそうまで言い切れるんだい?

 僕は神様なんかじゃないし、失敗するかもしれないんだよ?」


見詰める先の少女に問いかける。

自分に対して献身的な魔法使いのミユキに。


「いけませんか?私みたいな者がマコト様に尽くすのは。

 マコト様になら身を尽くしても惜しくないと想う事が?」


なぜこうまでミユキを言わしめるのか。

マコトにはミユキの気持ちが解らなくなっていた。

儚げに微笑む少女の顔に、少しだけ朱が挿す。


「いけないも何も、ミユキさんは僕にそんな義理を果たすような事があるのかい?

 僕はミユキさんにどう報いれば良いのか解らない。

 こんなに慕って貰える程、立派な男じゃないんだから」


愛とか、恋とか。

そんなもので測り様がない。

命の危険だってあるかも知れない。

マコトはこれ以上ミユキを巻き込みたくはなかった。

それが、自分の隠された本心の吐露だとは感じていなかった。


「お気づきになられておられないのですか?

 私の心はお逢いした時よりずっと変わりませんのよ?」


挿絵(By みてみん)


ミユキの声が震えていた。

儚げに、悲し気に。


「それは・・・僕も・・・同じだよ?」


マコトの声も。


唯、判り合えるだけで十分だった。

告げられた言葉の意味が、本心を曝け出した。


「マコト様は、あれ程勉学に励まれておられましたもの。

 その姿に見とれる程、私の心に刻まれましたもの。

 あなた様のお役に立てれるのなら、私は望外の幸せと思えるのです」


慕う言葉に嘘偽りがあろう筈がなかった。

ミユキの言葉は、献身の一言では表せない。


「ミユキさん、僕は・・・今の言葉を忘れない。

 何があっても君を護るから、失敗なんてしないから!」


気が付けばミユキの両手を握り締めていた。

誓いをたてるつもりで握ったのだったが。


「ひゃぁいっ、マコトしゃまぁー」


呂律までおかしくなる程ミユキは赤面して頷いていた・・・


自ら実験台になると言い張るミユキ。

彼女がどうしてマコトに尽くそうとするのか?


彼女は一体?


次回 黄昏の時代に Act7

君は魔法の力を放てるのか?!自らを制御出来るというのか?!

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