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希望への譚詩曲ー受け継がれる光ー Act-4

何も知らなかった。

唯、気が付いてしまった。


衝撃波を伴った爆発に、心がざわめくのを停めれなかった。



今回が本編の最終話です。

次回はエピローグになっております・・・

火柱が立ち上っていた。

衝撃波と爆音が消えた跡に・・・



音がした方角を観たミハルもマモルも。

その方角にあるべき建物が何所かというを慮る余裕を失っていた。


「あっちはお父さんの研究所がある方だ!」


やっとのことでマモルが叫び声をあげる。


「まさか、そんな事がある訳が無いわ?!」


信じたくない心がそう言わせるのだが。


「と、とにかくっ、急いで行こうよ!」


一刻も早く辿り着かなくては。

焦る二人がマンションから飛び出した所で。


「どこへ行こうと言うのかね?」


黒服に身を包んだ数人の男達に取り囲まれてしまった。


「私達の両親が居る元へです!」


マモルが振り切って走り出そうとするのを。


「待ちたまえ、ここから動く事はならん!」


掴みかかった男が命じるのを、拒否して走る続けようとしたマモルに。


「君の姉がどうなろうとも良いのかね?」


ミハルを取り囲んだ黒服の声に、立ち止まらざるを得なくなる。


「ミハル姉さん!ミハル姉さんになにをする!」


ミハルを取り囲んだ男にタックルをかけ救出を図ったのだが。


「抵抗するのなら二人共、少々痛い目にあわせるぞ?!」


懐から得物を取り出して二人に迫ってきた。


「マモル!いう事を聴いて?!」


抵抗する事を停めるミハルの声に、マモルはミハルを庇うだけに留めた。


「そう、それで良いのだ。君達の身柄は国軍が管轄する」


一人の黒服が警棒を片手に命じて来る。

その傍らを数名の男達が自宅に乱入していくのを観て。


「何をしてるのです?私たち家族が何か悪い事でもしたというのですか?」


怯えながらも訳を訊ねるミハルに、背後から声が掛けられる。


「悪い事?いやいや、東洋人は皆そう言って誤魔化すのだ。

 君達も、ご両親もな。お前達の身柄は国家が引き取ったという事だ」


振り返ったミハルの眼が捉えたのは、嘗て来訪時に見た男の姿だった。


「これからは我々がお前達の処分を決する。文句は言わせないぞ、日の本の猿め!」


あからさまに蔑む言葉を吐く男がメガネを直し、


「今日で何もかもが始るのだ。我々の宿願もあの方の野望も・・・な」


薄ら笑いを浮かべてミハルに言い放った。


ミハルは何も言い返せず、弟の身体に掴まって立ち竦んでいた。

マモルは姉ミハルを庇いながら歯を食いしばって耐えていた。


姉弟の前で、ヘスラーだけが哂い嘲ていた。






_________________





マコトの手の感触が無くなった。


黒い霧が身体に纏わり付き、魂をも束縛しようとしていた。


目を凝らして周りを見る。

そこに居るべき者を探して。


「どこに居るのですか?私はあなたを護る為に来た者です」


必ずこの場に居ると踏んでいた。

捕えられた者は此処に留め置かれていると信じていたから。


「私は日の本からあなたを救い出す為に来た魔砲の使い手。

 元、神官巫女のミユキと名乗る者です!どうかお出ましください!」


ミユキの名乗りにも応えは返って来なかった。


「もしかしたら・・・闇に喰われてしまったのかしら?」


心がざわめく。

しかし、確かに現実世界では心臓が動いていた。

死んでしまった訳でもなく、魂を喪ったリーンは生きていた。


「私の声が聞こえるのなら姿を見せなさい!この子はあなた達に渡さないから!」


ミユキは賭けに出た。

リーンに憑りついた闇を誘き出そうとして。


闇に半ば貶められた現実世界から魂は抜け出され、今居るのは精神世界。

・・・神と悪魔が存在している別の世界。


ミユキの魂はマコトに因って送り込まれた。

リーンの中へと。リーンが囚われている精神世界へと。


「ほほぅ、この中に人間如きが侵入するとは・・・身の程をわきまえぬ愚か者め」


邪なる者の声が返って来た。

ミユキの策に乗せられて。


「この子にはもう用はないでしょ!

 私を代わりに捕えれば良い事でしょうに!」


身代わりに自分を差し出す覚悟を仄めかす。


「ならん!我等が命じられておるのはこの娘の捕縛。

 手を即けず、眠り続けさせるようにとだけ命じられておる!

 解放の時は魔王様の許可がない限り来る事などない!」


邪な者がはっきりと言い切った。

誰が来ようと開放などあり得ない事を。


「それではこの子は永遠に眠り続ける事になるの?

 魔王の許しが無い限り?」


「然り。されど別の魔王が許すならば、解放される事もあり得る」


問われた闇の者が素直に答えた。


「我等は魔王の僕として存在する者。

 魔王が消えれば効力も失われる。

 その時別の力が現れて捕縛の解除を求めるのならば、解放されよう」


闇の者が答えた話にミユキが頷く。

やはり、あの本の女神が言った通りなのだと。


「それまでこの子には手を出さないと約束出来る?」


「魔王が命じない限り。然れども魔王の力が無くなれば反故になるがな」


闇の者が言わんとするのは、命令した魔王が倒されでもすれば命令は無効。

命令が消えれば新たな主人が現れて命じ直さねば襲い掛かっても構わないという事。


「その時、そなた等の魂がどうなのかは、神でも分からないがな・・・」


邪な者が嘲るように言い放ち、娘の姿を差し出してきた。


「リーン皇女!」


やっとの事で目にする事が出来た。

闇の者に嘯いて、漸く手にする事が出来た。


「しっかりしてください!助けに参りました!」


投げ出されるように現れ出たリーンを抱き上げたミユキが揺り起こそうと試みたが。


「言ったではないか、その娘の魂までもが眠り続けているのだと!」


現実世界でも眠り続けているのに、魂までも眠り続けさせられているという。


「酷い!こんな仕打ちをするなんて!」


ミユキが抱きかかえて闇に吠える。


「ふふふっ!そなたはこの娘を助ける事が出来るとでも思うのか?

 言った筈だぞ、この娘には手を出せぬが、

 勝手に侵入してきたそなたをどうしようと我等が想いのままなのだ」


そう。

邪なる者の言ったのは、リーンには手を出せない事だけ。

ミユキには魔王の命令などは通用しない。

ミユキの魂をどうしようが咎められる事は無いのだと。


「魔砲使いの女よ、お前の魂を甚振るのは面白かろうなぁ?」


周りに、呼び寄せられた邪な者達が集い始める。


「穢すというの?私を・・・簡単には穢されてはやらないわ!」


抗う事を諦めない、聖なる巫女ミユキに闇が覆い被さって来る。


「精神世界では誰もお前の事を護ってはくれぬぞ?!」


嘲笑う邪なる者がミユキに襲い掛かって来た。

リーンを庇う様に抱くミユキには、邪なる者へ対抗する術は無いように思えた。

このまま穢され貶められてしまえば、待ってくれているマコトの元へ等帰れようもなくなる。


だが、ミユキは諦めない。諦めたくはなかった。

喩え、誰も味方してくれなくても・・・




((バシッ))




覆い被さる闇が退けられた。



「誰も護ってくれないって?誰が決めたのよ?!」


闇に覆われたと・・・思った時。


「お前達に、触れさせるモンか!

 ・・・この人へは指一本触れさせないんだから!」


光が闇を退けさせた。


「ここでなら・・・精神世界でなら。私の力が出せるのよ!邪なる者よ!!」


光の中から現れ出て来た人影が闇に言い放つ。


「あ・・・あなたは・・・」


リーンを抱いたミユキの前に、庇う様に現れ出た。


挿絵(By みてみん)


「そう・・・やっと。やっと逢えたね?」


その人影を知っていた。

その姿を一度だけ観た事があった。


「古文書の女神・・・あなたが?」


碧い髪をリボンでサイドポニーに結った娘が立っている。

白い魔法衣姿の娘が背を向けて立ちはだかっている、邪な者に。


「そう、私を最期の場所に連れて行くように頼んだでしょ?

 古本に宿って、この時が来るのを待っていたの・・・私は」


一度阻まれた闇が再び襲い掛かるのを。


「消え去りたいのなら消してあげるよ?!

 1000年もの永き時の末に、やっと巡り合えた私の邪魔をするのなら!」


一撃で邪なる者を拭き消す右手。

そこに填められてある蒼き石は・・・


「ねぇ・・・やっと姿をみせれるんだよね?

 ずっとこの日が来るのを待ち望んでいたの・・・」


闇を撃ち祓った手の先に、神の錫杖が現れ出る。


「前にも言った事があるでしょ?

 私は・・・あなたを愛する者だと・・・あなたによって目覚めさせて貰った女神だと」


ゆっくりと振り返る。

蒼き髪が靡き、碧き瞳が見詰めて来る。


「ねぇ・・・お母さん・・・また逢えて嬉しいよ!」


女神ミハルはミユキに微笑んだ。


「ミ・・・ハ・・・ル・・・?」


その顔は娘の顔。

あどけなかった表情は凛々しく麗しく。

蒼き瞳は、観た事も無い程に澄んでいた。


「うん!ただいま!お母さん!」


優しさを湛えたまま、ミハルの蒼き瞳は輝いていた。


挿絵(By みてみん)


娘がどうして女神なのか。

女神となって現われたミハルが、どうしてただいまと言ったのか。

それに1000年と云ったのはなぜなのか?


自分が女神を呼び覚ます鍵だと告げられた意味は、まだ分かり様も無かった。


唯、目の前に居る娘が自分の事を母と呼んでいる。


懐かしそうに。

優しい瞳で自分を観て、喜んでいる事だけは確かだった。



ミユキを護らんとする者・・・女神。


リーン皇女を救わんとする者・・・巫女ミユキ。


二人の世界が元の場所へ帰れる日は必ずやって来る。


碧き髪の女神が現れたのだから・・・・

希望が現れ、ミユキを護ると言った。

光が現れ、2つの魂を護り抜くと誓った。


精神世界の中で・・・いつの日にか甦れると微笑まれて。


これにて、


Ballad to Hope <希望への譚詩曲> 魔砲少女ミハル・シリーズ エピソード0.5


本編は終了ですが。

次回は「魔鋼騎戦記フェアリア」へと続くエピローグとなっております!


あの日に起きた悲劇の幕開け。

戦場へと向ったミハルが受けた傷。

そう・・・ミハルが死神と呼ばれる事になった戦場へ・・・


次回 完結 希望への譚詩曲ー受け継がれる光ー エピローグ


君は絆を信じるか?永遠へと続く物語の始まりを・・・


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