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黄昏の時代に Act4

挿絵(By みてみん)


マコトに名を覚えて貰っていた事に、頬を染めるミユキ。

彼女が<呉>に現れた訳は?

突然の再会。

都から遠く離れた呉の工廠で、二人は運命の再会を遂げた。


声を掛けて来たのはミユキの方からだった。

だけど、名を呼ばれて頬を紅く染めてしまうのは・・・


「やっぱり間違いないね、君はミユキさんなんだよね?

 都に居る筈の君にこんな所で逢えるなんて、びっくりしたよ?」


頬を紅く染めて恥じらうミユキに、笑い掛けるマコト。


「まっマコト様っ!お声が大きいのですっ!」


狼狽えるようにミユキが断ると、そういう事かと納得した。


ミユキは辺りに居る女性兵士達と同じ軍服を着ていた。

彼女達に聞こえては何かと云われるのではないかと考えたのだろうと思ったマコトが。


「ごめん、ごめん。つい・・・

 それにしてもミユキさんがどうして呉なんかに?

 それにその軍服は?どうして女の子ばかりなの?」


一度に訳を訊いて来るマコトに苦笑いを浮かべて、ミユキが微笑む。


「マコト様、どうぞこちらに・・・」


手招きしたミユキが植木のイチョウの下まで呼び寄せてから。


「ここへ来たのは命令に因ってなのです。

 なんでも、新しい装備の受領とか・・・それに併せて造られた制服なのです」


現れたミユキの軍服姿に眼を向けながら、マコトは眩く感じられていた。

図書館で出会った時には、巫女装束で可憐にも思えた。

目の前で微笑むミユキの軍服姿は凛々しくもあるが、どこか儚げにも思えてしまう。


薄い緑迷彩を施された上着は朱色のラインが縁取り、袖口を淡いピンクで引き締められている。

黄色の肩章帯が肩に付き、襟元に金筋2本の階級章が着けられていた。

空色のツナギで肌を隠し、真っ白なズボンと茶色のブーツが足元を引き締めている。


眩く思える程、マコトにはミユキの姿が眼に映えた。



「あ・・・のっ?マコト様?どうかされましたの?」


黙って自分を見詰めてくるマコトに、恥ずかしいのか頬を染めたまま訊ねるミユキに、


「あ、ごめん。つい・・・見とれちゃったんだ」


「//////(真っ赤っ赤)」


正直な印象を告げただけだと思ったのだが、ミユキは真っ赤になって下を向いてしまった。

神官巫女で宮廷に仕えていた女官が、何故軍服を纏って現れたのか。

その方が気になっていた筈なのに。

マコトは恥じらう可憐なミユキに釘付けになってしまう。


「ミユキさんはどうして軍服を?それに女性だけの部隊になんて・・・」


ミユキが落ち着くのを待ってから、訳を問いかけた。


「それは・・・マコト様こそ。

 技術本部に居られた筈なのでは?」


陸軍技術本部付ならば、皇都にある本部詰めの筈ではと、ミユキが逆に問いかけると。


「ああ、そうだったんだけど。転勤を命じられちゃってね。

 2か月前からこっちに来てたんだよ・・・あれから逢えずに・・・ごめん」


謝るマコトにミユキが相好を崩して、


「そうだったのですか、それなら・・・良かった。

 私・・・てっきり避けられちゃったのかなって・・・」


ミユキはやはり図書館に出向いてくれていたようだった。

済まない事をしたのだな・・・そう思ったマコトが頭を下げて。


「ごめん、本当にごめんっ!避けてしまう気なんて毛頭なかったんだけど。

 結果的には君にそう感じさせてしまったのなら、この通り!」


本気の謝罪を、首を垂れて申し開いた。


「まっ、マコト様っ、殿方が私なんかに・・・おし下さいませぇ!」


またまた慌てふためいてミユキがマコトを停めようと、手を差し出したら・・・


((ふわっ))


ミユキの細い指先がマコトのあげた顔に触れてしまった。


「あっ?!」


「///////(真っ赤)ひゃぁあああぁ?!」


触れられたマコトより、触れてしまったミユキの方が慌ててしまう。


「も、も、も、も、もももっ、申し訳ございませんっ!」


眼を廻したミユキが必死になって謝って来るのを、


「そんなに僕の顔って可笑しいのかい?」


ふざけて困らせてみようかなと、悪戯心が湧いて来る。


「と、と、と、とっとんでもございませんっ!可笑しいのは私の方で・・・」


悪戯わるふざけだとは想いもしないのか、ミユキは唯ひたすら慌てふためく。


「あははははっ!面白い子だねミユキさんは!」


「/////(真っ赤っ赤)」


年の頃は二十歳にもなっていない筈だと感じていた。

もしかしたらずっと年下なのではないのかとも感じられる程、純情な少女に思えた。


「あ、あのっ。おタバコ・・・お好きなのですか?」


話す間中手に持っていたタバコがいつの間にか燃え尽きているのに気付いたマコトが。


「ああ、これかい?好きというより習慣じみたものだよ。

 研究所ラボに籠っていると手を出しちゃうようになったんだ」


はははっと、苦笑いを浮かべるマコトに小首を傾げるミユキが、


「そう・・・なのですか。

 でも、お控えになられる方が。あ・・・無粋な事を」


気になった本音を口に出してしまったとでも思ったのか、ミユキが口籠ると。


「君がそういうのなら、控える事にするよ」


「ぱあぁっ(にっこり)」


マコトが<光>の箱をポケットに仕舞い込んだのを観て、ミユキの顔が晴れる。

と、またミユキの顔が少し曇って。


「マコト様、お顔色がすぐれない様に想えるのですが、お疲れになられておられますの?」


無精ひげを生やしたままのマコトを気遣ってくる。


「うん、このところ睡眠時間が足りなくて・・・」


隈を作っている目元を見詰められたマコトが正直に答える。


「睡眠時間が・・・他に、お食事は?

 ちゃんと3食お食べになられておられますの?」


心配そうに顔を見上げてくるミユキに、頬を掻いて首を振ると。


「いやぁ、寝食を忘れて・・・って言えば聞こえが良いけど。

 男独りな下宿住まいなモノで・・・食べてるのかどうか・・・」


苦笑いを浮かべるマコトに、眼を輝かせたミユキが。


「いけませんわ!そんな事ではお体を壊されてしまいますっ!

 部隊がここに留まる間だけでも、私っ。

 私がマコト様のお弁当を造らせて頂きたいですっ!」


何を想ったのか、力一杯力説して来た。


「はぁ?!ミユキさんが?僕の為に??」


軍隊に所属する者同士、そんな勝手な事が許される筈もないと思っていたのだが。


「そうですっ!私がマコト様にお造りすると申し上げたのです!」


ランランと瞳を輝かせたミユキがきっぱりと言い切った。


「あの・・・ねぇ、ミユキさん?

 ここは娑婆じゃないんだよ?軍隊の中で規律もあるし、勝手な事は許される筈がないじゃないか」


マコトの言う通り、軍隊に於いて個人の勝手が許される筈もない・・・のだが。


「いいえ、今決めました!

 不肖、神官巫女 光野ひかりの。こうと決めたからには一歩も退きませんっ!

 必ずマコト様にお弁当を差し上げてみせますっ!」


ランランと眼を輝かせたミユキが、断言する!


「今晩、私が伺いますからっ。待っててくださいませ!」


マコトは驚くよりも、呆れたような顔になってミユキを観ていた。

どうやって造って来ると言うのか?

自分の為に無茶をしかねないと思ってしまう。


「ミユキさん、くれぐれも言うけど。

 無茶は辞めて、問題になったら大変な事になるよ?」


自分は中尉だからある程度は見逃されるが、ミユキの階級はどうなのだろう。

そう感じたマコトがミユキの襟に付いた金筋を観て。


「えっ?!ミユキさんって・・・中尉なの?」


金筋2本が光っていた。

この純情な少女は陸軍士官であり、中尉なのだと解って驚いた。


「そうなのです、マコト様と同じ・・・そう願い出たのです」


願って中尉になれる?

ミユキは一体どうして軍隊になんて入っているのだろう。


マコトは初めて気が付いた。


神官巫女であったミユキがなぜこの場に居るのかと。

何故陸軍中尉になっているのかと・・・・

黒い髪を紅いリボンで結い上げたミユキ。

神官巫女から軍人へとなった訳は?

まだ、彼女の口から語られるのは早い?

その前に・・・二人の仲は?


次回 黄昏の時代に Act5

君はどうしてそこまで出来るのだろう?何を願うというのだろう?

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