表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/55

希望の御子 Act-2

日の本に帰還したミユキ達魔鋼戦車隊員。

漸く戦いから解放され、自由を手にしようとしているミユキは・・・

日の本政府は事変の終結を発表した。


紛争が両国の和解に依って終わったのだと宣言した。

その陰に三輪の宮蒼乃殿下のお言葉があったという事を時の内閣が記していた。


時に明和15年、晩夏の事だった・・・




「やっと帰って来れましたね、マコト様」


輸送船から降りた島田誠少佐と魔鋼戦車隊中尉光野美雪の二人が、

港に迎えに来ていた軍用車に乗り込む前に話し合っている。


「ああ、これで僕の任務も終えられる。

 君を蒼乃様の元まで連れて良ければ・・・魔法石を奉還出来ればね」


ポケットに忍ばせた<如来の石>を手にして、ミユキに笑い掛ける。

その表情は、ほっとしたというよりも幾分緊張している様にも観えた。


「殿下に奏上するのですね?

 魔鋼の機械によって成し得られた事変の終局を・・・」


ミユキが生きて戻れたのは、二人に授けられた魔法石のおかげだと思っていた。

臣下の者に国の秘宝を授けられた宮様に、お礼を告げたいと思っているのだが。


「マコト様にお願いしても宜しいでしょうか。

 この蒼き宝珠を一緒にお返しして頂きたいのです、蒼乃様に。

 私が感謝していると、この石のおかげで生きて帰れましたからと・・・」


もう神官巫女ではなくなった自分が、宮殿へ上がる事は許されないと考えてマコトに頼んだ。


「うん、お召しになられたのは僕だけだから・・・ミユキも昇殿を許されれると良いのにね?」


指揮官としての働きに賜称のお言葉を賜る事になったマコトにだけ宮中への昇殿が許された。

本当の立役者であるミユキには昇殿を賜る事はなかった。

一度野に下された剣巫女に、宮中への参内が許される筈は無かったという事なのだろう。


「マコト様、お召しになられなくともお分かり戴けている筈ですから。

 こうしてマコト様と帰って来られた事は・・・御知りになられている筈ですから」


はにかんだように微笑むミユキが右手の宝珠を外してマコトに手渡す。


「そうかい?それでミユキが良いのなら・・・」


受け取った蒼き宝珠に眼を落とし、マコトは何かを告げようとしたが。


「良いのです、マコト様が居て下されるのなら。

 蒼乃様にはお別れを告げたのですから、宮殿を去る時に・・・」


雲の上に坐する宮と、軍人に身を窶した神官巫女。

身分の違いは逢いたくても叶わぬという隔たりを思い知らしていた。


「そうか・・・じゃあ、必ず返して来るよ。

 ミユキは原隊で待っていて。部隊の解散式に出席しておいて」


事変が収拾した今、魔法の戦車隊も必要とは無くなったので。


「はい!みんなとお別れするのは寂しいですが。

 もう闘わなくても良いのですから、みんな喜んでいますから!」


ミユキは中隊長として勤めあげた部隊が解散するのを喜んでいるようだった。


「解散式が終われば、私も辞表を提出しようと思うんです。

 軍に居る必要なんてなくなったと思うのです」


ついっと、ミユキがマコトの袖口を取り。


「だって・・・マコト様の奥さんになるんですもの///(真っ赤)」


顔を紅く染めて婚約者の顔を見上げて来る。


「あははっ!ミユキの口から奥さんになるんだって言われるなんて。

 僕もよっぽど覚悟しなきゃね!<東洋の魔女>をお嫁さんに貰うのだからね!」


「///(真っ赤っ赤)」


挿絵(By みてみん)


マコトに返されたミユキがモジモジと身体をくねらせ恥ずかしがる。


「それじゃあ、ミユキ。僕は昇殿してくるからね。

 僕が戻るまであの図書館で待っていてくれないか?」


「はい!お気をつけて。都の図書館ですね、懐かしいなぁ」


二人が初めて出会った場所で待っていてと頼まれたミユキが懐かしがる。


迎えに来ていた軍用車に向かうマコトを見送り、ミユキはこれから待つ新しい生活を思い浮かべていた。

二人にとって今が一番幸せな時だったとは、ミユキには知り様も無かったのだが。







______________







「新式戦闘機械を創造した者の一人でもある、島田誠少佐!」


居並ぶ高官から、若き軍人が進み出る。


参内を許されたマコトは、御簾に最敬礼を贈る。

その向こうに居られる天皇陛下に恭久しながら。


「勲2等、並びに旭日章を授与!」


傍に控える近衛長官が勲章の授与を言い渡す。


この場に居合わせる者の中で最も低い少佐という身分。

それも蒼乃宮様から特別に贈られたものであった。

もともとはミユキと同じ中尉でしかなかったのだが・・・


陛下の御前で勲章を授与される誉という以外、これと言って何事のなく式典は進んで行く。


マコトにとっては勲章なんかよりも事変での体験を奏上する方がよっぽど嬉しく思えていた。

周り中を高官達が固める前で、戦争というモノの愚かさを言葉に出来る機会が。


マコトは並みいる政府高官の中に、今回の事変を主導した者が居る事に気付いていた。

それは蒼乃宮殿下が教えてくれていたから。

一介の技術屋でしかない自分に目通りを叶えてくれた人の真意でもあったから。


ー 自分に求められているのは戦争を始めた者への訓戒。

  いいや、己が欲望を満たさんとした者への天罰。

  陛下の前で真実を告げる事が宮様への恩義、ミユキを手放された宮様への忠義・・・


この場に居られない三輪の宮蒼乃殿下に向けて、マコトは心に秘めている恩を返そうと思っていた。

それには、戦いの場で観て来た敵や味方の真実を言上する事だと考えていた。


「陸軍技術本部佐官、島田少佐。新兵器の実情を謹んで話しが良い」


宮内庁参議官が呼び立てた時、マコトは細心の言葉を選んで話そうと思った。

表立って名指しする事を辞め、でも、それと分かるように。


進み出たマコトが恭しく頭を下げたまま、言上の辞を話し始めた・・・






「光野中尉は軍から身を引かれるのでありますか?」


アキナが原隊復帰を願い出た後、荷物を纏めていたミユキに訊いて来る。


「うん、そうするつもり。もう闘う必要がないんだからね、私には」


神官巫女を辞めさせられ軍に無理やり入れられた事を知っている部下達が、


「じゃあ、また宮殿に戻られるのですか?」


剣巫女に再任されるのかとヒロコが問うと。


「いいえ、それもないわ。だって一度罷免されたんだもん」


さばさばとした口調で答えるミユキ。


「じゃあ、これからどうしゃれるにょでしゅか?田舎に帰って生活しゅるとでも?」


ナオもミユキの進退を思って訊いて来る。


「そうねぇ、それもいいけど・・・私はマコト様に着いて行きたいだけだから」


微笑むミユキの一言で、3人は一斉に頷いた。


「そうですか!やはり結婚らされるという訳ですね!」


「羨ましいですなぁ!」


「しょの幸せの半分で善いでしゅから別けてくだしゃいよぉ!」


笑う3人にミユキも笑った。



魔鋼戦車隊は解散し、軍に残るものは原隊へと復帰していく。

部下を見送ったミユキは辞表を受理されるまでの間、

暫くは都内の縁者に頼ろうと思っていたのだったが。


「困ったな、親戚って言っても近くには誰も住んで居ないし・・・」


実家ぐらいしか頼れる場所がない事に気が付いたのだった。


「家に帰ろうものなら、また巫女として闇祓いをしなくっちゃいけないんだろうなぁ」


きぼう神社>の娘であるミユキは、2年ぶりに実家に帰る事を躊躇う訳があった。


「そんな事になればきっとマコト様に迷惑を掛けてしまうし、第一マコト様と相瀬が出来ないし・・・」


ふと、南方での思い出が過る。

告白してくれたマコトとの相瀬を思い出し、


「//////(真っ赤)」


真っ赤に染めた頬を両手で隠して身悶えてしまう。


「私も人前の女の子だったんだなぁ・・・蒼乃様に抱かれた時は感じなかったのに」


・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・ボッ!


唇に指を添えてマコトを思い出す。



「マコト・・・あ、そうだった!

 図書館で待っていてって頼まれていたんだった!」


これからの事よりも、今はマコトに言われた約束を守る方が大事だと気付き。


「こうしちゃいられないね。今は図書館に行こう!」


荷物を下げて走り出す。

愛する人と落ち合う場所へと。

これから待つ新しい生活を夢見ながら。


「私っ、マコトのお嫁さんになる!

 誰が邪魔したって、あの人の傍に居たいの!」


出会いの場所へ走るミユキの眼には希望の光が輝いていた。

自分に待つ、新たな運命をも知らず気に・・・・

心から愛する事の尊さを感謝する。

2人で歩みだせると信じて。


ミユキはマコトへの愛を貫こうと思っている。

きっと幸せを掴めるものだと信じていた・・・・


次回 希望の御子 Act-3

君は約束を果せるのが嬉しいと思うだろ?逢いに来てくれたと喜ぶのだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ