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黄昏の時代に Act3

マコトの前で唸りを上げ続ける機械。


蒼髪の少女は、なぜその場に居るというのか?

どうして蒼き髪になっているのか?

蒼髪の少女が座り込んでいる機械。

青白く光る石を中心に、回転を続けていた機械が異常な唸りをあげると。


「いかんっ!暴走が始まった!」


叔父貴である島田中佐が慌てたように装置の元へ駆け寄ると。


「スイッチを切るんだ!早くしないか!」


装置に取り付いた研究員に怒鳴る。

中佐の叱責に我に返った者が、装置の強制停止ボタンに手をかけた時だった。


「あがああぁっ?!」


蒼き髪を靡かせていた少女の髪色が黒髪に戻ったと思った瞬間に、それは起きた。


悲鳴を叫んだ少女が仰け反り、眼を剥いて宙を掻き毟り・・・


「あ・・・・あ・・・・・」


口から泡を吐いたかと思えば、何も喋らなくなってしまった。


「な・・・なんて。なんて事だ?!」


マコトには少女が失神してしまったのかと思ったのだが。


「死んだ・・・のか?」


装置に駆け寄って少女を観た乙訓中佐が一言呟いた。


魔法の機械は回転を強制的に停められていたのだが。

少女はその時にはもう、息を絶えさせられていたのだろうか?


「どうして?!なぜこんな実験を?!」


人体実験における事故。

その結果が人の命を奪う事になったというのか?


「いや、乙訓中佐。彼女は死んだ訳ではないのです。

 この機械に同化させられてしまったようです。

 不安定な精神を持っていたようですな、この子は・・・」


叔父貴である中佐の言葉に、マコトは眼を剥き。


「その機械自体が不安定なだけではないのですか?!

 どうして彼女は気絶してしまったのですか?

 それは機械自体に問題があるからなのではないのですか?」


人体実験を行なった者達に抗議したつもりだった。


「マコトの言う通り。

 この機械は未だに安定してはいないようだ。

 何かが足りていない・・・そう。

 何か、欠けているのだ・・・機械には」


乙訓中佐も事故の原因を調べる方に尽力すべきといったのだが。


「お二人共、実験は成功したと観てよいのではないかね。

 観ていなかったのではないのか?装置に付属してある37ミリ砲が変わっていた事を」


島田海軍中佐に言われるまで、気にも留めていなかった。

言われてみて初めて装置に付いている砲身に気が付いた。


機械から延びた軸線上にある細長い砲身。

それがどう変わっていたというのか?


「君たちは気が付かなかったようだが、記録された砲身は約20センチ程も伸びていたらしい。

 同じ口径ではなくなっていた可能性もある。

 つまり、実験は成功理に終えられたのだよ」


叔父貴の言った意味が解らない。

この機械に因って、何が起き得たというのか。


「叔父さん、実験は何を目指して?

 人の身体を使ってまで何を求めて機械を造ったというのです?」


マコトは軍に因って造られようとしている機械に疑問を抱く。

魔力を持つ者が居るのならば、どうして兵器になんて転用しようとしているのかと。


「判らんのか?

 戦争に勝つ為の他になにがあるというのだね?

 敵性国家の力を跳ね除けて、我が国が勝つ為の他に何があろうというのだね?」


兵器は、持つ国の力を表す。

劣った兵器をどれ程用意できても、いずれは優勢な技術に因って敵に打ち負かされる。

古来から・・・それは不変の真理。


「それはそうでしょうが。

 人体実験を行うにしてもあまりにズサンなのでは?」


機械についての講釈を聞いていなかったマコトが言い返すが。


「お前はまだ何も聞いてはおらんらしいな。

 <魔鋼>機械は実践部隊に送られる、そう遠くない時期に・・・な」


島田海軍中佐が甥に告げるのは。


「間も無く、紛争が起きる。

 日の本より遠く離れた南方で・・・その時。

 彼女達は敵部隊と交戦せねばならんのだよ、圧倒的戦力を持ったエギレス王国と」


間も無く始まる紛争が、拡大してしまう事になれば・・・


「エギレスは戦車を主力に据えた機甲部隊を持っている。

 我が日の本には創設さえもされてはおらん、戦車だけの部隊を・・・な」


海軍中佐がおかの闘いについて語る。


「マコトは陸さんだから、知っていようが。

 最近の戦争は近代的戦法に因って行われる。

 つまり進出速度と破壊力を兼ね備えねばならんのだよ」


どこから仕入れて来たのか、叔父貴は戦争の趨勢が変わった事を教えた。

歩兵がぶつかり合う戦争はとうの昔の話となり、今は全く次元が違うようになったのだと。


「良いか?

 これからの戦争は力とスピードだ。

 それを満たすのには、近代化が何よりも優先される。

 だらだらと人が進むスピードで闘うのは敵に隙を突かれる事にもなる。

 機甲師団戦力である戦車が進出し、敵を包囲殲滅する。

 敵の補給路を遮断する事に成功すれば、おのずとも降参するしかなくなる。

 勿論、海軍の戦闘においても・・・だ」


言葉の端に、もしも全面戦争となったとしても、海軍にも同じ考えがある事を含ませている。


「飛び石伝いに戦線を拡張し、早期に敵の支配権を奪う。

 早期拡大、早期和平・・・それこそが弱小国力の国家が取る道ではないのか?」


海軍中佐は己が意見に酔いしれたのか、魔法の力に因ってこそ戦争は為せると思い込んでいるようだった。


「そんな簡単に事が運べる訳がないじゃないですか。

 戦争は国力に因って決まるというのが定説じゃないですか。

 それを少数の者が局地で勝利を納めたとして、どうやって敗戦を覆せるのですか?」


マコトは真っ向から叔父貴に抗ったが。


「マコト、今はいい。

 それよりも、我々が望むのはこの少女のようにならない機械を作りあげる事なのだ」


横から乙訓中佐が口を挟んで来た。

頷く島田中佐が、マコトに振り向くと。


「マコト、お前は古代魔力学を修めた筈だったな。

 魔力を引き出し力に変換させ得る・・・その学業を修めて来た筈だったな?」


頷くマコトに、島田中佐が命じた。


「それではマコト中尉。

 お前はこれよりこの場に務めろ。

 一刻も早く<魔鋼>機械を実用化させる為に。

 このような犠牲者が出ない為にも・・・な」


担架で運び出されて行く少女を見詰め、マコトは命令に対し敬礼で答えるのみだった。


「よし、それでは陸海軍共同で事に当たろうではないか!」


上司である乙訓中佐がマコトの気配を察して、朗らかな声で仲をとった。








____________________







二か月があっという間に過ぎて行った。


マコト中尉は寝食を忘れて、機械の研究に没頭し続けた。

その甲斐あってか、どうやら安定的に魔力が抽出できる装置が出来上がった頃。



「マコト中尉、一休みされてはいかがですか?」


横に居た研究員が無精髭を生やしたままのマコトに勧めた。


「もう一週間も籠り切りに近いのではありませんか?」


眼の下に隈を造ったマコトは、それでも実験室から出ようとはしなかったが。


「そういえば、ここの工廠に女性ばかりの部隊が来たようなのですが。

 どんな部隊なのか気になりませんか?」


若い独身男性研究者らしい物言いで、話を振られたマコトが。


「そんなことは気にもしてなかったから、慰問部隊かなにかなのかい?」


「そう!それならいい事でもありそうですよね?」


マコトがはぐらかしたのに、あっさり口車に載せられた研究員が立ち上がると。


「ちょっとだけ様子を観てきます!」


自分の方が休みを取りたかったのか。

駆け足で室外へと消えて行った。


そんな彼にふぅっと溜息を吐くと、マコトはポケットから<ひかり>の一本を摘まみだそうとしたのだが、生憎な事に箱の中身は空になってしまっていた。

((作者注・<ひかり>とは、当時あった(たばこ)の名称です))


「ふぅっ、切らしてしまってたんだな・・・買いに行くか」


気分転換に外に出る理由が、たばこの買い足し・・・

酒保しゅほにて買い物を済ませ、ぶらぶら歩きながら外気を吸っていた。


買い求めたタバコに火を点け、人心地着ける。

紫煙をくゆらせていたマコトの視界に、件の女性達らしい姿が入る。

観れば、どの姿も見慣れない軍服を纏っていた。


<珍しい隊員服をしてるなぁ・・・どんな部隊なのだろう?>


若い研究員の事を悪くは言えないな・・・そうも思ったマコトが、ふと気が付いた。


誰なのかは解らないが、女性らしい人影が近寄って来る。

今観ている女性達と同じ軍服を着た、髪の長い女性が。


「やっぱり!お久しぶりですっマコト様!」


黒髪を紅いリボンで結い上げた女の子。

確かにどこかで逢った事があると・・・記憶は告げているのだが。


更に近寄った少女が頭一つ分高いマコトを見上げるようにして微笑む。


挿絵(By みてみん)


「あ、お忘れでしょうか?

 都立の図書館でお逢いしました・・・」


そこまで言われた瞬間に思い出していた。

可憐な巫女装束の女の子を。

そして・・・


「ああっ?!君はっ!光野ひかりの美雪みゆきさんっ?!」


「/////(真っ赤)」


大きな声を張り上げてしまったマコトに、ミユキの顔が真っ赤になった。



研究を続けるマコトの前に現れたのは、皇都で逢った神官巫女だった。


紅いリボンをポニーテールに結い上げたミユキ。

彼女と再会した事から物語は動き始めるのです・・・


次回 黄昏の時代に Act4


君は少女の微笑みに心をときめかせる?それとも?

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