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東洋の魔女 Act-3

マコトの策略に敵がのって来るのか?


索敵を開始した島田戦車隊は・・・?

大陸から延びた先にある島。

島の沖合には、東洋と欧州を繋ぐ海運の要衝でもある、ジョホーレル海峡が目前に拡がる。


その島の名はガポール。

東洋におけるエギレス王国の要塞島の名称だった。



東洋に足場を築かんとするエギレス王国は島を要塞化し、海軍を配置して通行の許可を制限し始めた。


権益を我が手に握らんとする行為は、諸外国に反感を抱かせる事になったのだが、

時のエギレス宰相チャーチフは己が権勢に溺れ、強硬的手段に訴えたのだった。



強大な勢力を誇ったエギレス王国は、世界の盟主足らんとして植民地を東洋にまで伸ばそうとしていた。

勿論、諸国はエギレスに反感を抱く事になるのだが、チャーチフは意にかえさず世界を手中に収めんと目論んでいた。


しかし、まだ黎明期の日の本皇国はその中に在って自存自衛の為、干戈交える事となる。


時に明和15年、日の本に於いても武力衝突を拒む勢力があったのは事実。

その最上位に位置されたのが、陛下の御妹君であらせられた三輪の宮、蒼乃あおの殿下。


交渉が決裂した後でも、エギレスに自ら出向いて席に着くとまで仰られた程。

臣下の大臣、宰相が言葉を尽くして諫め、漸くの事納得されたと聴く。

しかし、本当は兄であらせられる陛下に因って、お考え直されたという。

国論が開戦やむなしに傾く中、悪戯に拒否するようでは内戦にまで発展するであろうと・・・

蒼乃殿下の御身を庇われる陛下の大御心に、添い奉らんとあそばされたという。


今次事変の発端は、エギレスの台頭と日の本皇国内に蔓延る野心家の私利私欲が重なった痛恨事だとお考えになられた殿下は。

腹心の部下を泣く泣く戦場へと送出し、臣民の無益な損亡を防ぎつつ、

国内に於いては密かに事変の拡大を目論む者の処分を図られていたという。


蒼乃殿下に付き従うは、とある声を聞きし忠臣。

蒼き御珠みたまを奉じる者達だったという。


蒼乃殿下は事変の収拾を量るチャンスを待っておられた。


それには送り込んだ魔砲の娘達がエギレスの要塞を降伏せしめた暁に、だとお考えになられていたそうだ。


宮様のお傍に仕える女官が、お言葉を書き残していたのが後に見つかった・・・






___________






島田少佐の率いる戦車隊は、偵察に出した1個小隊を露払いにして進み征く。


ミユキの信任が厚い第2小隊長小田切軍曹は、沈着冷静なる部下の一人であった。

自らの魔法力に頼らず、いつも落ち着き払った行動を執る。

彼女をして、周りの者はこう呼ぶ・・・石橋を叩いて渡る小田切かな・・・と。



「先行する第2小隊との距離を保て。

 彼女達から発見報告があれば、即座に攻撃できる距離をな!」


指揮官のマコトがアキナに命じ、砲塔天蓋にあるキューポラから前方を見据えた。

双眼鏡を使うまでもない距離に、3両の戦車が見える。

昼尚暗い森の中、前方の密林を進む戦車。

間も無く森も切れ、視界に草原が見えてくるだろう。

地図には確かにそう記されていた。


「もうすぐ、森の端に到達するぞ。

 各車に戦闘準備を執らせるんだ。不意打ちに注意せよ!

 敵は戦車だけとは限らないからな!」


ー  どうしてマコトは機甲戦を知っているのだろう・・・


ミユキは後ろに居るマコトが、戦車戦のセオリーをどうやって学んで来たのだろうと思っていた。

自分だって戦車戦に詳しくは無いというのに、技師だったマコトは何処で学んで来たというのだろう。


不思議に思うミユキが、じぃっとマコトを観て考えていると。


「ミユキ、何か問題でもあるのかい?

 さっきから僕を見続けているようだけど?」


気付いたマコトが逆に問いかけて来た。


「えっ?!いいえ別にありませんけど。

 少佐はどこで戦車戦を学ばれて来たのかなぁって、考えていました」


正直に不思議に感じた事を訊き返したミユキに、


「ああ、別に学んで来た訳じゃないんだけどね。

 僕にも魔法石を託されているんだよ、宮様からこれを使いなさいって仰られてね」


懐から観た事も無い蒼い石を取り出して、ミユキに晒して嗤った。


「あ・・・それは?!蒼き石・・・魔法の石じゃないですか!」


一瞬でそれが何かを見抜いたミユキの記憶には、その石が誰の物かが直ぐに判った。


「それって、宮様の治癒魔法石ではないのですか?

 いつも髪に着けておられた・・・如来の石ってモノではないのですか?」


ミユキの記憶にある蒼き石は、蒼乃殿下が左髪に着けられていたのだが。


「そうみたいだね?僕を送り出される時に、お下げになられたんだよ。

 この石をミユキが使う事にならない方がいいのだが・・・って、仰られたんだけどね。

 確か、この石には人の身体を治す力が備わっているんだとか?」


「そう!蒼乃様が私にも掛けてくだされたもの!

 私が怪我をした時に魔法で治してくだされたもの!」


二人の記憶が重なる。

マコトに託された蒼き魔法石には、治癒魔力が備えられているようなのだが。


「でも、蒼乃様はマコト・・・少佐にどうして大切な魔法石を?

 その蒼き石には治癒魔力があるけど、魔法力を持たないマコトに使える訳がないのに?

 その石も私に使えと仰るのかしら?

 二つも魔法石を持っててもどちらかの石しか制御出来やしないというのに?」


ミユキが不思議がるのも当然の事だった。

魔法使いには魔力を放てる独自の魔法石が必要なのだが、数多く持っていれば良いというモノでもなかった。


なぜなら、魔力は一つの石でしか属性を発揮出来ないからであり、

二つ事を同時にこなせる魔法使いが居るとすれば、それは同時に二つの力を放てる神のような存在。

高位の魔法使いだとしても、同時に2つの魔法を使い分けれる事は無理であるから。

スペルを同時に詠唱出来ない事に等しいという事。


「そう。だから僕に託されたんだ。

 万が一に、ミユキが怪我を負えば、魔法力を持つ者に渡して使えと言う意味だろうね。

 それほどまでに、身を案じておられるという事さ」


マコトは蒼き魔法石を懐に戻して、使う必要がない事を祈る。


<そうさ、僕がここに居るのだから。

 蒼乃殿下は、ああも心配されて居られたけど。この石を使う事になんかさせやしないから>


三輪の宮様には、取り越し苦労だったと想っていただこう・・・


マコトは宮殿に居られる宮様に、想いを馳せていた。

その顔を見詰めるミユキは、なぜか心配顔でマコトを見つめ続けていた。




「少佐!第2小隊長より緊急無線!前方より複数の車両が迫って来ましゅっ!」


ナオの声が車内を一瞬にして緊張に包んだ。

引き続いて観測報告が齎されてくる。


「敵の車両は数両の偵察車両を先に立て、後方に主力部隊が存在しゅる模様!

 前方に現れた車両は小型なり、恐らく軽戦車だと思われる・・・でしゅ!」


流石、小田切軍曹は沈着冷静だった。

こちらが発見される前に敵を見つけて、尚且つ敵状を詳しく観測して報告して来たのだから。


「よしっ、小田切軍曹に見つからないよう忠告して、観測は引き続き行う様にとも」


マコトがキューポラから半身を出して、後続の第2中隊に戦闘用意を急がせる。


「敵に発見される前に第1撃を掛ける。

 敵がどう出て来るかは判らないが、まず間違いなく決戦を希求して来たと視ていいだろう」


砲手であるミユキに教えつつ、無線手のナオへと命じるのは。


「敵の無線を傍受し、何か異常があれば直ちに報告するように。

 それから第2小隊には発見され次第後退し、発砲は控えるようにと命じて!」


手早く命令を下すマコト。

なまじ技師だとは思えない程の指揮ぶりに、ミユキはこの人に何があったのかと思ってしまう。


「まるで手慣れた指揮官みたい。

 熟練の指揮官だってこうはいかないもの・・・」


マコトを自分に置き換えて、指揮ぶりに感嘆の声を出してしまうと。


「中尉だって、指揮ぶりは手慣れたものですよ?」


装填手のヒロコが聞き咎めてくる。


「そうじゃないのよヒロコ。

 少佐は元々魔鋼機械の技師だったのだから。

 どうしてこうも手慣れておられるのか・・・と、思ってね?」


自分が知るマコトではない様にも思えたミユキだったのだが。


「僕がどうして戦車戦に詳しいかは後で答えるよ。

 それより今は戦闘に集中するんだ、いいね魔砲の娘達」


ここにいる全ての娘達が魔法使いだと知っている。

魔鋼チハに乗るのが皆、魔法使いの娘なのだと分かっているから。


「それでは、皆。

 敵に戦車の闘い方を教育してやろう。

 我らが魔砲を以って、敵を退けさせてみせようじゃないか!」


ミユキはこの時、マコトの声が過去に聞いた事のある人の声に感じた。

そう・・・マコトと巡り合わせた女神の話し方に似ていると感じていた。


「少佐!敵の無線が急激に激しくなりましゅた!

 どうやら小田切小隊を発見しゅたみたいでしゅ!」


ナオの叫びがミユキの思考を停止させた。

戦機は熟し、後に在るのは。


「各車に命令っ!戦闘戦車戦!

 ここに於いては決戦あるのみ。

 各車各員の健闘を祈る!

 無線封鎖の解除を命じる。小隊規模での連携を密にしろっ!」


島田少佐が戦闘を下令した。


「ヒロコっ、砲撃準備、第1射は穿甲榴弾を装填!

 目標は敵戦車部隊につき、次弾も同じとする。

 目標の距離800、動標的につき偏差射撃をかける!」


砲手でもあるミユキ中尉が発令した。

すかさず75ミリ砲弾を装填させたヒロコ伍長が、車長でもあるマコトへ。


「少佐?!どの敵に発砲するのですか?

 中尉?!目標を捉えられていますか?」


砲撃準備を整えながら訊いてきた。


「色部伍長、敵の姿はもう捉えているよ。

 どうやら第一陣は軽戦車のようだ・・・発砲は控えることにする、善いかい?」


「ヒロコ、私の眼は節穴じゃないから。

 もう照準器に捉えているわよ?

 あの軽戦車はエギレスのM3型のようね、最新型の・・・」


敵の正体が掴めたというミユキとマコトに、ヒロコは顎を引き締める。

他の魔鋼チハの47ミリ砲弾でも、M3の正面装甲を喰い破れると考えたマコトが。


「だから、先ずはチハに撃って貰う事にするよ。

 この距離から第1撃で命中させるのは相当の手練れじゃないと難しい。

 それに、このチハ改の99式戦車砲を敵に知らせるのは得じゃないから。

 この距離から撃っても、無駄弾が多く出るのが解っているから。

 撃っては来ないだろうから・・・」


眉を跳ね上げたヒロコが聞き咎めて。


「じゃあ、私達が撃つタイミングは?」


砲塔を旋回させながら照準を併せるミユキが、代わりに答える。


「それはね、敵が慌てて突っ込んで来る時。

 自分達の砲でも当てられる距離まで迫ろうとした時に・・・よ!」


ミユキの答えに頷いたマコトが。


「そういう事さ。

 集団で闘う戦車戦では、焦った方が負けなんだよ?

 チハの47ミリでさえこの距離ではなかなか当たらないだろうから。

 こっちも無闇に突っ込まない様に注意するように言っておいて」


無線手のナオに頼んでから、ミユキに向けて。


「魔鋼機械はまだ作動させない・・・から。。

 敵の本隊が出て来る迄は・・・ね。

 神官巫女ミユキの力を使う時じゃないのだからね」


意味ありげな言葉を掛けて来たマコト。

その瞳の色が僅かだが変わって見えていたのに、照準器を睨んでいたミユキは気付きはしなかった。



双方の戦車が集う。

ここは要塞から僅かに離れた草原地帯。

周りを森に囲まれた丘陵地帯。


挿絵(By みてみん)



後に、東洋の魔女と呼ばれる事にもなる戦車戦の幕が切って落とされる。


マコトの名字を採り<島田戦車隊>と名付けられた部隊。

魔法使いの娘達だった事に因り、敵が<東洋の魔女兵団>とまで呼ぶ事になる・・・


・・・伝説ともなる戦闘の第一幕が、始まるのだった・・・



遂に現れた敵戦車!

初めて対戦する軽戦車M3の性能は?

対する魔鋼チハに乗る者達は、マコトのように落ち着いていられるのか?


戦車同士の闘いが始った!

今度は広い草原地帯で・・・森の中で待ち受ける島田戦車隊は?


次回 東洋の魔女 Act-4

戦闘は一瞬で勝負が決まる?!だが、戦闘は始ったばかり・・・

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