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東洋の魔女 Act-2

前進する島田戦車隊。

敵をおびき出す作戦を考えついたのか?


マコトは味方をどう導こうとしているのか?

12両の戦車が川を越えて進発した。


中隊規模の布陣を執る、魔鋼機械を乗せた戦車隊。

一路、南下する戦車隊の目標は・・・・



「差し当たっての攻撃目標だが、此処より12キロ南の防御線だな・・・」


車長席のマコトが地図を確認して呟いた。


「敵が強固な防衛線を張り巡らせる前に、一か所でも穴を穿けば・・・」


戦車独自の闘い方をマコトは考えている。

歩兵を伴っていないから、敵陣を占領するなど出来はしない。

戦車が持つ機動力で、敵陣を混乱させて撤退を促す戦法を考えているのだ。


「マコト・・・いえ、島田少佐。

 敵の防衛ラインには、きっと戦車もいるでしょう。

 防衛線を破るには敵戦車隊を湧出し、

 敵の見ている前で撃滅すれば、兵達の戦意を挫けるかもしれませんね?」


砲手席からミユキが振り返って車長席のマコトに話した。


「うん、そうだろうな。

 それには先ず、こちらが姿を晒さなきゃ敵も気が付かない。

 戦車部隊であることを知らせて、誘き出さなきゃいけないな」


ミユキに同意して、どうすれば敵に知らせられるかを考える。

下手な行動を執れば、戦車部隊ではなく重砲を撃ち込まれて却ってこちらの動きを阻まれる事になってしまう。

敵が戦車部隊を差し向けるようにするには、どうすれば良いのか?


「少佐、1個小隊を敵側方に向かわせて攻撃し、敵戦車が追いかけてくるように仕向けてはどうでしょうか?」


キューポラを見上げて、ヒロコが意見具申してくる。


「うん、なるほどね。少数の戦車なら敵も油断して追いかけてくるかもしれない。

 敵の戦車部隊の規模がどれだけかも掴めるかもしれないし・・・」


ミユキがヒロコの意見に付け加える。


「敵部隊にどれだけの車両があるのか、私達には知らされていないから。

 先ずは当面の敵部隊の規模を掴む事が寛容だと思うから」


確かに前面の敵部隊にどれだけの車両が配置されているのか、情報は入ってはいなかった。

敵を湧出すると言ったが、こちらの数倍もの戦力で向かって来られようものなら、

返り討ちに遭ってしまうかもしれないのだから。


「そうだな・・・無線手、支隊本部と連絡は取れるか?」


マコトは情報を得る為、佐伯支隊との交信を求めた。

電波状態が良くても無線機の性能限界がある為に、早めに交信出来るかを確かめておく必要もあった。

無線機を弄っていたナオが、本部との回線が繋がったので。


「指揮官、繋がりましたでしゅ!」


振り向くと送受話機をミユキに手渡した。


「よし、繋いでくれ」


ミユキから受け取ったマコトが、マイクに話しかける。


「本部、敵部隊の規模は分らないか?

 こちら島田戦車隊、前方の敵陣に配備されている戦車部隊の規模は分らないか?」


マコトが特別編成隊である自分の中隊をそう呼んだ。

もし、無線を敵が傍受しているとすれば、中隊規模だと敵に悟られる恐れがあったからだ。


マコトが無線を使った訳は、敵にワザと知らせる意味合いもあったようだ。

敵が傍受するのは間違いないと踏んで。

それはミユキ達の意見を汲んだと同じ事。


先ずは敵にこちらの所在を教え、注意を惹きつけようとした。

傍受しているであろう敵に、戦車が向かっているぞと教えた様なものだった。


敵が傍受しているのと同じように、仲間の内でも無線機に齧りついている者が居た。

マコト達の作戦を知り様がない第2中隊長である大貫中尉は。


「なにを馬鹿な問い掛けに無線を使うのよ!

 これじゃあ、敵に私達が攻撃に行くと教えるようなものだわ!」


奇襲攻撃が一番良いと踏んでいた大貫おおぬき 幸子さちこ中尉が、地団太踏んで悔しがる。


「だから、戦闘経験もない未熟な指揮官って嫌なのよ!

 敵が待ち伏せしたらどうする気なのかしら!」


敵が戦車部隊を送り込まず、無線の方位を測定して待ち伏せするかも知れないと思ったようだ。


「ホントにもうっ!・・・って、あれ?!」


傍受している無線機から、島田少佐の言葉が続くと。


「なになに?!我々が1個連隊規模ですって?

 何を寝ぼけた戯言を言って・・・え?!なんですって?!」


大貫中尉は度肝を抜かれたように、声を詰まらせる。


「あの馬鹿少佐ったら・・・やるじゃないの」


大貫中尉は無線機から聞こえた指揮官の言葉に、前言を撤回する。


「車長?なにを話されたのですか?」


砲手がヘッドホンを持って、ニヤリと笑う大貫中尉に訊いた。


「なにも。あのとっぽい少佐は、見た目よりよっぽど策士だったというだけよ」


何をマコトは支隊本部に報じたのか。

大貫中尉をして、策士と言わしめたのか。


挿絵(By みてみん)



________________






「なるほどね、流石指揮官って処ですね?」


ヒロコが腕を組んで、送受話器を返したマコトの考えを認めた。


「ヒロコ!マコト・・・いいえ、島田少佐に向かって失礼でしょ?!」


ミユキが伍長のヒロコに釘を刺すと、当の本人はけろっとしたまま。


「ミユキ、色部伍長も認めてくれたのだから良いじゃないか。

 それよりも、今言った通り。

 敵が傍受していれば、僕らの方に戦車隊を差し向けて来るだろう。

 どんな戦車が向かって来るかは判らないが、相当の覚悟はしなきゃいけないぞ?」


湧出作戦を実行すると、命じたマコトへ。


「しかしーっ、まさか敵も我々が12両だけだとは思っていないでしょうね。

 連隊規模の戦車が向かってくると考えるでしょうね?」


アキナが、操縦桿を握りながら笑い声をあげる。


「そうでしゅーっ、少佐の言葉を聞いたら、敵も慌てて対抗策を執るでちょーね!」


送受話器を自分に合わせ直したナオも納得顔で笑う。


「だけど、マコト・・・少佐がこんな策士だとは思いませんでしたよ?

 戦車連隊が押し寄せる手筈だなんて・・・その先鋒が私達。

 最初に攻撃する部隊として接近中だなんて・・・

 敵としたら最初の敵を、全力で追い返さなきゃって、想いますよね?

 そのまま見過ごしていれば、包囲殲滅される危険があるのですからね」


ミユキがマコトを策士と呼んだのは、大貫中尉と同じ気持ちだったのだろう。

無線が傍受されるのを分かっていながら、敢えて執った行動なのだから。


「みんな、敵は間も無く索敵に出向いて来るだろう。

 それを見過ごしてはいけない。

 敵に我々の規模を掴ませてから、撃破して第1陣を突破する。

 青野無線手、今度はこちらが敵の無線を傍受する番だよ?

 しっかり掴んでくれよ?」


マコトの頼みに顎を引いて頷くナオが。


「了解でしゅっ!任せてくだしゃい!」


自信ありげに答えるのだった。


「それじゃあ、先ずは部隊を2分しなきゃならない。

 先遣小隊は誰に任せようか?」


ミユキに推薦させようとすると。


「大貫中尉の小隊は駄目ですよ?あの無鉄砲なら、見つけた敵を追いかけ廻すでしょうから」


ヒロコが最初に断ったのは、無鉄砲な中隊長だった。


「あはは、そりゃ駄目だな。じゃあ、他に?」


マコトが適任者を求めると。


「人格者ならここに居ますけどね?

 でも、指揮官が乗って居られるのだし、指揮が執れなくなりますよね?」


ヒロコがミユキを指し、手をクロスさせ駄目だと示してきた。


「そりゃそうだ。指揮戦車が突貫するなんて聞いた事も無い。

 敵を見つければ素直に退ける人がいいのだが?」


マコトはこの部隊に詳しくないからと、推薦を募った訳だが。


「では、こちらの第2小隊に向かわせましょう。

 小田切軍曹なら、間違いはないでしょうから」


ミユキは自分の中隊の中で古参でもあり人格者でもある軍曹を選んだ。


「そうかい?ミユキがそう言うのなら小田切軍曹に任せようか」


判断基準がミユキの勧めだから、という曖昧な事だったが。


「それじゃあ、早速先行させるように言ってくれ」


時間を惜しむ様に、マコトがナオに促した。

了解の印に、ナオが片手を挙げて無線機に取り付いた。


後方に居た3両の魔鋼チハが、第1小隊を追い越していく。


キューポラから半身を出した小田切軍曹が命令を受領した印に手を挙げている。

マコトは前に手を繰り出し、全車で後に続けと命じるのだった。



島田戦車隊は敵戦車部隊との決戦を希求し前進する。

向かった先に待ち受けているのは、どんな戦車だというのか。


先に闘ったマチルダⅡだろうか?

それとも、もっと手強い車両だろうか?


闘いはもう目の前にまで迫っていた。



敵は無線を傍受しているのか?


作戦通りに現れてくれるだろうか?

進発させた小田切軍曹が見つけた物とは?!


次回 東洋の魔女 Act-3

戦闘の第一幕が開かれる・・・敵は魔鋼戦車隊へ向って来る?!

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