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蛇神ヨルムと文明育成ゲーム

作者: 斎藤 アルター

とても古い話になるが、天にすら届くだろう鉄の塔がそびえ立ち、科学というものを手にした人間たちが支配していた時代があった。


盛者必衰の理で、かつての繁栄した時の名残りはもうない。


今はもう、一匹の封印された古い神が夢の中で見るだけである。




ふふふ、我、蛇神ヨルムは、新しい娯楽というものを見つけてしまった。


そう、外は花粉が舞い暗黒の時代と化していたため、電気街に行くことも叶わず、苦渋の涙を飲みながらインターネットサーフィンを優雅にしている時だ。


インターネット上で、中毒者続出、電子の麻薬と称されるあのゲームの新作が、ついに上陸という宣伝バナーを見つけたのだ。


我とて月々のゲームに対する課金や、アニメ、漫画に対する消費、毎日牛丼を食わねばならぬ身、そう自由に使う額というものが、あるわけではない。


しかし、この煽りからして、相当面白いものなのだろうと推測できる。




我は勘というものを信じている。


ガチャを回す時も、ここで引けという勘を信じ、多くのユキチを失うものも、ほしいと思うものは手に入れている実績がある。


我の勘は偉大である。


期待させておいて、バグで途中でフリーズなんてしないと、囁くほどだ。


きっとストレスフリーに違いない。


ならば、やるしかないだろう!


来月の、我に支払いは任せてポチッとダウンロードした。


このポチッとしちゃった時のああ、失敗だったか?いや、大丈夫だろうという、身に悶えるような高揚感はいつになっても慣れぬものよ。


これがきっと恋という奴なのだろう。ふふふふ


「あーーヨルム様、また余計なものを買ったっすねー」


このあざとい感じとうざい感じの声を二つで割った声は、我が無能の子分にして、裏切り率100パーセントあなたの隣に愉快を振りまく愚か者代表子分、ナッツルーラー!!


「全部聞こえてるっすよ、ヨルムさま、今夜本当に本能寺ファイヤーしちゃうっすよ。」


「ふ、それごときでこの我を、倒せると思うなよ、ナッツルーラーよ、牛丼を毎日食べ、身も心も、研ぎ澄まされた我に死角などない!」


「贅肉なのに死角なしとか、バカっぽいっすね、ヨルム様、あ、ヨルム様はおばかさんだったっす。」


「贅肉?我のパーフェクトボディを前によくもそんなことを言えるのだな、あっ、そっか、貴様の平原のような胸を見て哀れに思いすぎたために、無頓着であった。山のない世界というのは、たいそうさみしいもんだなぁ、ナッツルーラーよ」


「イッライッラリーン!ヨルム様、たとえヨルム様であろうとも、言っていいことと悪いことがあるっす。本能寺ファイヤーの変、待った無しっす。本音を言えば今すぐファイヤーっす。」


「ナッツルーラーよ、我は今気分がよい、その偉大なるパーフェクトでハイパーでウルトラな主に対する暴言も聞かなかったことにしてやろう。ほれ、ビスケットでも食べるか?」


「わーい、ビスケットっすーさすがヨルム様ー素敵っすー」


おお、ダウンロードが完了したぞ。どれどれ遊んでみるとしよう。


「結局のところヨルム様、今回はどんな無駄使いしたんすかー?」


「おい、ナッツルーラーよ、我は無駄使いなどせぬ。我には、必要なものなのだ。」


「いやいや、このガラクタの山を見てもう一度言ってほしいっす。時代はミニマムと断捨離っすよ。触らないものは全て処分する。これに限るっす。」


「いつかまた触る時がこよう。まだその時ではないのだ。勇者の聖剣も、そうやって埃をかぶるのだ。我の持ち物も同じこと。」


「ヨルム様、勇者の聖剣には、権威があるす。ヨルム様の持ち物はガラクタっす。」


「何を言うか、ナッツルーラーよ、我の持ち物がクソ勇者のクソ聖剣以下だと?撤回せよ。我は神ぞ、権威なんぞに縛られた生き方はせぬ!」


「もう、そんなこと言っちゃってヨルム様、信仰心をなくし、権威も過去の遺物となり、寝ぼけてたら、勇者に封印されて、夢の中の世界で、ちゃっかり遊び呆けて暮らしていると、主神様がこの惨状を目の当たりにしたら」


「言うな、言うでない、ナッツルーラーよ、あの名前を言ってはいけないクソは、容赦ないのだぞ、見つかったら小言のオンパレードだ。労働基準監督署がない世界で、セクハラを受けてみよ。泣き寝入りか、八つ当たりしかできんぞ」


「 あー」


「あーじゃない、納得するんじゃない。悲しくなってくるだろう」


「まぁ、いやなことは忘れるに限るっす。つよく生きてくださいヨルム様、お、ダウンロード終わったそうですよ」


「おおおー待っていたぞ」


「結局、何を買ったんすか?ヨルム様」


「聞いて驚け、文明育成シミュレーション戦略ゲーム我輩の野望だ」


「・・・・・・・なんなんすか?それ」


「文明育成シミュレーション戦略ゲーム我輩の野望」


「言ってることはわかるっす。それって面白さあるんすか?」


「あるに決まっておろう。なんたって、これをやる人間はあと1ターン、1ターンとうわごとを繰り返しながら夜明けを待つ、不眠症になること間違いなしと謳われるゲームぞ。」


「今は封印されたとは言え、かつては世界の半分くらいは、支配していたはずの神が、文明育成ごっこで支配者を気取るって、なんか、もう悲しくなってきたっす。強く生きてください。ヨルム様、遠い場所から早く朽ちないかなと願っているっす。」


「ナッツルーラーよ、そんなことを言っていられるのは、このゲームのお手軽さと楽しさを知ってからだ。」


「えー嫌っすよー」


「先人たちは言った。ゲームはみんなでワイワイやるんもんだと。」


「これ、一人用じゃないっすか」


「ふ、実況動画というものがある。それは他人のプレイ動画を見て楽しむというものだ。」


「はいはい、もうめんどくさいから見てるっす。」


「よし、そこで見ておれ」


15分後


「おのれ、蛮族め、我の奴隷を略奪しおって、許さん」


「まぁまぁ、ヨルム様、奪われたら奪い返すのが蛮族の流儀っす。」


「ならば、ナッツルーラーお主がやってみよ。」


「ヨルム様が、そうおっしゃるならやってみるっす。」



30分後


「むきーなんなすか、あの隣国、戦争をしたくなくば、金をだせ?舐めてるんっすか?舐めてるっすよね。」


「うむ、そうだ。奴らの要求には答えられん。」


「戦争っすね。やるしかないっす!」



1時間後


「よ、ヨルム様ー同盟軍が、宣戦布告してきたっす。」


「なになに、お前たちは、この世界の平和を乱す危険な存在だと?ふざけおって、奴らの大義名分なんぞ、不要。我らの平和を乱すものは即刻排除せねば。」



2時間後


「そろそろ我眠くなってきた。」


「そうっすね。ヨルム様。」


4時間後


「あと1ターンっす、あと1ターンっす」



「ふぅ、終わったな、ナッツルーラーよ」


「ええ、そうっすね。ヨルム様。文明育成ゲームは恐ろしいものだったす。」


「うむ、悪い買い物ではなかったが、、、」


「そうっすね、色々と支障がでるっす。」


「我も生活が破綻していく未来が見える。」


「ゲームというのは恐ろしいものっすね。」



文明育成ゲームは恐ろしいものです。

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