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84話 寧花祭と料理部の華

お待たせしました。

 月影ちゃんの入部試験が無事終了し、パフィンさんが「スイーツ分足りない〜」と駄々をこね出したので、手早くパンケーキを焼いた。これなら甘味をトッピングしなければ、甘いのをあまり好まない月影ちゃんも一緒に食べられる。 他の人、特にヒロとパフィンさんのは、缶詰のフルーツと生クリームを山盛りにして、粉糖かけてあげた。


 そうして現在、照りチキサンドやパンケーキをつまみながら、部長さん副部長さん含めての雑談中だ。肩身がせまいとかなんとか言って退出しようとしていたけど、聞きたいことがあったので残ってもらっていた。


「それで、聞きたいこととは何かな」

「部活動の、というか、学園祭での料理部の活動についてです」

「なるほど。武闘祭を挟むし、寧花祭は11月だから、少し気が早いとは思うけれどね。何が聞きたいのかな」

「料理部は、去年はどんなことをしたんですか?」

「去年、か……」


 そう呟いて、苦笑いするかのような表情で哀愁を感じる声でそう呟く。良い思い出ではなさそうだ。


「去年は、まともに活動していた部員が、僕と南君の2人だけだったからね……海苔弁当を50食用意して部室で手売りしたんだけど、ほとんど売れ残ったね。ははは……」

「ほとんど残るのは、辛いですね……」


 でもまあ、さすがに残っても仕方ないかな。たった2人じゃあまともな宣伝も出来ていなかったのだろうし、なにより、


「せっかくの学園祭で海苔弁は、なんて言いますか……流石に地味でしたね。それに、学園祭の華として、飲食系の出店は多いでしょうし」

「そうなんだけどね。とはいえ僕らにはセンスがないから、華のあるものは難しくてね」

「厳選した漬物を添えていたのに、誰も手に取らないのですぞ! まったく最近の若者は……なあにがバエ〜でありますか!」

「副部長殿の漬物中毒振りは、昔も今も変わらずのようだな」

「うーん、美味しければ大丈夫だと思うんだけどなー。パリパリ……まぁ、パンケーキには合わないですけどねー」


 唐突にヒロが、テーブルにあった小鉢に入っていた漬物をつまみ、合わないと言いながら美味しそうに食べ続ける。


「確かに、味は一番大事です。けど、やっぱり見た目は重要ですし、何より学園祭に出すには華がなさ過ぎです」

「ちな、売れ残り海苔ちゃんは〜、どしたんですか〜?」

「残りは全部、剣術部が買い取ってくれたよ。作ってからかなり時間が経っていたので、半額で、だけどね。はは……」


 ……想像しただけで辛い。


「とはいえ前回は、人員や得意な料理的に、海苔弁が最適解だったんだ。一応、他の出店のも食べられるように、値段やボリュームを抑えめにしたりと色々考えたんだけどね」

「漬物も、安くて美味いものを厳選しましたぞ」

「なるほど……その利点の宣伝は?」

「さっき言った利点を書いた張り紙をしたくらいかな。「海苔弁小サイズ販売中」って書いてね」

「……原文そのままですか?」

「そうだけど……問題あったかな」


 問題、というか。アピールとして弱すぎる。食欲とか購買意欲を煽る文としてうったえるものが皆無だと思う。


「……課題は華だけじゃなさそうですね」

「むぅ、面目ない」


 まあ、大衆食堂系男子2人だけでは荷が重かっただろうから、仕方ないね。まあ、今年は色々な意味で既に去年にはない華があるし、それだけでだいぶ違うだろうけど。


「まぁ、まだ二学期も初日だ。間に武闘祭も挟むし、この話の続きはまた後日にでも――」

「ダメです」

「えっ」


 部長さんの消極的な台詞を遮り、ずいっと前に出て主張する。


「そんな弱腰ではダメダメです。せっかくの学園祭、せっかく色々な人に手料理を食べて貰える機会なんですから、計画は少しでも早めに長く念入りにしましょう。方向性だけでも、今日中に決めましょう。ね?」

「あ、ああ、そうだね……」

「なんか優輝さんヤル気満々ですねーもぐもぐ」

「よね〜はむはむ」

「うむ。優輝は料理しゅみに関してはいつでも全力だからな」

「ん……(こくり)」

「そう言う姉さんだって、かなりの趣味人でしょ?」

「まあな」

「えっと〜。ミズ姉さんの趣味って〜、ユキさんメデメデしまくる?」

「そうだ。ゆえに、私は優輝の意見を全力で支持する。つまりは、料理部で学園祭を大いに盛り上げようとしている優輝を全力でサポートする」

「……うん、そこまで言うのなら反対はしないよ。たださっきも言ったけれど、武闘祭に響かない程度にしてな」

「はい、わかりました!」


 こうして無事、部長さんから許可得られた……ふふふ、学園祭、楽しみだなあ。





 ということで。早速出し物について話し合う事にした。まずなによりも考えるべきは。


「さて。どんなお店にしようか?」

「豚角煮丼なんてどうでしょうか!!」

「チュロスクレープチョコバナナ!!」

「どんな料理かじゃなくてね」

『?』


 ヒロパフィンさんにはすぐに理解出来なかったようだ。2人は食べる事に全力だなあ。可愛い。


「何を食べてもらいたいかよりもまず「どう提供すればお客さんが来てくれるか」を考えないと」

「……華……」


 僕の台詞に、月影ちゃんが呟く。


「だね、それが一番の課題。それと、いかに宣伝するかだね。こっちから積極的に宣伝するのは勿論の事、料理部の料理がいかに美味しいかを、事前にある程度知られているとなおいいね。すでに大きなライバルがいるし」

「料理長殿だな」

「うん。料理の腕には自信あるけど、料理長さんとは年季が違うから、彼の方が一枚上手なのは認めざるを得ないよね……男女問わず人気のイケメンだし……」

「よね〜」


 ネイ先生の話によると、学園祭当日も学食は営業するらしく、料理長さんと料理長さんの料理目当てで来る人がいるらしい。


「だから、料理長さんにはない『華』を使うのは必須だね」

「華……うーん? うーん……」


 ヒロが悩んでうんうん唸りだしたので、しばし各自考え込む。一応僕としては、すでに案はあるのだけど……内容的に、僕の口からは言い辛い。まあ、姉さんがなんかドヤ顔だし、多分僕と同じような案を頭に描いているだろうから――


「私の意見を言わせてもらおう。まず、私達の美少女力をふんだんに使うのは前提条件だが、それだけではインパクトが少々薄い。つまりは、料理の面でも華が必要になる」


――案の定、姉さんから切り出してくれた。


「料理の華……綺麗な料理、て事ですか?」

「スイーツ!」

「華としてはそれもあるが。私は、ライブを提案しよう」

「ライブ……生演奏?」


 そう聞いて、不思議そうな顔になるヒロ。というか、みんなの表情からして、月影ちゃん以外の人は意味をわかっていないかな。


「料理部的に言えば、生料理、かな? ようするに、目の前で調理するってことだね。お客さんの注文した料理を厨房で作って運ぶんじゃなくて、すぐ目の前、至近距離で作ってお出しする形式、てとこかな」

「屋台料理などもそうだが、目の前で調理されているのを目の当たりにすると、必要以上に食欲と購買意欲が刺激されるものだ」

「なるほどー、わかります! いいですよねー屋台飯!」


 うん、ヒロならすぐに理解してくれると思った。可愛い。


「しかも料理人が、超絶可愛い優輝なら尚更。売り上げ3000倍は堅いな」

「いやいや、3000倍は大袈裟過ぎない?」


 ていうかどっから出てきたのその数字。


「超わかります!」

「わかっちゃうんだ」

「なるほど。つまり華とは、優輝君ということだね」


 ……まあ、見た目は美少女な僕を「華」として使うのは、僕も予定通りなのだけれど。口に出して言われると、なんか恥ずいね。


「優輝が一番目玉の華なのは確かだが。それ以外の料理部女子も全員、今年度一年生の中でも上位と言って過言ではない美少女だ。その華を全て使わぬ手はあるまい」

「……」


 月影ちゃんがわずかに頬を染め、本を開いて目を落とす。照れてるのかな、可愛い。


「美少女って私達の事ですか!? いやー参りましたねーそこまでよいしょされたら、やらないわけにはいきませんよねー!」


 逆にヒロは、姉さんの高評価に気を良くして調子に乗り出す。可愛い、けど若干ウザい。


「まぁ〜ユキさんのスイーツ食べさせてくれるんなら? そんくらいおけまる〜」

「……料理、出来るなら……ん、問題ありません……」


 2人も異論はないようだ。今いないけど、アキも多分断らないだろう、お祭り大好きだものね。


「まあ、方向性に関しては、今日はこれくらいにして。次はどこを使うか、だけど」


 今いるのは部室だ。一応料理部ということもあり、ここにも簡易キッチンはあるけど、ライブクッキングの場としても食事処としても狭すぎる。なので、


「ライブクッキング形式でやるなら、部室は仕込みのみで、広い調理室を使うのが妥当だよね」

「うむ。だがしかし、調理を見せるのだから、調理室も戻せる程度の改造はした方が良いな」

「だね。本格的に考えるのは、武闘祭が終わってからだけど。あとは、各自の大雑把な役割は決めておこうか」

「役割ですか?」

「うん、当日の各人の担当ね。大きく分けて、調理担当、接客担当、集客担当、てとこかな。僕は料理部のお華代表らしいから、調理と接客の両方かな」

「……ん……私は、接客は、その……」

「うんまあ、口下手な月影ちゃんに注文取らせるのは、ちょっと酷かな」

「需要はあるだろうがな。まあ仕方あるまい」

「だから月影ちゃんは、主に調理担当ね」

「……感謝」

「しかし、私達姉妹に匹敵する月影の美少女成分は、他でも使いたいところだな。ゆえに、誰かと組んで宣伝と呼び込みをさせてはどうだろうか」

「うーん、そうだね。月影ちゃんならそこにいるだけで目を惹く可愛さだし……直接的な呼び込みはもう1人に任せて、チラシを抱えてただ立っているだけでも、集客効果は絶大だろうね。というわけで、どうかな? 無理強いはしないけど」

「…………。立っているだけ、なら……」

「ん、ありがとね。となると……」


 そんな感じで話し合い、大体の担当が決まる。


 僕はさっき言った通り、調理と接客担当。

 アキは明るくて人当たりが良いから、調理と集客を臨機応変に、かな。

 ヒロとパフィンさんは、主に接客と集客。月影ちゃんは、主に調理でたまに集客、かな。特に、出だしのまだお客さんが少ないだろう時に月影ちゃん効果は使いたいところ。アキヒロパフィの誰かと一緒なら、何も問題はないだろう。

 最後に、部長副部長さんだけど。


「美少女という華を全面的に使いたいので、申し訳ないですけど、お2人は裏方でお願いします。主に部室で仕込みを担当していただければと」

「ああ、それで構わないよ。美少女集団に、僕のような大きくてむさ苦しいのが混ざっては台無しだろうからね」

「ふ……所詮漬物は脇役になる定めですぞ……慣れているゆえ、せいぜい裏方を全うしますぞ」

「イベントの成功は、裏方の頑張りがあってこそですよ。よろしくお願いしますね」


 にっこり笑顔で、あらかじめ協力に感謝している事を伝える。


「む……し、仕方がないですな。全力で裏方をやってやりますぞ!」

「ありがとうございます。一緒に料理部を盛り上げましょう!」

「委細承知ですぞ! ……でへへ……」


 僕の言葉に気を良くしたのか、副部長さんが照れたように後ろ頭をかく。

 

「チョロ〜ん」

「しかし優輝の笑顔なら仕方ない」

「わかります」


 ……なんか聞こえたけど気にしない。


 学園祭に関しての話は今日はここで切り上げ、後は各自軽食をつまみながら雑談を楽しんだ。

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