7話 いっぱい食べる君が可愛い
銀髪ロリっ娘と大和撫子系黒髪ロングっ娘が大好きです。
「そういえば、姉さん的にストゥルガノフ氏の料理はどれくらい好き?」
「ふむ、そうだな……6番目くらいか」
「また微妙な位置だね……ちなみに3番は?」
「当然1番は優輝だ」
「うん、知ってる」
で、2番が母さんだろうからあえて3番を聞いたんだけど……まあいいや。
「ふむ……その話で思い出したが、学食で見かけたのが最初じゃなかったか?」
「うん、そうだね」
――――――――――
「ん……あれは……」
クラスSの人が食事を受け取りに並び始めてすぐ。物凄く目を惹く娘がいた。
髪型は、ロングを左右黒いリボンで結んだ、いわゆるツインテールだ。その髪型自体は時々見かけるけど……1番目を惹く理由は、やっぱり髪色だろう。
「銀髪だねー……」
「うむ……綺麗な銀だな」
「ほう。世界には銀の髪の者がいるのは聞いたことがあるが、実際に見るのは初だ。なるほど……遠目だが、神秘的美しさを感じるな」
精霊国では、銀は神聖さの象徴とされていて、金よりも貴重度が高い。由来は、神霊石精製に、銀が相性が良い場合が多かったからと言われている。
光を受けて銀糸のように煌めくあの髪は、確かに神々しい美しさがある……それはまあいいんだけど。
「あの娘、身長低すぎないか?」
「だよなー。巻も結構低いけど、あれはさらに……」
ふむ、巻さんか。自己紹介を思い出して見る……
「ども、はじめまして。巻 癒円っす。かなり背が低いっすけど、一応同い年っす。逆に、多分鯨井さんと同じくらい胸はデカイんすけど……誰でも良いんでちょっと身長わけてくんないすか?」
……だったかな。
身長と胸、顔のアンバランスさを本人はとても気にしているらしい。同じくらい胸が大きい(らしい)ヒロに比べて、巻さんは10cm以上低く見える。
「あー、あれか? 飛び級とかってヤツ」
「いや、栄陽学園に飛び級制度はないはずだよ」
銀髪ツインテールの彼女は、ヒロと比べると頭1つ分以上低く見える。130cmもないんじゃないかな。
「しかし、本当に美しい銀だ……嫁候補だな」
『うわ』
その発言に、思わず引いて出てしまった声がハモった。ちなみに姉さん以外の3人のだ。
――――――――――
「うわ」
「突然どうした?」
「その……過去の自分の発言がね……あーうー……」
「ふむ? よくわからんが悩ましげな様も可愛いぞ」
「ありがと……話を戻すね」
――――――――――
「なんだその反応は。同じ年齢ならなにも問題ないではないか」
「あー、まーそう言われればそうだけどよー」
「小さい女の子を好きな奴、ロリコンって言うんだっけか? 俺初めて会ったぜ」
「ロリ云々もそうだけど、さっき僕に言い寄ってたのにもう他の娘に目移りするのは、さすがに誠実さに欠けるんじゃないかな……」
「ふ、安心しろ。我が王になったなら一夫多妻制にするからな。当然お前が第一王妃だ」
「当然じゃないから……姉さん?」
こういう会話の時は必ず割り込んでくる姉さんの反応がない。視線からして、銀髪の娘を見ているようだけど……あ。
「…………」
銀髪の娘が振り返ってこっちを見ていた。まあ、自分を嫁候補だのロリだの言ってれば、さすがに気になるか…………ああ、うん。姉さんが黙り込んでた理由が分かった。
「なんと……美しい」
飯屋峰君の言葉に、今度は誰も引かない。それくらい、彼女の顔は可愛くて美しかった。
まるで世界一の人形作家が作り上げたビスクドールのような、完成された顔立ちに白い肌、髪と同じくらい美しい銀の瞳。全てにおいて神々しいまでの美少女だった。姉さんが思わず黙り込むほどだから相当だ。
「月影、どうしました?」
手前に並んでいた黒髪の娘が振り返り、銀髪の美少女……月影ちゃんに話しかけた。親しげに呼んでいるから、友達なのだろう。
「ん……妙な言葉が聞こえた、ので……」
名前も声も綺麗だし可愛いし、非の打ち所がない。
というか友達の黒髪超ロングの娘もかなりの美少女だし、うーん……類は友を呼ぶ?
「妙な……?」
少し不機嫌そうに眉をひそめ、こちらを見て、
「っっ‼︎」
……なんか、電流走る、て感じの顔をされた。ていうか今にもこちらに駆け出しそうな気配だった。
「蒼月、ダメ……」
「あっと……そうですわね」
月影ちゃんに諭され、列に並び直す黒髪超ロングの娘……蒼月さん。
んー……蒼月さんの僕を見る目、どこかで……
「ふふふ。ここはなかなか楽しめそうだ。入学してよかった」
「え、うん、まあそうだね。僕もそう思うけど……どしたの? いつも以上に上機嫌みたいだけど」
「ふむ、そうだな……期待通りに話が進むと気分が良くなるだろう? つまりはそういうことだ」
「……そっかあ」
姉さんの期待通りかー……要するに、僕らの周りがまた騒がしくなるってことだ。姉さんが楽しそうだからまあいいけど、もう少しだけ静かに過ごしたかったかなー。
「すいませ〜ん! ご飯大盛りに出来ますか〜⁉︎」
クラスDの番になって並び始めてすぐ。前方のアキが大声で厨房にそう尋ねていた。
「元気なお嬢さんですね。ええ、出来ますよ」
それに機嫌を悪くすることなくにこやかに対応するストゥルガノフ氏……大人だ。
というか、今まで見ててご飯の量を尋ねた人いなかった気がする。初日だし、みんな遠慮してたのかな。
「大盛りにしますか?」
「普通で!」
「普通かよ!」
珍しく雅がツッコミいれていた。雅の気持ちはわかるけど、よく考えてみればアキの気持ちというか、行動理由もわかる。
「美味しいものが好きって言ったけど、たくさん食べるのが好きとは言ってないよ?」
「ああ、そうなのか」
食事を受け取ってから振り返り、雅にそう答えてから席へ行った……じゃあなんでわざわざ聞いたかって言えば。
「あ、あのその……ご飯、大盛りで……」
「……なるほど。はい、了解しました」
ストゥルガノフ氏が納得いったという顔をして、おずおずと注文するヒロのご飯を多めに盛っていく。
アキは「美味しいものが好き」で、ヒロは「食べるのが好き」。自己紹介で言ってた通りだ。
「ふふっ……ほんと、友達想いだね、アキは」
「え? なんでそこでアキ? ……ああそうか!」
ちょっと鈍い雅も、ようやくさっきのアキの行動を理解したらしい。
「なるほどな……アキはいい奴だなあ。俺、アキのそういうところ好きだわ」
「す⁉︎」
雅の発言にガタタッと椅子を鳴らしてこっちを見たのは……まあ、アキだ。ちょっと頬が赤い。可愛い。
「雅の思考パターンはわかってきたけど……そういう台詞は誤解を招くから気をつけようね?」
「え? どういう意味だ?」
「うん、まあそう来るよね。わからないなら良いよ」
それも雅の個性、魅力だしね。
「これだから天然は……見てる分には面白い」
「優輝……お前の姉貴、微妙に性格悪いよな」
「はは……まあ、あれで空気は読める方だから、大目に見てあげてよ」
「おう、りょーかい」
山本さんの呆れ顔の呟きに簡単にフォローを入れると、軽いノリでそう返された……まあ姉さん、読んだ上で険悪にならない程度に地雷を踏みにいったりもするから、否定は出来ないのだけど。
学食最初のメニューは、ライス、コールスローサラダ、ワカメスープ、チキンステーキアスパラ添え。デザートにイチゴのミニパフェまで付いていた……内容も味も大満足。
もぐもぐ……もぐもぐ……
「あっそういえば、優輝はトマトが好きって言ってなかった?」
「うん。だから、チキンステーキのソースがトマトベースで凄い嬉しかった。ふふっ」
で。今は、食事が終わった人から食堂内限定で、親睦を深める目的でしばらく自由行動となっていた。
もぐもぐ……もぐもぐ……
「あ〜やっぱりかぁ! 間近で美味しそうに食べる優輝の顔、見たかったな〜」
「ふっ、残念だったな。超可愛かったぞ」
「ぐぬぬ……その顔ムカツク……いいもん、3年もあれば見る機会なんていくらでもあるし!」
「姉さんには言われ慣れてるから、まだいいけど……アキ、本人の目の前でそういう会話しないで欲しいな。なんか妙に気恥ずかしい」
「その恥ずかしがってる顔がまた可愛い! ん〜あざといっ!」
「うむ、激しく同意だ」
「えぇ〜……」
今現在、姉さんと僕、アキは、ヒロのいるテーブル席に集まっていた。
ちなみに雅は「よく考えたらクラスの男子とまだ話してないな」と言って、男子で固まってなにやら楽しそうに話している……ちょっとさみしい。
「もぐもぐ……もぐもぐ……♪」
「……ヒロはすごい幸せそうに食べるね。可愛い」
「うんうん、毎回すっごい美味しそうにいっぱい食べてくれるんだよ〜。そんなヒロが可愛くて大好き!」
「というかいつまで食べているんだこいつは」
そう、ヒロだけまだ食べていた。食べるのが遅いわけではなく、おかわりだった。ほとんどの人が食べ終えてるのに1人もくもくともぐもぐしていた……食事中は精神が図太くなるらしい。
「楽しく談笑中、失礼致しますわ」
「うん? あ、えーと……確かクラスSの」
あの時の黒髪超ロングの美少女……蒼月さんが話しかけて来た。後ろには月影ちゃんもいる。
「はじめまして。私、天王寺 蒼月と申します。以後お見知り置き下さい」
そう言い、たおやかにお辞儀をして優しげに微笑みを向けてくる蒼月さん。
どこかのお嬢様だろうか? 月影ちゃんとは違う方向で綺麗で可愛い。
「これは、ご丁寧にどうもです。僕は水城 優輝と申します。よろしくお願いします」
礼には礼を。椅子から立ち上がり、再び母さんとの自己紹介練習を思い出しながら、さらに蒼月さんの綺麗な動作を取り入れてお辞儀を返す。
「うっ……」
なぜか、笑顔のまま呻いて固まられた。
「すぅー……はぁー……」
と思ったら、くるりと綺麗に半回転して深呼吸しだした。なんだろ?
「……はじめ、まして……天王寺 月影、です……」
その間に、月影ちゃんの方に自己紹介された。
同じ名字ってことは姉妹……なのかな? 容姿は全然似てないから、血の繋がりはなさそうだけど。
「あっどもども、海老江 茜葵ですわ! こっちの食べてる娘は友達の鯨井 大ちゃんですわよ!」
「優輝の姉の天才美少女、水城 瑞希だ。よろしく」
クラスSの超絶美少女姉妹に話しかけられたからか、アキが緊張で慌ててしどろもどろに挨拶する。姉さんはいつも通りだけど。
「…………。ん……よろしく、お願いします……」
ゆっくり僕らに視線を彷徨わせてからそう言い、ぺこりと小さくお辞儀する月影ちゃん。可愛い。
「……ん」
頭をあげてから蒼月さんの方に向き、服の裾をちょんと軽くひっぱる。
「はっ⁉︎ あ、ああ、月影ですか」
「……目的」
「ええ、わかっていますわ。間近で接したら予想以上で、少し我を忘れただけです」
どうやら、ただ親睦を深めに来た訳じゃなく、明確な目的があるらしい。蒼月さんの浮かれた雰囲気……まさか、告白? いやいやないない。こっちはどう見ても女の子だし、まずそれはない……よね?
「水城さん……お2人共とても美しいですか、特に優輝さん! あなたを一目見た時、私は大きな衝撃を受けたのです。ビビビッと来ました!」
「え、あ、はい」
「ふふっ」
確かに最初目があった時、そんな感じの反応してたけど……というか姉さんはなんで訳知り顔なんだろ?
「水城 優輝さん!」
突然ずいっと急接近され、ガシッと手を掴まれ、
「私のモノになって下さいませ‼︎」
大胆な告白をされた……あれえ⁇
「……ふぅ。ごちそうさまで……え?」
『ええええええええええ⁉︎⁉︎』
アキと、タイミング良く?食事を終えたヒロの驚きの声が、食堂中に響き渡った。
「あらあら〜……青春ですね〜、学園長さん」
「ええ。若いですなあ」
「百合を! ありったけの百合の花をごごごご……」
「気持ちはわからないでもないけど落ち着け」
登場人物紹介
巻 癒円
容姿:灰色髪ロング 編み込みポニー 太眉 可愛い系
身長:141cm
性格:弱低
好物:チーズ
嫌い:ワサビ
趣味:猫を愛でる
属性:地
ローテンション系女子。語尾に「っす」と付ける癖がある。
胸が大きいのに身長が低いことを気にしており、身長を伸ばす様々な方法を探して試している。しかし効果のあるものが見つからず、半分くらい諦めており自虐ネタにしている。
戦闘系の精霊術はあまり得意ではないが、治癒術系の術の実力はかなり高い。