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65話 またナンパされた……

「ちなみにだが。あの時のネイ先生殿の台詞を聞いて、皆一様にこう思ったそうだ」



(ああ……優輝の「恥ずかしい台詞をつい口走ってしまう癖」は、この人が原因か)



「とな」

「あぁ、わかるわー」

「……も、もうこの話はここまでにしない?」

「別に構わないが。優輝の癖は未だ直っていないからな、直るまでは時折話のネタになるだろう。まあ私は、直す必要性を感じないが」

「よねー」

「はい、私もそう思います」

「そ、そう? ……というか。なんで直そうとしてたんだっけ……」


 記憶を辿ってみる……確かキッカケは、サチさんに「恥ずかしい台詞禁止!」みたいな事を言われたから、だったはず……あれ?


「そういえばいつの間にか、それ系でイジられる事はあっても、直して的な事は言われなくなったような」


 んー……もしかして、諦められてた?


「そこも優輝の魅力、と気付いたからだろうな」


 姉さんが、どこか意地の悪そうな顔でそう言う……あー……なんか、2年生の終業式の日の事思い出しちゃった。


 とはいえ、昔話の流れ的に、一年の夏休みからいきなりそこへ話が飛ぶのもね。


 という事で。


「そんな事より話の続きをしよう。夏休みに入ってからのお話ね」

「……なーんかはぐらかした感じ?」

「ですわねー、気になりますねー」

「……今日のおやつはシフォンケーキにしようかと思ってたんだけど、いらない?」

『いりますいります』


 ……よし、これで話を時間軸通りに進められそうだ。


 今の僕の台詞を聞いた静海がすっと動き出し、買い物の準備を始めた。お昼のオムライスに使用した卵は、シフォン用に買って置いたものだったので、それを補充しに行ってくれるのだろう。


 さて。夏休みに入ってからの、だから……うん、やっぱり最初は、初日のあの話からしよう。





       ――――――――――





 グリーンウィークの時は、ネイ先生から車をレンタルして帰郷したけれど。夏休み中の、8月に入ってからの約2週間、ネイ先生も帰郷するらしいので、僕らが借りる訳にはいかない。


 ので。今回は、父さんが迎えに来てくれる事になっている。


 父さんは社会人というか、世界の危機に立ち向かう使命を帯びた特殊な国家公務員だ。

 そんな仕事をしている父さんだけど、僕らが実家にいた頃はほぼ毎週1日は必ず家に帰っていたし、毎年グリーンウィークや年末年始などの連休には、毎日家に居てくれた。だから、水城家は円満な家庭、なのだと思う。

 とはいえ、仕事が仕事なだけにそれが限度らしく、自由にいつでも動ける身とは言えない。


 何が言いたいのかというと。自由に動けない父さんが迎えに来られるのは、約1週間後、7月末になる。

 どうしても早く家に帰ってやりたい事がある、という訳でもないので、しばらくは普段の休日にしている行動を取るつもりである……のだけど。





(……よし。予定通り15分前。んー……)


 今僕が来たのは、学園都市の駅前広場。ここで待ち合わせをしている。


 待ち人は生真面目さんだから、すでに来ているかもと思い、くるりと辺りを見回して探す、と、


「さっきからずっといるじゃん、もう来ないって。だからオレらとさぁ」

「さっきから言ってるけれど、余裕を持って早めに来ただけで、約束の時間にはまだなっていないの。ナンパなら他を当たって」


 2人組の男にナンパされている待ち人ーーサチさんを発見。すぐ見つかったのは良いけど……


「そう言ってからもう10分以上待ってんじゃん。んな待たせるって事は、もう来ないっしょ。だからさぁ」

「はぁ〜……私、同じ説明を何回したかしら。話が通じないわね……」


 心底疲れたようにそう呟くサチさん。だいぶ辟易してるっぽい。


 当然、すぐに手助けに向かーー


「ねね、キミいまひとり? キミメッチャカワイイねー! ヒマならオレらと遊ばなーい?」

「え?」


ーーおうとしたら、僕の方も別の2人組にナンパされたってしまった、油断してて即返事してしまった。


 ていうかなんかこっちの2人も、サチさんに声かけしてる人と似た、チャラついた感じの人達だし……ナンパする人って、やっぱり似た性格の人が多いのかな。


「だから……うん?」


 別のナンパされる声に気付いたサチさんが、こちらに視線を向け、しばし固まる。


『…………』


 しばし、無言で見つめ合う。


「お? うおっ! あっちの娘もメチャカワじゃね!?」

「おおっスッゲェカワイイ! ……何故かモブメンがいっけど」

「あっちの娘も良いな、綺麗系って感じ?」

「だな……なんか頭悪そうなのにからまれててカワイソーだけど」

「おん?」

「あん?」


 そして、僕らにナンパしていた2人組2組が、何故かにらみ合いだした。なにこの状況。


「……ぷっ。あはっあははははははははっ!!」

「えー」


 状況の奇妙さが変なツボに入ったのか、サチさんが堪らず爆笑し出した。


「えっナニナニ、オレそんな面白い事言ったっけ?」

「あはははっ……ふぅ〜……いえ、貴方達は関係ないわ。それより、さっきから私が言っていた待ち人が来たの。これ以上纏わりつかないでくれる?」


 軽口に対してわざわざ詳しい内容の返事を返すサチさん。生真面目だなあ。そこが好き。


「マジかよ! お友達もメチャカワだねぇ! 美少女は美少女を引き寄せるってか!」

「ねばって大当たりだったな! あっモチ友達も一緒でいいぜぇ、むしろバッチウェルカム!」

「は? こっちの娘は俺らが先に声かけしたんすけど?」

「はぁ? はっ! テメェらみてぇなモブ顔、最初からオコトワリだろうがよ」


 顔はともかく、最近からお断りなのは合ってるかな。ていうか、


「あ〜? てめーらだって似たようなもんだろうが」

「ぉお? 目ぇ腐ってんな? 俺ら読モ経験アリだぜ?」

「どうせ知名度低い雑誌のだろ? オレらなんか、最高の穴場デートスポット知ってるし? てめーらヤリたいだけの低脳野郎共なんかより、ぜってーイロイロ大満足させてあげられるね!」

「ザコモブなテメェらにはぜってぇムリだな! なんでかカンチガイしてイキってんねぇ!」


なんか勝手に口喧嘩し始めた。しかも内容がかなり低レベルだ。


 さて。徐々にエスカレートして来て一時的に眼中から外れたようだし、撒く手間が省けそうだ。


「サチさん、今のうちに離れよ?」

「……そうね。はぁ、これだから男子って……」

「まあまあ。あの人達を男子の基準にしちゃ駄目だよ」

「まあ、それもそうね。それに、私は……モニョモニョ……」

「……うん? なんて?」


 耳は良いと思ってるけど、今の小声のモニョりは流石に聞き取れなかった。


「……な、なんでもないわ。さっ早く離れましょ。この人達の近くにいたら、私達も同レベルに見られちゃうわ」

「ん、了解」



 視界に入らない距離まで来たけど、まだ言い争う声が聞こえる。


「二兎を追う者は一兎をも得ずってね。まあ、僕らは爆速な兎だから、どっちにしても一匹も捕まえられなかっただろうけどね」

「わ、私はウサギってイメージじゃないけど……ウサギは、可愛くて好きだけど」

「そっか。じゃあまずは、ウサギの小物を探しに行こっか」

「良いわね! ええ、行きましょ! ふふっ!」


 サチさん、上機嫌だな。うん、買い物に誘って正解だったね。





 夏休み初日。毎朝の鍛錬をサチさん達と一緒にした時の事。

 今日のお昼に、サチさんのリクエストであるケチャップオムライスをご馳走する話になった。


 朝練を一緒した雅とパフィンさんも誘ったのだけど、


「部活の先輩と、部活の備品買いに街に出るんだけどさ。昼飯おごってくれるって言われたから、今日はいいわ」

「アタシはこの後シャワシャワスッキリしたらぁ、さっそくひとりスイーツツアーに繰り出したいしぃ、ムリ〜」


と言われてしまった。


 ちなみに姉さんは、朝一で静海と一緒に父さんの所へ出かけたのでいない。夕食までには帰ると言っていたので、陽の高いうちには帰ってこないのだろう。


 というわけで。オムライスの食材を買いに行くつもりなのだけど、食材買って帰るだけならあっという間だ。

 それに、オムライスは仕込み含めて手早く作れる料理だし、尚更時間が余る。


 普段買い出しする時は、姉さんアキヒロの誰か一人は最低でも一緒だったし、ウィンドウショッピングしながら楽しく買い物してたんだよね。


 まあ要するに。ひとりぼっちは少し寂しかったので、


「サチさん、せっかくだから、2人でお買い物しよっか?」

「えっ、私と?」


とお誘いしてみた。


「お〜、いいじゃんいいじゃん、2人っきりでお楽しみしてきなよ〜」

「え、え?」

「さっちゃ〜ん……ごにょごにょごにょごにょ〜……」

「っ!? な、なるほど、そうね……ゆ、優輝さんっ私で良ければ付き合うわっ!」

「うん、サチさんが良ければいいよ?」


 パフィンさんがサチさんの耳元で、小声で何やらアドバイス?していたようだけど……サチさんいきなり元気いっぱいになったけど、何て言われたのやら。


「あ、せっかくだから、待ち合わせしましょ。場所は……学園都市なら……やっぱり、駅前広場が定番かしら」

「うん? 寮から一緒に行けばよくない?」


 普段は、最初から連れ立って動いてるんだけど。


「え、ええとね……友達と待ち合わせって、なんか憧れてたのよ。その、私の性格のせいか、友達が今までいなかったし。そっそれと、駅前で待ち合わせって、なっなんか、デ、デデデ……な、何でもないわ」


 顔を赤くして、その話を打ち切るサチさん。デデデ……なんだろ、アニメかなんかのキャラで、そんな名前のがいたような。


「待ち合わせかあ。確かにそういうのも面白そうだね。いいよ、駅前広場ね」

「……ありがとうね、我儘聞いてくれて」

「ふふっ、気にしないでよ」


 とまあ、サチさんと駅前で待ち合わせてのお買い物の経緯は、こんな感じだった。

おまけ・ごにょごにょの内容


パフィン

「デートだよ〜、もっと仲良しになるチャンスだよ〜」

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