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38話 キングのファンにからまれた

ちょっと風邪気味で先週投稿出来ませんでした、あらためて申し訳ございませんでした。

気をつけていてもひくときはひくので、みなさまも十分お気をつけ下さい。

「当時あのように言っていましたが。瑞希さんは優輝さんの恋人について、現在どうお想いですか?」

「ちょ」


 蒼月さんに、唐突にイジられ始めた。


「私の考えは何も変わっていない。当時の予想通り、優輝が選んだ恋人は素晴らしかったさ」

「ですか……ふふっ、ですよね」

「ちょ、ちょっとストップ! やめてよお〜」


 顔が真っ赤になっているのが、鏡を見なくてもわかる。うぅ……なんでこんな会話に……


「それにしても、優輝さんはいつまで経ってもウブですわねー。捗ります」

「うむ、最高に可愛いぞ」

「もうっ! この話題はここまで! やめないと、今日のおやつは作ってあげないから!」

「む、それは悲しい。仕方ないな」

「仕方ないですねー。ふふへへっ」

「むー……」


 どうしてこう、2人は僕をイジりたがるんだろう? 昔に比べれば逞しくなった自負はあるんだけどなあ……まだまだ2人には、精神的に敵わない。


「では話題を変えよう。その日の話は区切りがついた訳だが。静海が来るまで、何か面白い事はあっただろうか?」

「えっと、そうだね……んー……」


 日記をペラペラとめくる。


「うーん。しばらくは、特に印象に残ってる日はないかなあ」

「ふむ。要約すると?」

「要約ね。んー……何が美味しかったとか、誰かの反応が可愛かったとか、飯屋峰君が鬱陶しかったとか……あー」


 飯屋峰君の事で、ある事を思い出した。直接彼が関わっている出来事じゃないけど……





      ――――――――――





 学園生活にも慣れはじめた、とある日の事。


(なんで女の子って、連れ立ってお花摘み行きたがるんだろ?)


 とか考えながら、休み時間に1人お手洗いに来た僕。いつもは何故か誰かと一緒に来ていたので、学園での1人用足しは、実質はじめてかもしれない。


 というか、たまたまだろうけど、僕以外に誰もお手洗いにいないのも珍しいような?


「……。小便器、かあ」


 この学園は、更衣室やトイレやシャワー等は、基本男女分けられてはいない。通常時に男女どちらが使うかは生徒が自主的に分けたけど、本来は分けられてはいないのだ。


 つまり。すべてのレストルームに、男性用の小便器が設置されている。


 まあどっちにしろ僕は、個室しか使えないけど……けど。今は、誰もいない。


(使った事、ないんだよねー……い、今なら大丈夫、かな?)


 興味津々、小便器近付い


「……居たわ。やっぱり1人よ!」

「っっ‼︎‼︎」


たところで誰か入っ来たので驚きで体がビクゥン!と震えた。


 慌てて小便器から離れる。ついでに尿意も離れていた。


 あー、ビックリした……やっぱり冒険してみようなんて思うものじゃないね、リスクが大きすぎる。


「あなた、クラスDの水城とかいう娘よね」

「えっあっはい。そうですけど……」


 なんか、不穏な予感……しまった、ドキドキしてて思わず即答してしまった。こういう、見ず知らずの人に名指しで呼ばれた場合、すぐに本人と認めないよう姉さんに言われてたのに。


「……な、なるほど確かに、悔しいけど物凄く可愛いわね……」


 唐突に容姿を褒められた。えっなに、そういう趣味の人?


「っと、そんなことより!」


 ただ感想を呟いただけらしい。


「あなたね⁉︎ キングのご寵愛を賜ったのに、恐れ多くも退けているのは‼︎」


 1人でトイレに来たら、突然女の子が突っかかって来た。


 うーん……キングって言われても。この国は現在王国制ではないし、僕に海外の王族と親交があるわけでもないし……咲さんや父さんにはあるかもだけど。


 と考えていたら、後からもう2人来ていて、3人の女の子に囲まれていた。


最戸さいとさーん、キングじゃわからないかも?」


 ひとりは、僕と同じくらいの身長の、能天気そうな雰囲気の娘。


「キングはキングなんだからキングでしょ!」


 それに対し、最初に突っかかって来た、背が低めの娘(巻さんよりは高いかな?)が反論する。


「王様、の方が伝わる、多分ね」


 最後に、背が高めの少し気弱そうな娘が、補足するようにそう告げる。


 いや、精霊国語に直しただけじゃあ……いや、王様、「王」様か。なるほど。


(飯屋峰 「王」者だから、キングか。彼の知り合いかな。それか、漫画でよくある取り巻き的なヤツか、ファンかな)


 要するに彼女達は、飯屋峰君の求愛を断り続ける僕に文句があって、僕が1人になったのを見かけたので来たのだろう。


(僕に圧力をかけて求婚に応じさせても、飯屋峰君は喜ばないと思……いや、喜ぶか。はあ……)


 とにかく。彼女達が何を言おうと何をしてこようと、僕が彼とお付き合いする事はない。嫌いなくらいだしね。


 伝えるべき事がまとまったので、話そうと口を開……こうとして、一旦やめる。


 雰囲気と表情から察するに、彼女達は、僕がただ単に断ろうものなら、さらに突っかかって来るだろう。特に、最戸さんと呼ばれてた娘は。


 けど僕は、出来るだけ誰とも波風立てずに穏便に学園生活を過ごしたい。だから、友達にはなれなくても、険悪な関係になるのは避けたい。


 友達になれたら、もっと素敵だけどね。


 というわけで。おだてよう。


「もしかして、飯屋峰君の恋人さん達ですか?」

『えっ⁉︎』


 ……今の反応からして、違うのだろう。ということは、やっぱり熱狂的なファンってとこかな。


「いやー、そうだといいなとは思うけど?」

「理想と現実は、だいたい違う、多分」


 2人は苦笑い気味な顔でそう答えたけど、最戸さんは反応がちょっと違った。


「そ、そうみえる? やっぱりそう見える? いやーあなたなかなか見る目あるじゃないってんな訳あるかアンタの方がキングにお似合いよバカヤロー‼︎」


 これ照れてるのか怒ってるのかどっちだろ?


 まあそれはそれとして。今の彼女の反応を見て、僕は素直にこう思った。


「最戸さん可愛い。……あ」

「えっ?」


 内心をついこぼしていた。


 あー……この癖で、ついこの間もサチさんに、


「優輝さんは普通以上に可愛いんだから、もう少し言動に気をつけた方が良いわよ……たまに反応に困るわ」


って言われたんだったなあ。


 この癖について姉さんに尋ねてみたところ、


「優輝は喜怒哀楽の「喜」や「楽」の感情を、無意識に口にしてしまう癖があるぞ。なんだ、気づいていなかったのか」


と言われた。はい、気付いてませんでした。まあ「怒」や「哀」じゃないだけ良いけど。


 なんにしても、姉さんの言からして昔からの癖だろうから、すぐには治せそうにない。とはいえ、もっと気をつけないとなあ。


「ほ、ほんとに? 嘘じゃない?」


 とりあえず、さっきは怒られた?けど、今回は満更でもない反応だから良かった……のかな?


「えーと……気をつけてはいるんだけど。僕、たまに思った事がつい口にでちゃう事があるみたいで。今のは本心だよ」


 秘密がバレないようにするための嘘やはぐらかしは、たまにするけどね。でも基本、嘘は嫌いだし、出来るだけ本音で語りたい性分だ。


「あー、うー……あ、ありがと」

「ふふっ、どういたしまして」


 顔を赤らめ視線をそらし、悩ましげにうめく最戸さん、可愛い。もしかしてこれが、ツンデレキャラに萌える人の感情なのかな?


「ってそうじゃなくて!」


 突然我に返ったかのようなハッとした顔になり、後ろの2人に振り返る。


「ど、どうする? 予想と違うどころか普通以上に良い娘で反応に困るんだけど⁉︎」

「王様が本妻にする宣言したから、意識高い系かと思ったのにね? 私も、文句のひとつくらいは言おうと思ってたけど、完全に毒気抜かれちゃったし?」

「私、最初から乗り気じゃなかったけど、うん」

「でも、キングの求愛を袖にしてるのは事実でしょ? ここで引き下がったら、本校に入学出来なかったキングファンクラブの会員達に申し訳が立たないわ!」

「まぁ、それは同意かな?」

「そう言われると、仕方ない、気もする」


(内緒話のつもりなのかな、全部聞こえてるんだけど)


 一応、ツッコまないでしばし待つ。


 ていうか、彼のファンクラブなんてものがあるのか。漫画やラノベにもオレ様系キャラっていなくならないけど、やっぱり需要があるんだね。


「とりあえず、一発ガツンといってみるわ!」

「おーガンバってねー?」

「気をつけて、やり過ぎは、禁物」

「ふふんっ、任せなさい!」


 うーん。会話の内容的に、まだ突っかかって来そうだ。どうしたものかな。

ちなみに、背が高めの彼女が言っている王様のアクセントは、


王↑様↓


です。……この表現で伝わっているか自身ありませんが、一応。

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