2話 自己紹介
「ふむふむ……こうして名前を見ていると、なんとなく思い出せなそうな気がしてくる」
「どっちなのさ」
姉さんが、日記に挟まっていたクラスDの生徒名簿的な紙を眺めながらつぶやく。
「うーむ。出席番号1番は、女の名前のようだが」
「男の子だよ」
「なんだ男か。まあ正直、クラスメイトは優輝以外、アキとヒロくらいしかよく覚えていない」
「もう3人は覚えてて欲しかったかな……」
――――――――――
「俺の名は天井 氷。こんな名字だが俺自身はそれ程甘くはないぞ……名前の通りクールな男ではあるがな。好きなものは自分を高みへと導いてくれそうなモノ探し、だ。くくっ……これからよろしく」
ちょっと痛々しい感じの男の子からなのが先行き不安だけど……生徒側の自己紹介が始まった。
「出席番号2番っ海老江 茜葵です!」
元気良く紹介を始めたのは、先程ネイ先生に積極的に質問していた赤髪右サイドテールの女の子だ。
「体を動かす事が好きです! あと美味しいものが好きです! それでえーと……あっ趣味は運動と料理です! みんな、これからよろしくねっ!」
おっ……趣味、食べるじゃなくて料理なんだ……うん、後で話しかけてみよう。
「く、鯨井 大、です……私なんかが本校に通えるだなんて、夢のようです。アキちゃんみたいにはいかないけど、その……がっがんばりましゅっ!……ぅぅ〜……」
噛んだ。可愛い。
「えっと、あとは……す、好きな事は、食べることです。こ、これからよろしくお願いします……ふぅ」
言い終え、ホッとした表情で胸に手を当てる、というか乗せる……ふむ。
食べる事が好きと言われてから鯨井さんを見ると、健康的な範囲だけどぽっちゃり体型かもしれない。
「鯨井さん胸デカイな〜」
「っ‼︎」「むっ」
男子のちょっとデリカシーに欠ける台詞に、鯨井さんは顔をかあっと赤くし、海老江さんがその男子を睨みつける。
そういえば、さっき鯨井さんアキちゃんって言ってたし、2人は入学前からの友達のようだ。
「うっ……ごめん」
海老江さんの睨みに、さすがに気まずくなったのか謝る男子、というか鯨井さんの次の出席番号の男子だった。
「はいはい次の方、自己紹介どうぞ〜」
その男子の自業自得だからか、容赦なく急かすネイ先生。少し申し訳なさそうな顔で黒板前に向かうセクハラ男子。
「ええと……佐藤 真です。俺に本校に行けるくらいの潜在能力があるとは思わなかったので驚いています。せっかくなんで頑張ってみます」
んー、さっきのデリカシーのない発言にしては、無難な紹介かな。
「可愛い女の子が好きです。でも可愛くて巨乳な女の子はもっと好きです!」
鯨井さんに親指を立てながら言う佐藤君。やっぱりデリカシーなかった。
「ひぅっ」
羞恥と若干の恐怖の混じった表情で、ガタッと椅子を鳴らして後ずさる鯨井さん。海老江さんの目つきがさらに厳しくなる。
「あびす!」
すぱぁん! という気持ち良い音が教室に響く。佐藤君が紫がかった黒髪ロングの女子に、手に持った上履きで頭をはたかれていた。というか、佐藤君の後ろの席にいた娘だ。
「色ボケがご迷惑おかけしました、後でキツく言っときます」
ん、こっちの2人も以前からの知り合いっぽい。
「誰が色ボケだよ! 健全な男子として当然の発言だろ!」
「アンタの意見を男子の総意にしない! だいたい初対面の娘に対して失礼でしょうが!」
「お前に男子のおっぱいにかける情熱の何が解る!」
「公衆の面前で声高に叫ぶ事じゃないでしょうこのヘンタイ‼︎」
「男はみんなヘンタイなんだよ‼︎」
なんかドンドンエスカレートしてる……あ。ネイ先生がイラついてる時の笑顔してる。
「はいは〜い痴話喧嘩はそのくらいにして自己紹介に戻りましょうね〜」
「「痴話喧嘩じゃ‼︎ アッハイソーデスネ」」
ネイ先生の笑顔を認識して即静まる2人。
「せっかく前に出て来ているので塩谷さん、そのまま自己紹介始めてください〜」
「は、はい、わかりました。お騒がせしてすみませんでした、私は塩谷 幸子です。佐藤とは……まあ、腐れ縁というヤツです」
塩谷さん、言い争いをした直後にしては落ち着いて自己紹介出来てる。
「実力者ぞろいの本校で学べることを光栄に思います。どこまで自分を成長させられるかわかりませんが、守護者を目指して頑張ります。好きなことは……先生と被ってしまいますが、自己鍛錬です。みんな、これからよろしく」
しっかりと自分の意思の感じる声に好感を持つ。
根が生真面目なんだろうなぁ……真面目すぎるからこその佐藤君との口喧嘩か。
その後、しばらくは何事もなく自己紹介は進んでいった。
登場人物紹介
佐藤 真
容姿:黄茶髪ショート 顔は中の上くらい
身長:168cm
性格:色欲
好物:唐揚げ
嫌い:特になし
趣味:人間観察(可愛い女の子)
属性:風
可愛くて巨乳な女の子大好きと公言する本能に忠実なH男子。一応小さいのも嫌いではない、というかおっぱい全部大好きマン。
栄陽学園を受験したのも、運良く本校に受かればそれがステータスになり、女の子にモテると思ったから。
塩谷 幸子
容姿:紫黒髪ロング お嬢様結び 真面目美人
身長:165cm
性格:強気
好物:オムライス
嫌い:薄味すぎる料理
趣味:自己鍛錬 可愛い小物探し
属性:風
可愛いより美人寄りな真面目系女子。一人称は私。
クラスAに行けたレベルの実力はあるが、クラスDに行く幼馴染の佐藤 真を心配、というより、佐藤が周りに迷惑をかけることを心配してDを選んだ。
佐藤のことは手間のかかる弟のように感じており、現時点で恋愛感情はない。
悪ふざけが過ぎる状況を許せない委員長タイプ。反面、自分は真面目過ぎるんじゃないか悩んだりもしている。
口には出さないが、自分の容姿が一般的に見て比較的良いと自覚しており、容姿に見合った立ち振る舞いが出来るよう気にかけている。ただ、可愛い小物には目がなく、自分に似合っていないと指摘されても開き直るくらい好き。
来週月曜までは毎日投稿する予定です。