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24話 ちょっとしたトラブル(1名瀕死 )

「……咲様いらっしゃったんですか。それは確かに驚きますわね」

「どちらかと言うと、アキヒロにとっての衝撃的出来事って感じだったかな」

「あら、優輝さん的にはそれ程ではなかったんですか?」

「まあ驚きはしたけど……咲さんも家族みたいなものだから、嬉しい気持ちの方が強かったかな」

「ふむ、そうだったか。まあ一応は驚いていたようで何よりだ」


 いつの間にか姉さんがお風呂から上がっていて会話に参加していた……んー?


「……もしかして、咲さん来てるの知ってた? というより」

「うむ。私が計画したサプライズだ」

「あ〜……」


 そういやあの時、中の様子を確認せずに、アキヒロに「良いモノが見れる」って言ってた気がする。


「もう……いじわる」

「ありがとう!」


 ジト目でそう言うと、何故か感謝された。


「さて。思い出話が楽しいのはわかるが、そろそろ良い時間だ。話の内容的に区切りが良いし、今日は解散にしないか?」


 眠そうな顔でそう提案する姉さん。まあ確かに、もうすぐ22時だ。


「じゃあ蒼月さん、お風呂どうぞ。僕は最後で良いから」

「そうですか? ではお言葉に甘えて」

「私はもう寝る……おやすみだ、優輝」


 姉さん、だいぶ眠そうだ。昨日の昼に帰って来て、食事もせずにすぐ眠ったようだし、また数日寝てなかったんだろうなぁ。


 さて。蒼月さんが増えた事だし、明日以降の献立を考え直すとしよう。まずは明朝から……





       …………………………





 翌朝。日課の鍛錬をこなしてシャワーを浴び、朝食の準備を静海に任せてからちょっと外出。

 隣町の美味しいパン屋さんで朝食用のクロワッサンを買って手早く家に戻ると、2人共起きていた。


「お帰りなさいませ、優輝様」

「ん、ただいま〜」

「おはよう優輝」

「おはようございます」

「おはよ」


 焼けたベーコンの良い匂いがする……静海には、2人が起きたら調理始めちゃって良いと言ってあったけど、ほぼ作り終わったみたいだ。残念。


「後はお任せを。優輝様はリビングでお待ちください」

「ん、了解。これパンね」

「畏まりました」


 静海にクロワッサンを渡して、リビングに行く。


「パン屋に行っていたか。隣町のエレモフィラか?」

「そうだよ。1人増えたから足りなかったしね」

「わざわざありがとうございます」

「気にしないでよ、出来立て焼き立てが食べたくなっただけだし」

「確かに、エレモフィラさんの焼き立てパンはどれも美味しいですよね」


 軽く雑談して椅子に座ると、静海がモーニングプレートを運んで来た。


「はー……今朝も美味しそうですねー」


 蒼月さんが若干うっとりな感じの声色で料理の感想を呟く。

 今朝のメニューは、スクランブルエッグに軽く焼いたベーコン、昨夜仕込んでおいたラタトゥイユ風浅漬けを添えて。

 あと、さっき買って来た焼き立てクロワッサン。どれも美味しそう……お腹すいた。


「さて。それじゃあ、いただきます」

『いただきます』





「昨日の思い出話の続きだが」

「んむ?」

「入学日の翌朝、私がいなかった時間に、何があった? まあ言いたくなければ話さなくて良いが」


 あー……そういえば、あの事は姉さんにははぐらかしてたなぁ。

 多分日記に「朝にトラブルがあった」とだけ書いたから、思い出して聴きたくなったんだろうなあ。

 姉さんが問題行動起こさないように、当時は話さないでいたけど……ま、昔の話だし。話しちゃおう。





       ――――――――――





「……し……」


 起きた。見慣れぬ部屋に、知らない天井がどうたら言うなんかの漫画の台詞が思い浮かんだけどベタすぎるので口に出すのはやめた。


(時間は……ん、大体いつも通りか)


 普段は5時位に起きていて、今は5時10分。誤差の範囲だろう。


「んん〜〜ッ」


 軽く伸びをして、ベッドから出る……と、普段ならこの後すぐ姉さんに声をかけるのだけど……今朝はいないので、冷蔵庫に向かい、冷やしておいた水をコップに注いで飲む。


「んく……ふぅ」


 やっぱり寝起きの目覚ましには冷たい水だね……ふむ。んー……


(昔からたまに、朝にいない事はあったけど……新しい環境になって、翌朝姉さんがいないのは、寂しいというかなんというか)


 誰もいない見慣れぬ部屋をさっと見回して、そんな感想を抱く。

 姉さんは昔から天才肌で、何をやっても平均以上に出来る人だった。そんな姉さんは、時折父さんと共に首都の東庵あずまあんへ行き、精霊の研究に関して何やら手伝いをしているらしい。

 そう。していた、ではなく、している。昨日も父さん母さんと共について行ってしまったので、今現在姉さんは寮に、というか学園内にいない。


 精霊研究所で何をしているのか。何度か尋ねた事はあるけど、その都度「流石に優輝でも、国家機密なので答えられない」と言われ、教えてはくれない。

 ……でもまあ多分、姉さんの声の感じから推察するに。国家機密だからというのもあるだろうけど、どちらかと言うと、成果が形になるまで秘密にして驚かせたいのだと思う。


(さて……とりあえず、日課の鍛錬をしよう)


 パジャマを脱ぎ、上は黒のTシャツに深緑のパーカー、下は黒のレギンスに深緑のショートパンツへと着替える。僕の普段の運動着だ。

 最後に髪を梳かして、身嗜みは準備完了。

 ちなみに、髪は纏めない。姉さんがストレートロングが好きだからと言うのが一番の理由だけど、運動してても特に邪魔には感じないからだ。

 詳しい原理は説明し辛いけど、僕の精霊属性が雷属性で、電気を操る力で無意識に髪の動きを邪魔に感じないように操っちゃっているかららしい。

 姉さん曰く、「無意識でそれが出来るのは天才レベルなのでつまり優輝は天才」らしい……守護者を目指して鍛錬は欠かした事はないけど、本当に天才レベルに至っているのかは不明。

 雷属性の人は少ないらしいし、身近な人だと父さんしか比較対象がいないしなぁ。過保護な父さんの言は当てにならないし……





 考え事をしながら移動していたら目的地に着いていた。

 ちなみに、起床ベルが鳴るのは6時だけど、寮案内パンフによると、学園内施設の電気錠の開錠自体は、管理の人が毎日5時半に行っているらしい。


(ふむ……思ったより人、少ないかな)


 日課の朝の鍛錬として、広い場所――つまりはグラウンドに来たわけだけど。僕と同じく起床ベル前に朝鍛錬しに来ている人は、あまりいないらしい……と、知り合い発見。


「おはよー。みんな早いね」


 サチさんにパフィンさん、それと雅が一緒にいた。


「おはよう優輝さん。やっぱり来たわね」

「やっぱりって?」

「優輝さん、自己紹介の時に趣味が自分磨きって言ってただろ? だから来るんじゃないかって話してたんだよ」

「あー、なるほど」

「自分磨きが鍛錬を含むのなら、だけどね。当たっていたわね、くすっ」


 何故か妙に嬉しそうに笑うサチさんに、ちょっとだけドキッとする。サチさん可愛い。

 ちなみに、鍛錬に来ているのだから当然だけど、サチさんも雅もジャージ姿だった。サチさんはラベンダー色で、雅は黒だ。


「ユキさんも真面目だね〜……ふぁ………」


 そう言い、可愛らしい小さなアクビをするパフィンさん。


「そう言うパフィンさんだって、スポーティーな格好で来てるじゃない」


 パフィンさんの今の格好は、白のタンクトップにピンクのパーカー、黒のレギンスにピンクのショートパンツ、と、僕と色違いな感じの組み合わせだ。


「う〜……いちお〜約束しちゃったかんね〜……」


 確かに、サチさんとそんな口約束をしていた気がするけど。それでも、ものぐさな感じのパフィンさんが早朝鍛錬に付き合うのは、やっぱり意外だ。


「昨日、寮の部屋に向かう時に判明したんだけどね。私とパフィンさん、相部屋だったのよ」

「そんでまぁ……逃げようがなかったとゆ〜か……」

「……なるほど」

「でもよ、軽い口約束だろ? それに、相部屋だからって付き合わないといけないって訳じゃないし。パフィンさんいいヤツだな!」

「んまぁ、なんての? せっかく友達んなれて、しかも偶然だけど相部屋にもなれたし? その〜……仲良くしたいじゃん……あ〜もぅ恥ずいコト言わせないでよマミヤ〜」

「俺は別に、恥ずかしがる必要なんてないと思うけどなぁ」


 テレテレな顔でそう言うパフィンさん。恥ずかしさを誤魔化すためか、雅に猫パンチをペチペチ食らわせ始めた。可愛い。


「さっさて! せっかく早起きしたのに雑談ばかりしてたら意味がないわ。鍛錬しましょ?」


 そう促すサチさんだけど、顔がにやけている。パフィンさんの台詞が相当嬉しかったようだ。可愛い。


 さて、確かにサチさんの言う事は最もだ。時間は予定通りに使わないとね。




 約50分程一緒に鍛錬をし、時刻は6時半。サチさん達と食堂で会う約束をしてから別れ、自室に戻る。

 朝の食堂開放時間は過ぎてるけど、やっぱり汗を流してサッパリしてから食事したい。

 玄関の扉を閉め、お風呂に直行する。着替えは……まぁ後で良いや、誰もいないし。

 ……とまあ、ここで油断したのがいけなかった。



 10分程だろうか。ゆっくりシャワーを浴び、良い気持ちでお風呂場を出る。身にはバスタオルを巻いているだけ。


「む、出たか」

「へ?」


 ……誰かいる。そういえば玄関に鍵、掛けてなかった……何にしても、無断で勝手に入って来た事に変わりはない。

 姉さんは昼まで帰ってこないから違うし、そもそも声的に男だし。キッチン辺りにいるのか姿は見えないけど、こんな事をする男は1人しか思いつかない。


 こちらに歩いて来る気配、そして姿が見え


「ギニャアーーーーーーーーーー‼︎‼︎」


「ヌワアアアバババババババババ‼︎‼︎」


 こちらのバスタオル一枚というあられもない姿を認識される前に男――飯屋峰君に電撃を放っていた。無意識だから加減出来なかった気がする。

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