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23話 世界の守護者

「あっそだ! 咲様、友達の1人があなたの大ファンなんです! 会ってくれませんか⁉︎」


 咲さんと知り合いになれてテンション上がってる感じだけど。やっぱりアキは、友達思いの良い子だ。

 それはともかく。アキは雅の事を言ってるんだろうけど……


「あら、嬉しいわね。ああ、さっき寧が言っていた男の子かしら? ええ、構いません――」

「咲さん、構ってください」

「あらあら、やっぱりナデナデ続けて欲しく――」

「そうじゃなくてですね」


 うーん、まったくこの人は……母性に溢れてるのは良いし、謙虚なのも素敵だけど。自分の知名度の高さをもっと気にして欲しい。


「咲さんは守護者なんですよ? そんな咲さんが、守護者候補ばかりの栄陽学園の学生寮に今来ているなんて知られたら、大騒ぎになっちゃいます」


 雅は天然だ。言いふらさないようキツく言い聞かせても我慢が出来るかどうか。


「……確かにそうね。茜葵さん、申し訳ないけれど」

「あーいえいえっあたしもそこまで気が回らなくてすいませんです!」

「な、なんか、守護者も大変そうですね。色んな事に気を使わないといけないなんて」

「確かに大変に思う時もあるわ。有名人になったせいで、自由に動き回れない時があると特にね。けれど、守護者になる事を選んだのは自分の意志ですし……魔神から皆を守る力を得られたのだから、そんなのは些細な事ですよ」


 咲さんからこんな感じの台詞は何度か聞いた。その度に思う。


(……僕もこうありたいなぁ)

「おぉう……さすが守護者」

「ほわぁ……す、素敵」


 どうやらアキヒロも僕と同じ気持ちを抱いてくれたらしい。凄い嬉しい。ネイ先生もご満悦なドヤ顔してる。


「咲さん、そろそろ移動した方が良いんじゃないですか?」


 母さんが部屋の時計を見ながらそう告げる。どうやら、単に僕らにおめでとうを言いに来ただけじゃなくて、用事の途中で立ち寄った感じらしい。


「あら残念、時間切れね。もっとお話ししてたかったのだけど」

「咲殿、これから首都に?」

「ええそうよ。正確には明日の朝に用事があるんだけど、前日にちょっとした打ち合わせがあってね」

「そうですか、お忙しい中ありがとうございます」


 そう言って少し頭を下げる姉さん。


「はい、ナデナデ〜。瑞希さん、入学おめでとう。あなたの事だから心配はしていませんけど、あまり周りを巻き込まないようにね?」

「わかっております」


 ……この状況で恥ずかしげもなく咲さんにナデられに行った姉さんは、双子の姉ながら大物だと思う。


「さて。名残惜しいけれど行ってきます。みんな、仲良く頑張ってね」


 姉さんをナデナデしていた手を下ろし、笑顔で僕らに手を振りながらベランダ窓へ歩いていく……ん?


「あれっ咲様何故に窓に?」


 まあ当然の疑問だよね……そういえば、玄関に咲さんの靴はなかったな。


「先程優輝さんが言った通り、私は守護者なので、普通に寮内を歩いたら騒ぎになってしまいます。なのでこの部屋には、行儀が悪いですがベランダから入らせていただきました」


 寧に言われて仕方なくね、と付け加える咲さん。


「はあ、そうでしたか……いやいや、夜とはいえそれはそれで目立ちませんか?」

「大丈夫ですよ。一瞬なら誰かまではバレません」

「一瞬? ……ああ、なるほど」


 ベランダでブーツを履きながらそう言う咲さん。


 ちなみに、咲さんはいつでも着物にブーツだ。戦闘スタイル的に、足元がガッチリしていて頑丈なブーツの方が動きやすいかららしいけど、本人は着物に合った履物、草履や下駄の方が好きらしい。

 僕としては、着物にブーツってなんか格好良くて好きなんだけど……まあ今は置いといて。


 頭にハテナを浮かべているアキヒロを置いて、咲さんがブーツを履き終える。


「改めて、行ってきます。入学して嬉しい気持ちはあるでしょうけど、夜更かししないようにね」


 振り返ってそう一言残し、ベランダの外に顔を向け、左目を隠している黒い布眼帯をサッと撫でる。


――キンッ


『っ‼︎』


 咲さんが、精霊剣の力を僅かに発動させた感覚。僕らは昔から知っている気配だから驚きはしないけど、さすがにアキヒロは驚いたのか、息を飲む気配を感じた。


 咲さんは足にググッと力を込めて、その場で跳躍してベランダの外へと躍り出た。その際、鉄製の重いものを落としたかのようなゴッ! という音と、窓をビリリと震わせる衝撃が発生した。


「ってここ3階! ……あーでも咲様なら大した問題でもないか」


 アキがちょっと驚いたように騒ぎそうになるけど、飛び降りた人が超人なのを思い出しすぐ落ち着いた。


 ちなみに、この寮は三階建てで、階数毎に1学年の生徒が割り振られている。今年の1年生は3階だった。で、2階が2年生で1階が3年生だ。


「素敵……スゴイスゴイ素敵っ! とっても優しくてとっても強くてっそのっなんだろ⁉︎ カッコいい‼︎」


 アキが落ち着いたのとは対照的に、ヒロは興奮を抑えきれないと言った感じではしゃぎだした。

 子供みたいにぴょんぴょん跳ねて喜びを表現するヒロ。その際重そうな胸部がユサッユサッユサッ――いやいやダメダメアレを見続けるのはイロイロと毒だ、それにヒロになんか申し訳ない。


「ほう……あの娘、鯨井さんだったか」

「はい親父殿。気づかれましたか」

「うむ。どうやら力の片鱗を感じただけで、咲殿の存在力の程を見抜いたようだな……将来有望だな」

「そうですね」


 姉さんと父さんが、ヒロを見ながら何やら評価?している。ヒロの観察眼の鋭さの話だろうか?





 その後、ヒロの興奮が落ち着いてから解散した。本音はもう少しお喋りしていたかったけど、もう21時近かったし、仕方ない。


「そいじゃまた明日〜! 優輝の料理の腕は昼間に確認済みだけど。お昼ご飯、期待してるからねっ!」

「わ、私も優輝さんの手料理、楽しみにしてます!」

「ふふっ、あんまりハードル上げないでよ」

「台詞の割には自信満々だねぇ、にゅふふー」

「それはまあ、好きだからね」

「す、好き……あっ、りっ料理のことだよねっ」

「……ヒロ?」

「な、何でもないよ? 勘違いなんてしてないよ?」

「……ほうほう」

「も、も〜アキちゃん! 早くお風呂行こ!」

「そだね〜。お風呂でゆっくりじっくり聞かせてもらおっか〜」

「だから違うの〜! あっ帰り際にまた騒いじゃってごめんなさい!」

「ふふふっ、気にしないでよ。じゃあ、またね」

「はい、またです優輝さん、瑞希さん」

「うむ、良い夢を」

「ほい、良い夢を〜!」


 結局アキは、1日の終わりまで終始元気いっぱいだった。

 そんなアキから元気を分けてもらった感じで、色々あった1日だったけど、僕はとても爽やかな気分で今日を終えられそうだった。ヒロも多分、毎日そうなんじゃないかな。


「うむ。良い友を得られたようだな、優輝、瑞希」

「うん、そう思う。僕には勿体ないくらいにね」

「見ていて飽きない2人だな。他の連中もだが」

「あら、あの娘達以外にも友達が出来たのね」

「そうだね。予想以上の人数出来たよ……ほとんど女の子なのが若干悲しい気がしなくもないけど……」

「しかも何故か美少女揃いだな、優輝。ふ、まるでラブコメ漫画のようだな」

「ふふふ〜、そうですね〜不思議ですね〜。まあそれだけ優輝さんが魅力的ってことですかね〜」

「「うむ」」まあ、優輝だものね」

「う、う〜ん」


 なんか変な納得のされ方して、ちょっと戸惑う。家族のみんなには何が見えているんだろう。


「とはいえまあ、さすがに優輝程の美少女はいなかったが……いや。1人を除いて、か」

「ほう。瑞希が認める程の優輝に並ぶ美少女か。興味深いな」

「月影ちゃんの事だね」


 ……そんなこんなで。何故か寮の部屋で始まった家族との団欒は、日付が変わる時間位まで続いた。







登場人物紹介


珠洲野守すずのもり さき


容姿:藍色髪ボブカット和服布眼帯 母性系美人

性格:善

好物:南瓜の煮付け

嫌い:特になし

趣味:世界の平安維持

属性:地


 水城家のご近所さんで、この国、そして星の守護者。

 普段は水城ズの実家がある鷺宮村で暮らしているが、守護者なので定期的に魔神の封印地や守護省(日本の防衛省的な組織)を行き来している。

 右目を黒い布眼帯で覆っているが、これは神話級精霊剣の力を隠すための精霊具であり、病気を患っているとかではない。

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