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15話 入部試験的な

「ね〜ホントにスイーツ作れる人いないの〜?」

「部長は大衆食堂系、自分は漬物専門と先程から言っていますぞ。それ程甘味が食べたいなら入部して自ら作ればよいのですぞ」

「え〜、めんどくさい〜」


 えーと、確か彼女は……パルフェ・キッシェンさんだったかな。


「スイーツと漬物? また妙な対決だね」

「どっちも美味しいから大丈夫だよ」

「何がどう大丈夫なのかしら……」

「んう? お〜水城さん達じゃん。ナニナニ〜、料理部見学?」


 キッシェンさんがこちらに気付き、ゆるゆると手を振る。

 ゆるくウェーブのかかったボブくらいの長さのピンク髪が目を引く、ゆるふわな雰囲気の子だ。

 ゆるふわ系というとネイ先生を思い出すけど、キッシェンさんは、なんというか……やる気が感じられない。現に今さっきめんどくさいとか言ってたし、料理部には姉さんやヒロと同じ理由で訪ねたようだ。


「期待は出来ないと思っていたが……やはり食べるのが目的か」

「別に悪いことじゃないじゃん。先輩達だって、食べるために料理するんっしょ?」

「まあそうだが……はぁ。食べるためなのは当然だが、料理を作る楽しみというものがあってだな」

「めんどくさ〜い」「同じく」「わ、私は食べる係がいいです」「レトルトカレーならよくやるっす」

「君達もか……はぁぁ〜……」


 キッシェンさん、姉さん、ヒロ、雅の台詞に深いため息を吐く桜部長。


「あ、あなた達ね……」

「まぁまぁサチさん。部長さん、僕とこっちのアキは、料理が趣味で入部を前提で見学に来ました」

「YES!」

「お、おお‼︎ そうかそうか! だよな、みんながみんな食い専じゃあないよな!」


 少し涙を浮かべて何度も頷く桜部長。そこまで感激されるとちょっとムズムズする。


「部長、ちょいとお待ちを。以前料理好きを騙る女子が作った見た目だけの料理モドキ、自分は忘れもしませんぞ!」

「む、それは……ぐっ、思い出しただけで気分が」


 ……どうも、過去の入部希望者が作った料理で酷い目にあったっぽい。


「いやしかし、あれは例外中の例外だろう」

「かも知れませぬが、念には念を、ですぞ」

「うむ……まあ、そうまで言うなら」


 あー、この会話の流れは。


「すまないが、料理が趣味だという君達2人の腕前が知りたい。あり合わせ食材で簡単なもので良いから、一品作って欲しい」

「ですよね。了解しました」

「えっ料理していいの? お〜なんかワクワクして来た! 何があるかな〜」


 早速僕らは調理室にある食材を探し始めた。





 というわけで、見つけた食材の確認です。


「調味料はわりと充実してるね。食材は……卵、玉葱、三ツ葉。それとパンの耳、かな」

「あからさまにカツ丼の残り物って感じだね〜」


 さて。食材的にすぐ思いつくのは卵とじだけど……チラッとキッシェンさんを見る。


「3時半……3時半まだ〜……?」

「まだ2時10分よ」


 テーブルに突っ伏してたれていた。どこかの癒し系キャラっぽくてちょっと可愛い。


「ねえアキ。部長さん、「一品作って欲しい」としか言ってないよね」

「んにゅ? まぁそだね……ふみゅ、なるほどね〜」


 僕の視線を追って、意図を悟るアキ。


「でね、材料的に……だから……と、……を作ろうかなって。アキは作ったことある?」

「……は何度もあるよん」

「じゃあそっちは任せるね」

「まっかせなさい! ……後でレシピ教えてね〜?」

「ふふっ、勿論。アキの方も、僕の知ってるレシピとは違うかもだから、教えてね」


 あぁ……友達と、料理の会話が出来てる。それだけで凄い楽しい。


「どうやら作るものが決まったようだね」

「はい。それでですね……完成したら部室に運ぶので、そちらで待っていていただけますか?」

「自信ありそうだね。では期待して待たせてもらうよ。とはいえ、君達はまだ部室の場所までは知らないよね。南君、君を案内もかねてここに置いていくが、いいかな?」

「了解ですぞ!」


 南君て誰の事かと思ったら、副部長さんか。よく考えたら、まだ副部長の名前聞いてなかった。


「え〜移動すんの? めんど〜……塩谷さん、おぶってってよ〜」

「なんで私が……」

「こん中で1番背高いから〜」

「身長なら桜部長さんの方がよっぽど高いじゃない」

「ぇえっ、僕かい⁉︎」

「初対面の男子に自慢の柔肌密着させるほど、アタシは安くないも〜ん。部長カノジョいるっぽいし〜」

「というか、小さい子供じゃないんだから自分の足で歩きなさい」


 雑談しながら調理室を出て行くみんな。楽しそうで

ちょっとさみしい。


「さぁさ、何を作るつもりか知りませぬが、期待を裏切らぬように。ですぞ!」

「はい、頑張りますね」

「ほいほ〜い」





「さっちゃ〜ん……後何分?」

「約25分ね」

「あとちょっと……あとちょっ」「しつこいこれで何度目だ鬱陶しい」


 扉越しに話し声が聞こえてきた。キッシェンさん、待ってる間にサチさんの呼び方変わってるし。


「出来ましたぞ〜!」


 南副部長が部室の扉を開けて開口一番そう告げる。


「スイーツ……スイー……んうっ‼︎ スイーツが近くに⁉︎」


 僕らが部屋に入った瞬間、甘い香りに反応してキッシェンさんが跳ね起きる。目をキラキラ……いや、ギラギラさせて周囲をぶんぶん見回す。


「ああ確かに、あの食材ならお菓子系もアリだね」

「イヤ〜部長、女子力の高い調理風景で、自分若返った気分ですぞ」

「……あれ、副部長さん2年生っすよね? 俺達と1歳しか違わないんじゃ」

「自分を年寄りだと思い込んでいる漬物中毒者なんだろう、察してやれ」

「へ〜、そんな病気もあるのか」

「マミヤ君、適当な冗談信じないの。瑞希もあんまり適当――」「スイーツ! スイーツプリーズ‼︎」

「うわ」


 キッシェンさんのスイーツジャンキーぶりにちょっと引く。ゆるふわカワイイ系だった彼女はどこ行ったんだろう。


「あはっキッシェンさんそんなにスイーツ大好きなんだ? お菓子系にして正解だったね!」

「う、うん、そだね」


 彼女の状態異常っぷりを見ると本当に正解だったのか疑問を感じてきた……あーでも、今作って来なかったら食堂で似た状態になった恐れもあるかな。


「パフィンちゃん気持ちはわかりすぎるけど落ち着いて! えっとえっと……そうだ。は、はやく落ち着かないと、その分スイーツ食べるの遅れるよ?」


 珍しく?ヒロがなだめに入った、というかヒロもキッシェンさんを愛称で呼んでるし。僕らがいない間にだいぶ仲良くなったらしい。


「うぇっ⁉︎ ヤダっそれヤダ‼︎」


 彼女は正気に戻った! 多分。


「パフィン君が落ち着いたところで。何を作って来たのかな?」

「はいは〜い! 私が作って来たのはー……これですっ! じゃん! パン耳ラスク〜!」


 アキがもったいぶった感じでパン耳ラスクを披露する。可愛い。


「わぁ! おいしそ〜!」

「あ、やっぱりかぁ。アキちゃんのこれ大好き〜」

「あれ、ヒロは何作るか予想ついてたり?」

「違うけど……扉開けた瞬間、アキちゃんがよく作ってくれたパン耳ラスクっぽい香りしたから」


 また匂いだけでわかったらしい。まあアキとは友達歴長いっぽいからわかるか。


「私が、ね。じゃあ優輝さんは別に?」

「サチさんなかなか察しがいいね。僕はこれだよ」


 僕はもったいぶらずに出す。アキがちょっと不満そうな顔だけど気にしない……アキみたいな出し方はちょっと恥ずいし。


「お〜、なんかカワイ〜! 何これ〜!」

「パフィンちゃん、これは焼きメレンゲだよ」


 ヒロが即答える。正解だけど……パン耳ラスクはともかく、これも見る前からわかってた感じだよね。匂いだけですぐになんの料理かわかるらしい。


「食べていい? 食べていいっしょ? クワセロ〜」

「はいはい、逃げないから。どうぞ召し上がれ」


 じりじり迫るキッシェンさんに焼きメレンゲが入った深めの器を差し出すと、ひょいぱくと素早く口に放り込む。


「んふ〜! さくしゅわでふわあま〜♪」


 擬音系で感想を出された。可愛い。


「…………」

「ヒロ、無言で見つめられるとちょっとこわいよ。遠慮せず食べていいよ?」

「で、では遠慮なく、いただきます」


 なぜか顔を赤らめ、かしこまってひとつつまむヒロ。僕なんか変な事言ったっけ?


「私もいただくわね。ん……なるほど、確かにさくしゅわと言った感じね。それでいて甘すぎなくて爽やかで……美味しいわねこれ」

「ふふっ、ありがと」

「このほのかな酸味、レモン汁入れてるね」

「うん、正解。というかヒロがさっきから確信こもった喋りしてて別人みたいに見えるんだけど」


 料理部来てからヒロのキャラがちょっとおかしい。


「んう〜! こっちもおいし〜! カリサク〜♪」

「バニラオイルとかあったら、もっといい感じになったんだけどね〜」

「うん、素朴な感じで良いね」

「緑茶が欲しくなりますぞ」

「ん〜、どっちもうまいな。2人共料理上手だな〜。俺レトルトしか料理出来ないから、尊敬するわ」

「それは料理とは言わないわよ……うん、ラスクも美味しいわ。趣味と言うだけあるわね」


 両方共に好評みたいだ……よかった、一安心。


「やったね優輝っ大成功〜!」

「ふふっ、そうだね」


 アキと笑い合いハイタッチする。


「ああ、良いな……最高に良い」


 まだどっちも口をつけてないのに、姉さんがため息混じりに感想を呟く。


「何が良いのかあえて聞かないけど……早くしないとヒロとキッシェンさんに食べ尽くされちゃうよ?」

「む、そうだな」


 こうして僕らは、みんなでお菓子を存分に楽しんだ。人数が人数だけに、すぐ無くなっちゃったけど。





       ――――――――――





「……何故私はそこにいなかったんでしょう?」

「蒼月が料理部見学をしなかったからだろう?」

「くっ……愉悦顔をしないで下さい」

「蒼月さん、僕の焼きメレンゲ食べたことなかったっけ? なんなら今から作ろうか?」

「私が悔しく思ったのは優輝さんが間違いなく素敵な表情をされていたのにそれを見逃したことです‼︎」

「ああ、そっちか……じゃあ焼きメレンゲはいらないんだね?」

「欲しいです」

「ん、了解です」

「優輝様、お手伝い致します」

「ありがと静海。じゃあとりあえず、オーブン熱しておいて」


 思い出話を一時中断して、現在の僕もお菓子作りを楽しんだ。







登場人物紹介


パルフェ・キッシェン


容姿:ピンクボブ緩いウェーブ 若干ツリ目 ゆるふわ

身長:153cm

性格:怠惰

好物:甘いもの

嫌い:センブリ茶

趣味:スイーツ食べ歩き

属性:風


 あまりやる気を感じられない怠惰系ゆるふわ女子。一人称はあたし。

 栄陽学園本校を卒業出来れば、就職しなくても国から定期的に給付金を貰えると知って入学した。将来働かないために現在働く道を選んだ努力型ニート。

 やる気は低いが潜在能力は高く、怠惰な性格を表に出していなければクラスS行きだった。

 甘味に満たされてさえいれば水城ズに迫る実力を発揮することもある、条件付き天才。



みなみ ごう


容姿:赤黒髪ス◯夫ヘアー

身長:155cm

性格:漬物

好物:漬物

嫌い:特になし

趣味:漬物

属性:水


 料理部副部長。2年クラスB。一人称は自分。

 漬物大好き。少し態度が偉そうだが基本小物。

キャラ名に関して


パフェ=パルフェ

キッシュ+クーヘン=キッシェン


合わせてパルフェ・キッシェンです。

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