12話 部活勧誘……勧誘?
「うーん。こうやって思い返してみると、入学初日が1番なくらい……なんていうか、濃いね」
「ふむ、そうかもな」
「色々な方に出会う日ですからね。そう思うと……私にとってかけがえのない1日だったかもしれません」
「ところで、昼休憩が終わったところまで話したが。次は部活見学だったか?」
「うん、そうだね」
――――――――――
「はいはい〜お待たせしました〜。みなさんそろっていますね〜? 校内自由行動の時間です〜。校内ならどこに行っても構いませんが、先輩方が部活案内していますので、部活棟を覗いてあげてください〜」
他のクラスの人達が出払ったのと入れ替わりでネイ先生が戻って来て、今後の説明を始めた。
「4時半にここ、食堂の同じ席に集合ですが……ふっふっふ〜。なんとっ、今日は特別に、3時半から食堂でケーキとお茶が無料で振舞われちゃいます〜」
「わ〜いやった〜‼︎」
アキが喜びの叫びを上げる……うん、アキだけだ。他のクラスの担任の先生が説明してるのが聴こえてたので、当然アキも知っているはず。ノリがいいなぁ。可愛い。
「自由参加ですが、とってもおいしいので、甘いもの好きの方はぜひ来てください〜。ではっ解散で〜す」
さて。僕らも例に漏れず部活見学に行く予定だけど、その前に。
「雅は部活見学どうするの? 僕ら4人はみんな同じところで決まっちゃってるんだけど」
「え、マジか〜。俺は剣術部に行こうと思ってたんだけど。みんなは?」
「料理部!」
アキが元気良く答える。
「そういえば優輝さんとアキ、2人共料理が趣味って言ってたしな……ちなみに残り2人の理由は?」
「優輝の料理が好きだからだ」
「アキちゃんの料理が食べたいからです」
「2人は料理作れないのか?」
「優輝に作ってもらいたい」
「食べる係の方が好きです」
「……嬉しいような、悲しんだ方が良いような」
「嬉しいんならいんじゃない?」
「うん、まあ、美味しいって言ってもらえるのが嬉しくて料理好きになったから、良いけどね」
「へ〜、そうなのか。優輝さんは可愛いな。そういうとこ好きだわ」
「ありがと雅」
「あれ……なんだろ、なんか負けた気がする」
何故だかアキに悔しそうな顔をされた。さっき自分は狼狽えちゃったからかな? 恋愛に関してはウブらしい。アキ可愛い。
……まあ僕も、漫画や小説で得た知識程度だけど。
「それでどうする? 雅も来る?」
「う〜ん、料理部か。なんか女子ばっかりいそうで肩身狭くなりそうな気が」
「あっそれって偏見だよ〜? 料理男子って結構いるんだから!」
「レストランのシェフなんか、男の方が多いしね」
「学食の料理長さんも、だ、男性だったよ?」
「あ〜、言われてみれば……そうだな、みんなが行くんなら、せっかくだし俺も行くか」
「やった。あーでも、無理言って連れてくみたいで申し訳ない気がするし、先に剣術部行こうか。みんなどうかな?」
「優輝がそうしたいなら問題ない」
「あたしも別にいいよん」
「わたしの武器、棍なんだけど……行っても良いのかな?」
「見学なんだし、気にしなくていいんじゃないか?」
「そ、そっかな? うん、そうかも」
「ん、決まりだね。じゃあ、剣術部に行ってから料理部で!」
そう言う流れで決まった。
「ところで瑞希さんや」
「なんだ?」
「優輝とマミヤ、なんかいい感じじゃない?」
「そうか?」
「そういえば雅の好きな食べ物聞いてない気がする。なにかある?」
「肉だな」
「もっと具体的に言ってよ〜」
「そう言われてもなぁ。肉料理全般だよ」
「ハンバーグとか、豚カツとか?」
「そう、牛丼とか鳥唐揚げとかな」
「ふふっ、野菜も食べなよ?」
「にゅふふ〜。いい雰囲気だね〜」
――――――――――
「ち、ちょっとストップ」
「ん、どうした?」
「ヒソヒソなに話してたかと思えば、そんな内容だなんて……いやまあ、そういう話しちゃダメってわけじゃないけど……」
「なら問題ないな」
「あるってば! 本人に言うことないじゃない! なんかすっごいムズムズする!」
「優輝が聞きたいと言ったんじゃあないか」
「う、そうだけど……もう、姉さんのイジワル〜!」
「ふへへへっ」
「ちょっまたいつの間に……ビデオ撮らないで〜!」
「こんな可愛らしい優輝さんの表情、映像に残さない方が罪ですわ〜♪ ああ〜新作のインスピレーションがわいてわいてふふへへ」
「…………。いい加減怒るよ?」
パリっと小さく放電して警告する。
「あら怖い。優輝さんが可愛すぎるのがいけないんですよ?」
笑顔でなんか自分勝手な言い訳しながらささっとビデオカメラを隠す蒼月さん。データ消去して欲しい、けど悲しい顔されるしなぁ。
「後で見せてくれ」
「ええ、勿論です」
……やっぱり消してもらおうかな。
「はぁ……まあいいや。とりあえず、僕が恥ずかしくて辛くなる部分は置いといて。学園生活中、特にアキのそういうお節介とかなかった気がするんだけど、あの後どうなったの?」
「ああ、それなら――」
――――――――――
「うーん……えっとね、アキちゃん。雅君はよくわからないけど、優輝さんは雅君に恋愛感情抱いてない気がする、かな」
「ふみゅ、観察眼に優れたヒロが言うとなると……姉さんの意見は?」
「同年代の男子の友人が出来て、相当嬉しいのだろうな。村の男は年上か年下しかいなかったからな」
「へ〜……なら変に気を使わない方がいいか」
「うん? アキ、なにが?」
「いんや、なんでもないよ? それよりちょっと出遅れてるし、部活棟に急ご〜!」
「うっわ、すっごい盛り上がってる〜!」
「多いな……まるで祭りだな」
部活棟1階は、さっきとは打って変わって人で溢れかえっていた。情熱って凄い。
「すっ、すごい逸材が塊でキター‼︎ あああなたたたちっ誰か1人でもいいからうちに来てぇ‼︎」
入って早速勧誘を受けた。演劇部だった。目が血走っててちょっと怖い。
「すいません、もう入る部活決めてるんで」
「せめて見学だけでも! 体験だけでもっ! 本番ないからっ‼︎」
「部長それ違う意味に聞こえるんでやめて下さい、というか逆効果まっしぐらなんで落ちろ♪」
近くにいた演劇部員らしき長身の女子に平手打ちされる小柄な演劇部長。
「あうちっ! もっとぉ! じゃなくてなにするのよ!」
ちなみに、女性口調だけど部長は男だ。女形かな?
「ドン引きさせちゃってごめんね。それで、演劇に興味は?」
「見るだけなら」「同じく!」「わ、わたしもです」「どうでもいい」「天然のお前には無理って言われたことあるっす」
「部長、彼女達はダメです」
「そのようね……はあ〜」
わざとらしくがっくり肩を落として離れて行く演劇部長。途中チラッとこっちを見たけど無視する。
「それにしてもこの人の量は……目的の部があっても、あ、漫研。探し出すのも一苦労だね」
「ヒロ、しっかり手を繋いでてね〜って痛い痛い強く握り過ぎぃ!」
「あっ、ごめんアキちゃん!」
「へ〜、ヒロって意外と力あるんだな。そういうのなんだっけ。ギャップモエか?」
「それはちょっと違うかな……剣術、剣術……ん、あれは射撃部。姉さん、剣術のあと覗く?」
「優輝が行きたいならな」
「オッケー、興味ないんだね」
「そ、その一言だけで通じてるんだ」
「ふふっ、まあ双子だからね」
「……なんかいいね、そういうの。双子かぁ」
「そういえばアキ、双子と仲良く――」
「優輝、剣術部あったぞ」
「え、どこ?」
人混みに気を付けつつ雑談していたら、姉さんが見つけていた。
「結婚を前提にお付き合いして下さい!」
「ちょっ、先輩⁉︎ 何言ってるんですか⁉︎」
たどり着いた先で、塩谷さんが告白されていた……え、なにこれ。




