この町には星が降る
額に乗ってる冷たいタオルが体温をスーと下げて夏の暑さを忘れさせてくれる。体かだるい、頭がクラクラする。ひとりぼっちの部屋では空虚感に襲われる。逃げようにも逃げる場所が無い。「ムカつく」自分に向かって放った言葉が消えずに部屋に残り続けている。この言葉に逃げるようにカオルは額に乗ってるタオルをどけ、ふらついた足取りで縁側に座るとフーと長い息を吐いた。
自転車を漕ぐサトシに太陽が容赦なく降り注ぎ、顔に汗が滲んでいた。蝉の鳴き声が鬱陶しい。
漕ぐたび汗が出てきて目に入ってくる。
「これだから夏は嫌いだ」
サトシがあぜ道を自転車で駆け抜けながら呟くように放った言葉は広い田んぼへと消えていった。後ろを振り向くとトシヤが真新しいロードバイクにまたがり後ろからついてくる。
「おーい、もうちょっとスピード落としてくれよ」
トシヤが息を切らしながら叫ぶとやっとサトシは自転車を止めた。
「なぁ、サトシ、そろそろ、行き先ぐらい、教えてくれよ」
話すのさえつらいトシヤは体全体で息をしながら聞いてきた。
「1週間後に流星群がやって来るのは知ってるか?」
サトシは汗だらけなのだが、息が全く切れてない。
「うん」
トシヤは呼吸を整え静かに返事した。
「それと何の関係が?」
まゆを潜めながらトシヤがサトシの目を見ると
「あの、丘の上に建ってるあの洋館見えるだろう?」
サトシの指差した先には白い壁の洋館が遠くポツンと建ってる。
「あの洋館から流星群を見ようと思ってな、あそこからなら町も一望出来るし、星を近く感じれるだろ」
「でも、人がいるかもよ」
トシヤが心配そうな顔で見つめる。
「大丈夫だって、もし見つかった逃げればいいしな」
サトシが自信満々答える。