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月に祈る

作者: 夏村響

彼には何もなかった

富も、地位も、権力も、

人より偉くなってやろうという、人間らしい欲望さえも


人は彼を馬鹿だと笑った


成るかどうかも判らない夢を見続けるだけの彼を

『天性の才』そのものを越えようとする彼を

努力によって奇跡を起こそうとする彼を


ある日、彼は神と会った

神は彼そっくりの声で言った

「お前を連れて行ってやろう。

決して涙を流すことのない楽園に……」


彼は神そっくりの声で答えた

「やなこったい!」


そして、彼は淘汰される



楽園に行くことを拒み、神に嫌われた彼は

あえて地を這った

彼は翼ではなく足で歩むことを

自分の生まれたこの世界、この時代を生きることを

自分の意思で選んだ


彼は相変わらず、嫌われながら、笑われながら

今もこの世界のどこかで祈りを捧げている


どうか、どうか、わたしの愛する人たち

愛しえない人たち、そのすべてが

幸せになれるよう、やさしくなれるよう……


わたしの愛するこの世界で自分の成すべきことを成すために、

そして、それが誰かのためになりますように

心より、心より……



彼の祈りが聞こえますか?





書類を整理していたら昔、書いた詩が出てきました。

これを書いた時、何を思っていたのか……。考えると恥ずかしいですが、今の自分にはもう書けない文章です。読んでくださった方が、何かを感じ取っていただければ幸いです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なぜでしょうか…… 私も切ない気持ちになってしまいました。 そして、思わず三回ほど繰り返し読んでしまいました。
[良い点] なんかせつないが、よくわかる。
2017/11/03 10:28 退会済み
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