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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第四章 最終決戦月面戦争 新帝都
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 37 彼の境地


新キャラが登場!ヒント!伊吹は何処の国の王子に当たるか!?そして新キャラと仲良くなる緑珠!そして、伊吹の複雑な境地……!新たな展開が、千年怪奇譚を迎える!

一行は、特に何事も無く戦場地帯を潜り抜けた。近くに大きな城壁が見えている。


「お、おぉ……大きいわね。」


「そうだねぇ。来るのも久しぶりだね……。」


真理がしみじみと呟くと、更に見るのもおぞましいらしく、身体をどんどんすぼめていく。


「……麗羅の情報伝達システムで僕の噂がバレないように取り繕うの、大変だったなぁ……。」


馬車の中、イブキはすやすやと胡座をかいて寝ている。それを見ながら緑珠は申し訳なさそうに呟いた。


「……イブキ、無理させちゃったわ。……ううん、正しく言うと、無理しかさせてないわ。何時かちゃんと恩返ししたいの。せめて、戦闘が無ければ良いのだけれど……。」


「っ、くそっ!何だこいつ!」


緑珠の儚い思いが実るかと思いきや、案外そういうのは思い通りにならないのが常である。緑珠は男の叫び声を聞いて、窓から声の先を覗く。


「いや、別にオレは倒したい訳じゃっ、うわぁぁぁ!」


中々チャラそうな男が、大きな糸切り鋏をぶんぶんと振り回している。……多分、糸切り鋏の使い方はそうではない。


「と、兎に角オレは皇子に会いたいッス!通すッスよ!」


「皇子?元皇女なら居るけど……。」


「緑珠、それ笑えない。」


真理の苦々しい一言に、目を開けたイブキが煩わしそうに眉をひそめている。モアが三人へと言った。


「す、助太刀を頼む!」


「という訳よ、行きましょうイブキ!」


「うえぇ……嫌です。」


珍しくイブキが駄々を捏ねると、緑珠は不思議そうに彼を見つめる。


「あら。何時からそんなイケナイ子になってしまったの?」


「僕は元からイケナイ子です。兎に角出たくありません。だって、其奴は……。」


イブキの言葉が紡がれる前に、チャラ男の声がかなり遠くの馬車まで届く。


「おおっと!その糞生意気で誰の言うことも聞かない愚図で聡明な声は!」


「散々に言われてるよ?最後褒められてるけど。」


「……。」


一気に色々蹴飛ばすと、男は……よくよく見たら鬼だったが、鬼はイブキの側まで駆け寄る。


「やっぱり皇子じゃないっスか!もうどれだけ探した事か!浄玻璃鏡じょうはりきょうで探しても見つからないし、地道に聞き込みして……頑張ったんスよ!」


イブキは心底機嫌が悪そうに足を組むと、自身に向かって膝をついている鬼を見下ろす。見下くだす。


「伊吹殿下!嗚呼、我等が皇子うげぇっ!」


「……何用ですか。」


イブキはそう言いつつもチャラ男の顔を踏んずける。緑珠がそれを慌てて制止した。


「まぁイブキ!駄目よ、そんな事をしては!」


「うぶぶぶぶ、うぶぶ。」


「何を言っているのか良く分かりませんね。お久しぶりです、彪川ひゅうせん。」


ぐりぐりと鬼の顔を下駄で足蹴にしながら、イブキはしみじみと呟く。そして、軽く蹴り上げた。


「ひ、酷いですよ伊吹皇子!」


「僕は皇子等と呼ばれる者ではありません。土に還りなさい。あと鬼違い……人違いですよ。」


「其処まで口を滑らしたら終わりなんじゃない?」


真理が変わらず突っ込むと、緑珠はしみじみと考え込む。


「地獄からの使者……うふふ、面白い事を思いついたわ!」


「何ですか。」


イブキはじっとりした目で緑珠を見つめる。


「これが本当の『お迎え』ってね!あはは!」


「上手いこと言うっスねぇ!お嬢さん!」


「でしょー?」


きゃっきゃうふふにはしゃいでいる彪川と呼ばれた鬼と緑珠は笑う。


「「いぇーい!」」


二人は手を合わせて楽しそうに叩くと、イブキは真顔で言い放った。


「あの、お二人共、宜しいですか。」


「なぁに?イブキ。」


「……全く面白くないです。」


「うぇぇ〜?皇子ノリ悪いですよ……!」


それよりも、とイブキが彪川へと注意する。


「僕に尊敬語を使う暇があったら、その傍に居る方に使いなさい。僕より偉い人ですよ。」


「嫌よ、イブキ。昔の事じゃない?」


「ケジメははっきり付けておいた方が宜しいかと。」


少し呆れたイブキの表情を見て、緑珠は彪川へと自己紹介をする。


「……ま、あの子が言ってる事だし、ご挨拶するわね。私の名前は蓬莱 緑珠。……昔は蓬泉院 緑珠李雅なんて名乗ってたけど。案外、名前って不便ねぇ。」


彪川が緑珠の顔をまじまじと覗く。


「ほ、蓬泉院って……月の帝国の王様と同じ名前……しかも、緑珠李雅……て……!」


「あはは、吃驚した?現在亡命中でぇす!もう追っかけてくる人も居ないのだけれどね。野放しの『なよ竹の輝夜姫』、ってとこかしら?」


緑珠はおちゃらけて彪川へと言うと、彼の顔が花が咲いたように笑顔になる。


「お、お久しぶりです……懐かしい……こんなに大きくなられて……。」


「ちょ、ちょっと待って下さい!え?会ったことが、あるんですか……?」


傍でそれを聞いていたイブキの目が、見開かれる。見開かれると言うよりかは怨念が篭っているように見えるが。


「有りますよ、皇子!オレはこの人に『贈り物』を渡したのです!」


「おいおい、ちょっと待ってくれよ。話しがついていけねぇ。其処にいる奴は、鬼なんだよな?」


イブキのアイコンタクトに彪川は応じて、モアへと挨拶する。


「鬼ッス!彪川って名前っス!伊吹殿下をずっと探して居たんッス。見つけられて、本当に良かったっスよ。……ええと、貴女のお名前は?」


モアは彪川の一通りの身の上を聞いて、此方もとばかりに笑顔で返す。


「私の名前はモア。モア・アルシャリア。アルシャリア商会の会長の娘。私は運送業をしてる。宜しくな、彪川。」


「宜しくッス、モアさん!で、皇子!おねが」


「嫌ですよ。僕はまだ地獄に逝きたくないですもの。」


「まだ全部言ってませんよ!殿下!」


緑珠が城門に向かって歩いて行くのを見ながら、イブキは彪川へと言った。


「どうせ閻魔大王が仕事しなくなったんでしょう?それで僕に押し付けてきた、と。」


「違いますよ!……まぁ、そうですけど……。」


「其処はせめて否定して下さい……。」


呆れ果てているイブキに、彪川は元気よく詰め寄る。


「だって貴方は常世ノ国ノ第一皇子!殿下以外に大王を継ぐ者は居ません!」


「はいはい。それで……第一皇女には会ってきたんですか?」


イブキが第一皇子とあれば、第一皇女と言うのは言わずもがな、彼の妹、華幻になる。


「はい!会って来ました!いやぁもう、お可愛らしくなられて……。」


「あ?」


「……皇子って、家族の事が嫌いだと言う割には兄弟に優しいですよね。」


突然のイブキの牽制に怯む彪川。


「気のせいじゃないですかね。」


殺伐とした雰囲気を消し去ると、入国の準備が出来たらしく、門が大きく開いた。モアが国へと入って行くさなか、彪川へと問うた。


「なぁ、『贈り物』の話をしてくれよ。人外が子供達が何を贈るか知りたいんだ。今後の商品陳列の参考にしたい!」


にこにこと笑う元気なモアに、彪川は少し申し訳なさそうに語る。


「そうッスね……人外は、自分の子供達に『物質的な』贈り物は贈らないんス。」


「確か……もっと不確定な物を贈るのよね?」


緑珠の返答に、彪川は全くその通りだと頷く。


「そうです。殿下は『誰にも引けを取らない聡明さ』を、緑珠様は『苦しんだ倍の幸せが来る』という物を。」


「……それ、言ったら効能無くなるんじゃありませんでしたっけ。」


あ、と言う言葉も上げずに彪川の顔は真っ青になった。其処で彪川の弁明が始まる。


「え、うん、いやでも、殿下はもう充分聡明ですし、それに、緑珠様も……。」


幸せが顔に溢れかえっている緑珠を彪川は眺めた。


「……充分、幸せそうですね。他人が言えたことじゃない気がしますが。」


「ま、伊吹君の場合は小賢しいと言う方が正しいかもね?」


「はったおしますよ。」


じろり睨んだイブキを見て、真理は一気にはやし立てる。


「わー!怒ったー!こわぁぁい!」


「皇子と仲が宜しくて本当にオレは嬉しいですよ!」


「仲は良くありません。」


「照れてるんでしょ?もーやだなー!」


それを聞いて彪川と真理を殴り飛ばしたイブキを他所に、緑珠は見慣れない町に驚きを感じている。


「街並みが凄いわね!タイルもこんなにだし、車も馬車もあるわ!」


ぴょんぴょんと跳ねている緑珠をモアは少し楽しそうに見つめる。


「楽しそうでなによりだ。一応この国は文明が発達してるからなぁ。だが、少し霧が濃いような……気のせいか?」


活気溢れる街並みは、今までの国とはどれもとも違う。活気が溢れているのに、何処か静けさが漂っている。ショーウィンドウには様々な商品が並んでいるが、そのうちの一つに彼女は目を奪われた。


「わぁ……これが、ドレス……。」


「ドレス、着たことが無いのか?」


ふわふわのリボンが沢山ついた紅のドレスは、緑珠の視界満杯に入っている。


「着たことはあるのだけれど……余り似合わないと言われてしまって……。」


緑珠は苦笑いをすると、モアは店の看板を見上げた。店名の隣に、『リンテージ商会』と記されている。


「『リンテージ商会』か。布地や化粧品、服飾が専門の商会だな。此処の商品は最高だぞ?色んな貴族にも販売して……。」


「り、『リンテージ』……。」


きらきらと目を輝かせていた緑珠の目が一瞬で曇ると、言葉を紡ごうと思った矢先に、幼い子供の声が聞こえる。


「まぁ!私達の商品を見ていて下さったの?有難う!」


緑珠が振り向くと、緑のフリルが溢れんばかりに付いているドレスを着た少女が居た。


緑のシルクで覆われたボンネットが可愛らしい。ボンネットからは髪が溢れているが、之がまた珍しい。緑の瞳に、モノクロの髪のツインテールが、これまた緑のリボンと仲良くしている。


「えっと……。」


モアが言葉に詰まっているのを見て、少女はドレスの裾を摘んでお辞儀をした。


「ごめんなさい、紹介が遅れましたわ。こんにちは。私の名前はシャルロット・リンテージ。」


「……『シャルロット』?『フローレンス』では無いの?」


緑珠の眉間に皺を寄せた一言に、シャルロットの顔が輝く。


「まぁ!お姉様の名前を知っているのね!そうよ。私はフローレンスお姉様の妹なの!どうぞよしなに。」


遠回しに勧誘を受けている緑珠達に、救いの手が差し伸べられた。


「こんにちは、可愛らしいお嬢さん。」


「あら、こんにちは。ふふふ、可愛らしいなんて!どうも有難う!」


イブキがシャルロットの勧誘を軽く撥ね付ける。


「僕達は行かなくてはならない所があるのです。」


柔和な笑みを浮かべ (中身はどうだか知らないが)るイブキ。するとシャルロットは悟ったのか、


「ごめんなさいね。行く場所があったのね。王子様も居たのね。それではまた今度!さようなら。」


そして、緑珠の隣を横切った瞬間だった。


「また今度ね、緑珠李雅様。」


「……っ!」


緑珠は瞳孔を散瞳さんどうさせると、横切っていくシャルロットを眺める。


「どうされましたか、緑珠様?」


「……へっ……あ、あぁ!ごめんなさいね、助けてくれて有難う。」


それでもまだイブキの返答にうやむやな緑珠を、怪訝そうにイブキは見つめる。


「……本当に、大丈夫ですか?」


「え、えぇ……大丈夫よ。気にしないで。有難う。」


モアが緑珠とイブキの一部始終を見届けると、見計らって説明する。


「荷物は全て屋敷に届けておいた。この国に滞在中は其処に泊まれば良い。……女皇様曰く、最近大変だったんだろ?ちょっとくらい観光したり、ゆっくりしても良いんじゃねぇのか?」


緑珠は今までの事を思い返していた。そう言えば、まともに観光なんかしていない。


第一の国では人の恥を晒したり、第二の国では闘技場に行ったり。果ては邪魔が入って月の国に戻ったりした。


「……そうね。ゆっくりしても、良いかもね……。」


それを聞いたイブキが、考え込んでいる緑珠へと言った。


「緑珠様、一人で行きたい場所があるのですが……お暇を貰っても宜しいですか?」


緑珠は顔を上げると、イブキの珍しい提案に許可を与える。


「構わないわ。何時も頑張ってるものね。行ってらっしゃい。」


少しだけ、ほんの少しだけ寂しそうな緑珠の表情を読み取ったのか、イブキは優しく笑った。


「直ぐに戻ってまいります。」


「それじゃあお暇とは言わないわ。でもまぁ、楽しんでいらっしゃい。……彪川は?」


緑珠はきょろきょろと辺りを見回すと、イブキが苦く言い放つ。


「どうせ彼奴はどっかから出て来ますよ。気にしないで下さい。」


そのままその場所を笑顔で離れると、雑踏に溢れた街を突き抜けていく。


此処は先進国だ。何処の国でも『それ』はあるが、先進国のはきっと多いはず。


『それ』、の前にイブキは立った。








次回予告!


伊吹の心の中に渦巻く独占欲の渦。そして、それに目をつけた彪川の闇。緑珠の希望の声。そして起こる異変!まだまだ続いていく千年怪奇譚!

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