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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第四章 最終決戦月面戦争 新帝都
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 26 『 』の出現

自分の思いを抱えた緑珠。そしてそれを支える伊吹。関係を眺める真理。緑珠は一行と合流するが、またもや大波乱の幕開けが起こる……!

「っ!何でこんなところに!」


「そこまで怯えなくても宜しいじゃありませんかねぇ、『人の顔が見えない』緑珠様?」


冷泉帝のその一言に、緑珠は足を掬われそうになる。声を出そうにも声が出ない。出るのは喉を掠る息だ。


「は、ひ、あ……。あ、あ、何で、何で貴方が私の出生について知ってるの!?それに、私の『目』のことも!教えなさい!」


叫び倒す緑珠を他所に、冷泉帝はさも当たり前の様に言い放った。


「緑珠李雅様の出生については、まだ私の口からは言えませんねぇ。」


緑珠はその顔に苛立ちを感じて反論する。


「ふざけないで!どうして私達が産まれる前のことを貴方が知ってるのよ!」


先程までは愉悦に浸っていた冷泉帝の瞳が、一気に冷たいものになる。


「そんな事どうでも宜しいじゃありませんかねぇ?今は。それよりも、その目のことがバレたらどうします?」


「ど、どうしますって、どうしますって、私は……。」


どうしても、どもってしまう。否定の声が上げられない。


「バレたく無いんでしょう?バレてしまえば何を言われるか分かりませんからねぇ?」


「う、う、あ……。」


冷泉帝が近付いて来るのを、緑珠はおずおずとしてしか後に下がれない。


「やめて、やめてよ、お願い……。」


緑珠は半泣きになる。自分の考えもぐちゃぐちゃだ。その刹那だった。冷泉帝が今最も感じたくない、世界で一番嫌な殺気が来る。


「チッ、この気配は……。」


冷泉帝が身をかわすのと、室内廊下の美しいステンドガラスが飛び散るのが同タイミングだった。その相手に、冷泉帝は憎まれ口を叩く。


「随分と遅めの登場ですねぇ?黄泉院 伊吹殿?」


「……ヒーローは遅れて登場するって文言もんごん、知ってます?」


半泣きの緑珠の前には、緑珠に怪訝そうな顔持ちで見ているイブキが居る。


「だから絆されるなって言ったじゃないですか。」


「うー……ひっくっ、……だってぇ、」


ぼろぼろと涙を零しかけた緑珠は、軽く嗚咽をあげながら涙を拭いた。


「言い訳は無しです。……とにかく此処を突破しましょう。」


しかし、緑珠は周りの気配、風を読んで言った。何処か血腥い。


「……無理よ。この……嵌めたわね、冷泉帝!」


拳を作った緑珠の前、冷泉帝は二人を冷嘲しながら、まるで先生の様に話し始める。


「鵺の姿には諸説がありますが……主に言われているのは二つ。」


「何を言い出すのかと思えば……一つ目は、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇。文献によっては胴体については何も書かれなかったりしますが、胴が虎で描かれることもありますね。」


緑珠は鵺の説明をイブキと同じように続けていく。


「ほら、もう一つは……背が虎で足が狸、尾は狐になっていて、さらに頭が猫で胴は鶏って書かれた資料もあったわね?」


まるで正解だと言わんばかりに、冷泉帝は頷いた。


「そうですねぇ。矢張り貴族の一員だけはある。……それでは、頭は人、躯は人、足は人、尾が人の生き物は?」


「……は……?」


緑珠は冷泉帝の背後にいる『大量』の『それ』を漠然とした気持ちで見ていた。


「本当に悪趣味ですね、貴様は。」


嫌悪感を剥き出しにしたイブキが一言物申す。


「独占欲剥き出しの莫迦よりはマシかと思いますがねぇ?」


「僕も死体愛好家ネクロフィリアの貴方よりは随分と良い方だという自覚はあります。」


「どっちも同じだって言ったら?」


緑珠はイブキと冷泉帝の言い合いにサラリと入る。


「「貴女に明日は来ません。」」


イブキと冷泉帝は美しく笑う。それはもう夢みる乙女が見たら卒倒するくらいには。


「そうよねぇ……そうなるわよねぇ……。」


『大量』の、『それ』……言うなれば、鵺の姿に人間を当てはめた、形容し難いグロテスクな生物が冷泉帝の背後には何人?と言うのだろうか。


何体も居る。端的に言うともう色々と大惨事である。


「……何あれ……本当に気持ち悪い……。」


イブキは迫り来る『それ』を見ながら緑珠へと問うた。


「僕と同じスピードで走れますか。」


「何故それを私に聞くのよ?無理に決まってるでしょ。」


「じゃあ、ちょっと我慢してて下さいね。」


「へっ?……う、うわぁ!」


イブキは軽く緑珠をお姫様抱っこすると、迫って来ている『それ』の反対側の廊下へと走る。しかし、『それ』は反対側にも現れていた。


「ど、どうすれば……。」


「イブキ。部屋があるわ。とにかく窓でもあれば出られるでしょう?」


緑珠は近くの部屋を指さす。


「了解しました!」


イブキは扉を開けた。其処には──?


「うう!もう嫌よ、もう嫌ったら!」


「何でこんな悪趣味なのが作れるんでしょうねぇ……?」


大ホールの様な造りがされている建物の中には、死んだ女が服を着せられ踊らされている。しかも、どれも美しい女ばかりだ。


「イブキ!前!前からも来てるわ!」


『それ』の表情が、緑珠の目に映る。


「くそ……!とにかく一度蹴散らせますよ!」


イブキは緑珠へと優しく言った。


「顔を伏せていて下さい。可愛いかんばせが汚れてしまいます。」


緑珠は言われるがままに顔を伏せると、イブキは高く跳躍する。立っていた場所は大量の『それ』……人間鵺で覆われていた。


そのまま片手に持っていた神器を振りかざすと、何体かは内臓を撒き散らして死ぬ。


イブキは観念して大ホールのバルコニー立つ。緑珠が荒らし回っている人間鵺を眺めながら言った。


「流石に……キツいわね。下ろしてちょうだい。此処ならバケモノも来ないでしょう。」


緑珠はイブキと一緒にバルコニーから人間鵺を見る。そして、飾り刀を抜いた。


「一度体制を整えてから下りるわよ。私の固有霊力魔法で何とかしましょう。」


イブキが少し考えながら、彼女の能力に問うた。


「つかぬ事をお聞きましますが……緑珠様の能力、『言霊使役』の能力で何とかならないんですか?」


緑珠は少し不甲斐なさそうに、そして悲しく呟いた。


「全く、イブキの言う通りだわ。……だけどね、私の能力はかなりの霊力を消費するの。あんまり頻繁に使えないのよ。やっと上手くコントロール出来るようになったけれどね……。」


それに、と緑珠は付け加えた。人間鵺の何体かは、人間の剥製を捕食している。アァ、だの、ウウだの、よく分からない声を上げて。ぐちゃぐちゃと肉片を撒き散らして。


「私、王の間に行かなくちゃ。花ノ宮公女が危ないわ。」


イブキが苦い表情を持ちつつ、言いかけた言葉を緑珠はくすくす笑いながら拾う。


「貴方の言いたいことは分かってるわ。『どうして助けるのか?』でしょう?……それは、また今度ね。直ぐに教えてあげる。とにかく今は此処を突破だわ。」


「……了解しました。」


イブキは緑珠を抱えて大ホールの下へと下りる。人間鵺は二人を今にも襲おうと腹を空かしているらしい。


「いくわよ……!叡智飛び交う天穹てんきゅうよ、全てを以て光と為せ。智慧ちえは人が望む至上の宝なり。故に、剣は知恵をもって凋落を示せ!『万物ノ霊長ハ人間ニ非ズ 全テハ知二アリ』!」


半径数メートルの人間鵺は全て飛び散った。が、そうそう上手くいかない。またわらわらと人間鵺が群がって来ていた。


「やっぱりこれじゃあ無理だったわね……。」


二人は背中を合わせながら、そんな呑気な言葉を発した。


「何せ数が多いですから。無理も無いかと。」


「じゃあ二人で倒さなくちゃ、ね?」


イブキはにっこりと、美しく笑った。


「ええ、勿論です。でなければ突破出来ませんからねぇ。」


さぁ、これより始まるは悪趣味な舞踏会。


「さァ、女帝様のお通りよ!道を開けなさい!平伏しなさい!行くわよ、イブキ(my knight)!」


血と腐臭が手を取りダンスする。


「全ては貴女の尊大な御心のままに、 緑珠様。(My princess who belongs to me)。」















大凡おおよそこんなもんかな?」


真理は撤退していく軍隊を眺めながら言った。七風はぱんぱん、と手をはたいた。


「みたいだね、神様。閻魔ちゃんもお疲れ様。」


「ふん、こんなん相手にもならへんわ。」


「お、閻魔ちゃんつよーい!」


「やろー?」


真理ははしゃいで手を叩いている二人を眺めながら…二人という概念が正しいか甚だ疑問だが、二人を眺めながら微笑んだ。


「楽しそうで何よりだよ。」


その声に七風は不思議そうに振り返った。


「ねぇ神様。どうして神様は緑珠を『俺TUEEEE』状態にしたの?別に子孫を使われたことはさ、怒っては無いけどさ。」


「色々便利な要約をしてくるね……そうだな、」


真理は美しい宇宙の蒼色を眺めて、そして七風に言った。


「僕はね、随分と昔に遊び足りなくなって下界に降りてきた、って話はしたろ?」


「ホンマ、あれにはウチもびっくりしたわ。」


閻魔は腕を組んで怪訝そうに真理を見据える。それもそうだろう。


「あはは、そうかもね……最初はね、緑珠を遊び道具にする積りだったんだ。沢山遊べるってね。だけど……正体を見抜かれたんだ。大誤算だったよ。僕の予想を上回った。だって物を見透す慧眼の力なんて、僕は与えてないんだからね?」


七風がギザ歯を見せながら、真理の話をくすくすと嗤う。


「あの子を舐めちゃダメだよ。……と言うよりかは、人間を、ね?」


「全くその通りだよ。僕は少し人間を舐めてた。不完全で遊び相手には事足りないと思ってたからね。まぁ、それで……どうなるか興味を通り越して心配になったから、あの子の側に居ることにしたんだ。」


だけどね、と真理は自分の思いを吐露するように、にこやかに笑った。


「あの子のカリスマ性、と言うのか……人を惹きつける力も気に入ったんだ。それに、国造りなんて楽しそうじゃないか!」


真理は昔日の日々を脳内に巡らせつつ、元気良く言葉を放つ。まるでそれは、人間の様だ。


「本当にね……僕の予想を外してくれた。最初は国なんて滅ぶはずが無かったんだ。伊吹君とも会う予定は無かった。だけど、国は滅んだ。最初は伊吹君の独占欲で国を滅ぼしたのかと思ったけど……違ったよ。国を滅ぼしたのは、緑珠の気持ちだった。」


「緑珠の……気持ち、だって?でもそんな素振りは一つも無かったと思うんだけど……。」


うんうん、と真理は七風の疑問に溢れた言葉を反芻する。


「そうだね。そうかもしれない。けど、緑珠の心の奥底には、ずっと黒い気持ちがあったんだよ。『自分を苦しめる国なんて滅びてしまえばいい』という気持ちがね。本人も認知していなかったみたいだけど、それがどんどんどんどん溜まっていって……彼女の『言霊使役』の能力で、運命を変え、死ぬ人は生きて、生きる人は死んで、出会うはずもない人と出会った。来る予定も無い場所へも来た。」


「あの力は便利やなぁ……ま、使役出来んうちは怖いと思うけどな……。」


少し哀れみのある言葉を出した閻魔の話を聞いて、真理は戦っているであろう二人を思い浮かべる。


「僕は……あの二人の行く末を見たい。」


七風は真理の心底感心した一言を、半ば呆れながら見ていた。そろそろ別れの時間だ。人の世界に巨大な力を持つ人外は要らない。


「神様。君はちょっと学ばなきゃ。人間のことを。気持ちを。知識を。運命の歯車を回し続ける力を。」


「おや、『存在イース』。君は人間に興味が無いんじゃないのかい?」


『存在を司る神』こと蓬泉院 七風は、ちょっぴり肩を竦めた。それはとっても、態とらしくて。


「興味は無いよ。だけどね、見ていると凄いと思う。それだけさ。さぁ閻魔ちゃんも地獄へ帰ろー?」


「そうやな。それじゃあな、神様。元気でなー!」


宇宙を飛ぶ前に、七風は紅い瞳を覗かせて言った。


「ねぇ神様。まだ賽は投げられた(ヤクタアーレアエスト)ばっかりだ。それじゃあね!また会えるはずさ!」


七風は半ば捨て台詞の様な物を言い放つと、宇宙の彼方に消え去って行った。庭園には静けさが残る。


「さ、て、と。伊吹君からの連絡が来るまで、僕は此処にいるとしますか。」











「行けるわ!イブキ!」


「わかりました!」


人間鵺の数はまだ多いが、緑珠の『言霊使役』の能力を使えるくらいには減った。緑珠はイブキの手を掴む。


「手、掴んでてね!」


「えっ!えっ、えっ!?」


イブキは顔を真っ赤にしながら、緑珠の手を掴む。そして緑珠はしっかりと叫んだ。


「『王の間へ飛べ』!」


ふわん、と浮遊感が起こると、人間鵺は失せて、王の間に二人は立っている。そして、其処には──


「花ノ宮王!この事態を一体どう収拾されるおつもりか!」


「北狄の国に異国民を入れさせるなど論外ですぞ!」


「しかも噂ではあの『鬼』を入れたとか。一体どうなさるお積もりですか!」


「わ、わたくしは……そ、んな、どうすれば……。」


人間不信にも陥りそうな言葉を投げかけられている、『表向きの王』は言わずもがな花ノ宮公女だ。緑珠はそれを見て静かに激昂した。


「りょ、緑珠様!抑えて下さい!此処でバレたら面倒なことになります!」


憤怒の表情が押しとどめる事のできない緑珠の腕を、イブキは強く掴んだ。


「嫌よ。それに今更だわ。」


手を払った緑珠はつかつかと花ノ宮に群がっている臣下へと近付いて、


「貴方達、恥ずかしくないの?相手はまだ子供なのよ?自分の出来ないことを子供に八つ当たりして、そんなに楽しい物かしらね?」


花ノ宮を取り巻いていた臣下の罵詈雑言は、今度は緑珠へと向かう。


「何を……!国を追い出された不出来な皇女が!」


「国一つも守れなかった奴が何を言う!衛兵!早く捕まえろ!」


「自分だけはおめおめと地上に逃げた癖に!王妃様は犠牲になったんだぞ!」


「まともに政治も出来なかった愚か者めが!」


「貴様等……緑珠様にそれ以上の事を言うならば……。」


「煩いわよ。全員。お黙りなさい。」


イブキの言葉さえも拒否してしまうと、俯いていた緑珠の瞳が『真紅』に染まる。


「……はぁ。私が今まで頑張ってきたのは一体何だったんでしょうね。」


言わずもがな、緑珠の怒りはピークに達していた。殺気が形を纏って、イブキの頬を傷つける。


「何をっ!」


それでも引かなかった一人の臣下が、緑珠を切りかかろうとする。『真紅』の激情の瞳が、真っ直ぐ臣下を貫くと、相手はあっさり気を失ってしまった。


「教えてあげるわよ、そんな戯れ言を言うのならばね。私達貴族は何も出来なかったわ。『倶利伽羅家と来仙家は悪い家』だの、『国民の期待に応える教育』だの。ねぇ、分かるでしょ!?私達は何も自由じゃなかった!心すらも強要されて、何も自由じゃ無かったのよ!」


自分の思い通りの答えを導き出せなかった臣下の一人が、合図で花ノ宮を取り押さえる。


「う、あ、く、……。」


花ノ宮は声にならない悲鳴を押さえ込んで、腰に刺さっている短剣に手を伸ばす。


「お願い伊吹!花ノ宮公女を助けて!」


「しかし……。」


緑珠は勢いよくイブキの首根っこを掴んだ。其処には先程の激情は無く、只ひたすらに理解して欲しいと言う、願望だった。


「貴方なら分かるはずよ!あの子にはまだ未来がある!私達みたいに対人関係を邪魔されたりしない!私達みたいに、私達の想いを邪魔されたりしない!洗脳されたりなんて、絶対にない!あの子にはまだ輝くばかりの未来がある!私達みたいに間違ったりしないのよ!私も!貴方も!冷泉帝も!天ノ宮公女も!もう誰一人だって間違えたりしない未来が、花ノ宮公女にあるわ!」


緑珠と衛兵を交互にイブキは見つめると、


「……そうですね。……貴女の言いたい事は分からなくも無いです。分かりました。……貴女様の仰せのままに。」


イブキは軽業師の様に跳躍すると、直ぐに側に居た兵士を蹴り上げた。『鬼』からしてみれば、こんなものは造作でも無い。赤子の手を捻る様なものだ。しかし、衛兵を抜けた当の本人の機嫌が悪い。


「何故……助けたのですか……元から自害するつもりで、私は……!」


「別に僕の意志ではありません。ぶっちゃけ貴女が死んでも僕は良いと思ってました。」


イブキは衛兵が完全に意識を失ったかという確認をすると、花ノ宮へと言った。


「じゃあ何故!」


突っかかってきた花ノ宮を、イブキはあっさりと返す。


「貴女には未来がありますから。僕達が歩むことの出来なかった、燦然と輝く未来が。……それに、緑珠様直々のご命令です。自害なんて軽々しく言うもんじゃありませんよ、うら若い花のお嬢さん?」


イブキは余裕綽々の笑みをかます。どうや

ら花ノ宮にとってそれは随分と腹が立つものらしく。


「お嬢さんなどと……私は!」


緑珠は軽くため息をついた。


「からかうのはおよしなさいな。」


「はいはい、わかりましたよ。」


イブキは茶化すのをやめて、緑珠の側へと控える。緑珠は花ノ宮へと言った。


「花ノ宮公女。助けたのだから話くらいは聞いてくれるわよね?」


「うぐっ……まぁ、良いでしょう……。」


緑珠は花ノ宮の苦い顔を見ながら、


「私達を、倒せる様な人間になりなさい。私達が愚かな考えを持った時に、きちんと悪に終止符を打てるような人間に。」


花ノ宮は目を見開いた。緑珠の言っていることが到底理解出来ないのだ。敵ではあるが、別段、殺すべき宿敵ではない。なのに、何故?


「そんな不思議な事じゃないわよ。何時か正義だと思っていたことも、極悪に変わることもある。……その時の抑止力が、貴女よ。」


花ノ宮が俯いているのを無視していると、向こう側から真理の声が聞こえる。


「あー!緑珠!伊吹君!やっと見つけた……!待ってたんだけど待てなくなっちゃってね。何処へ行くつもり?」


緑珠は何時も通りの真理を見て、少し安堵した表情を浮かべる。


「来仙邸へ行きたいの。会いたい人が居るのよ。私の霊力じゃ無理だわ。」


「ら、来仙邸!?どうして我が家に用があるのです?」


花ノ宮は驚愕の声と瞳を緑珠へと向けると、緑珠はさも当然そうに言った。


「何を不思議がっているの?貴女のお姉様にお別れを言わなくちゃ。きっともう、此処に来ることは無いでしょうし。それに……貴女に知ってもらいたいこともある訳だしね。」


少しだけ、誇らしげに笑った。

次回予告!とうとう月面戦争もフィナーレへ!亡国と皇国を巻き込んだ、龍、鬼、鵺、九尾狐の貴族達が末に導き出した結論とは!?乞うご期待!

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