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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第四章 最終決戦月面戦争 新帝都
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 22 血色の列車

紅い軍服をイブキが着たり、とうとう国を落とそうと本気になったり、イブキと倶利伽羅の衝突がおこる!そして、楓とアリアのやり合いもお楽しみに!

ガタンガタンと揺れる電車の中、所々光が車内を揺らす。


「良く動かせたね、これ。本国に止められててもおかしく無いよ?あ、でもあれか。北の要塞に運行許可があるのか。」


「そうだぞ。管制室の方もちょっと弄って来たし、ま、大丈夫だろ。」


帽子を深く被っていたイブキが、びくんと身体を震わす。


「どうしたんだ、イブキ。」


連れて来た番犬二匹を可愛がりながらアリアは問うた。


「……アリアさん、この電車って停める事は出来ますか?」


「出来ない。この電車は北の要塞に本体があるからな。どうした、爆弾か?」


少しおどけた口調でアリアはイブキへと聞き返した。


「火薬の臭いがします。途中で途切れるので、遠いは遠いですが。」


「犬も感じない臭いなのに?」


「僕の五感では余裕で感じる事が出来ますよ。」


「いさぎよーく爆発しちゃう?」


真理は超絶呑気に足をばたつかせている。


「それもありだなー……って、何呑気にしてんだよ!絶対倶利伽羅さんの罠だろ!?」


「そうだよねぇ。伊吹君はどう思う?」


「……すー、すー……、」


「寝てやがるぞ……。」


楓がイブキを二度見した。真理がイブキへと詰め寄る。


「起きて!?爆弾何か分かってる!?」


「爆弾は、爆発による熱や衝撃などによって対象とする生物や物体を殺傷、破壊するための兵器である。一般に、爆薬とそれを装填する容器、信管などの発火装置で構成される。なお、兵器以外でも、発破などの民間利用に用いられる同様の装置を指して爆弾と呼ぶことがある。 (Wiki〇ediaから引用)。」


深く被っていた紅い軍帽をちらと上げて、寝ぼけ眼でイブキは答えた。


「引用元は要らないから!分かってんなら早く起きて!wake up!起きるんだ!」


「軍事利用の面では、特に航空機から投下される航空機搭載爆弾を指して爆弾の語が使われる。他にも爆薬を」


「要らないから!起きろ!」


「……すー……すー……。」


「こうなったイブキはもう無理だぞ。まだ犬の方が役に立つ。」


「君の周りってこんな毒舌しか居ないの、伊吹君?」


真理がしみじみと言うのを他所に、アリアが怪訝そうに腕を組んだ。


「此奴は一応、顔は良い。中身も『一応』伴っている。おまけに軍服と来た。だから昔は一部の女子に王子様なんて呼ばれてたな。」


「こんな王子様居たら俺もう泣いてるぞ?絶対に嫌だな。」


「その『一応』は中身を見たんだね……そして楓君、伊吹君が起きてたら君死んでるよ?」


「アンタの言う通り死んでるな、俺……。」


唸りながら真理は電車を眺める。そして問うた。


「ううん……この電車の走行距離ってどれくらいなの?」


「五百キロはあるかな。大体三時間かかるぞ。あと五十分程で帝都に着く。」


「なら……読み込みには余裕かな?」


「……読み込み?」


トンネルの中に、ライトはキラキラと光る。


「見てたら分かるってことだよ。一応魔法使いだしね。よし、行くよ……。」


真理の両目には、太陽の紋章が起こって。目自体は青く輝いている。


「水の波紋、風の音、木々の揺らめき。この世を創り上げる森羅万象よ。その全ての物に永劫の祝福を。固有魔法『境界の歪曲』」


膝をついた真理から紫色の光が流れて、トンネルを駆け巡る。


「……見えた。『境界結界』!」


一瞬、電車の動きが遅くなる。アリアが犬を可愛がるのをやめて辺りを見回す。


「何だ……これは……?」


カチン、と音がして爆弾が起爆する。しかし『境界結界』と言う魔法のお陰なのだろうか、電車の速さは何千分の一程の遅さまで落ち、その間、爆風は結界で消え失せる。


「すげぇ……。」


電車は元の速さに戻り、その場所を通り過ぎると激しく爆発が起こった。ぐらぐらとトンネルが揺れて、崩れ落ちた石が落ちてくる。


「さぁ伊吹君、起きるんだ。」


結界がイブキの寝ている隣の窓を全壊させると、彼は飛び起きる。刹那、目は見開かれるが、ゆっくりと口がいやらしく弧を描いた。


「やれば出来るじゃないですか。」


その途端、イブキの周りに剣が生える。真理は優しく微笑んだ。


「……はいはい、さっさと仕事しますよ。言われなくても。」


面倒臭そうに起き上がると、それに、とイブキは付け加えた。


「良いタイミングで起きました。……全員伏せろ!」


イブキの声に反射的に全員伏せると、程なくしてバババ!と銃弾が壁にめり込み、壁に新しい模様を作る。


「いやぁ綺麗な模様が作れたねぇ!」


真理はとんでもなく呑気な声を垂らしながら、楓はライフルのスコープを覗く。


「やべぇな。向こうの線にぎっしり兵士が詰まってらぁ……おっ、と!」


弾丸をギリギリで楓はかわす。ぴゅ、っと血の筋を頬に作った。


「うーん……きびしーなー……此方も弾幕作れねーかなと思ったが。」


「こう派手にやられると私も無理だ。犬も役に立たない。」


「アリアのは基本隠密だろ。遠距離は厳しいだろ。」


「僕も無理ですねぇ……。」


「そう言いつつ僕の顔を見ないでくれない?」


「いやだって期待の的ですし。当てる様の。」


「そんな期待の的とか嫌だ。」


そう言いつつも真理は楓と場所を変わって楓のスコープを覗いた。


「根気で結界張るぞ……!来い、『境界結界』!」


車体に刺さるはずだった弾丸は結界に飲み込まれ、水の様な波紋を作る。


「『境界結界』……凄いな。」


アリアが物珍しさに目を見張る。怯えていた犬も直ぐに元気を取り戻した。真理は自慢げに言った。


「『境界結界』はね、何もかもを飲み込む結界なんだ。解き放つ力もあるんだけどね。」


イブキが目を細めて電車の先を眺める。光が溢れて、最終決戦月面戦争の幕が上がる。


「まもなくですよ。恐らくこのトンネルを出たら攻撃は激化する。」


「お約束だなー!」


楓が身体中の拳銃に全弾込める。その中にはライフルも数種入っていた。


「軍隊か……久々だな。まぁ今回は一人多い。仕事も省けるだろう。」


「期待されちゃってるなぁ……。」


そして、闇の帳が上がり、光が煌めいたと思うと──


「うっひゃぁぁぁぁ!当たんなー!」


キュンキュンと銃が唸りを上げて、結界を貼っていない反対側の車両を穴ぼこだらけにしている。


「ちょっと厳しいけど頑張るよ!『境界結界』!」


両側を電車に囲まれて、絶えず銃声は鳴り止まない。新帝都の影が見えた。


「帝都までにはカタをつけます。楓さん、射撃を。真理は……。」


「僕も射撃するよ。しっかり掴まってることだな、軍隊さん。僕に勝てるなんて思わないでくれよ……!?」


真理は目玉が埋め込まれた青い宝玉の杖を取り出すと、一振りする。アリアが目を見張った。


「何故……創造神の所有物をこの魔法使いが持っている?おいイブキ、説明しろ。」


気まずそうに、イブキは武器を担ぐ。


「えー、あー……み、見りゃ分かるじゃないですか……緑珠様は信じておられましたけど……僕にはどうにもこうにも……。」


にっ、と真理は自慢げにイブキに振り返って笑う。


「どう?これで信じてくれた?」


「……信じない訳にいかないでしょう。神の所有物は、魔法使いにはコピー出来ない。認めますよ、創造神。」


楓はスコープを覗いて、ゆっくり、しかし的確に相手を撃ち抜いていく。撃ち抜くと言っても、麻酔弾だが。


「北狄なんぞに鉛玉食らわすこと自体が愚かしいんだよなぁ……。」


ぱす、ぱす、とサイレンサーを着けて発砲するたびに、ぐわぁ、だとかうぉぉ、だとか言う悲鳴が聞こえる。アリアが暗器を仕込み始めた。


「次に電車同士が近付いた時に、楓が襲撃していた方を襲撃する。イブキは反対側に行ってくれ。」


「了解しました。……番犬は?」


「連れて行く。もう半日も飯を食べさせていないからな。」


アリアは帽子を深く被ってにやっと笑った。真理は一旦攻撃を止めて、不思議そうにイブキへと問う。


「半日?それくらい大丈夫なんじゃないの?」


イブキは電車の敵を見ながら言った。


「北の城門には、『番犬担当』と言う部署があったんです。ですが、この『番犬』は……新陳代謝がとてつもなく良い。毎分毎時間何か食べていないと持たないんです。ですから、何でも食べる。故に、人肉でさえも。」


「その割には僕達を無闇に襲ってきたりしないよね?」


イブキがちらりとアリアを見ながら答えた。


「恐らくアリアさんが居るからでしょう。居なければ僕等は皆食い物ですよ。」


ふわぁぁぁん、と電車は鳴って、アリアは電車の上へ乗る。そして飛び乗った。踊る様に短剣は舞い、鉛玉は飛ぶ。


「おー!……すっごい。それじゃあ僕も行っちゃおうかな。」


真理は移動魔法を使うと、アリアとは反対側の車両に飛んで行く。


「え、僕と楓さんで此処を死守するんですか?無理ですよ!って行くな!んな無茶苦茶な!」


イブキは冷たくなった気配を読む。向こう側からだ。しかも、この気配は知っている。


「……この……この気配は。」


所変わって真理。


「撃て撃て撃て!」


バババババ!と真理を蜂の巣にすべく銃が発砲される。真理は青い宝玉の杖を取り出すと、一瞬だけ相手を怯ませる。真理はにっこりと笑った。


「良かったねぇ、良かったねぇ。死んでしまう前に僕(神様)を見れて。……まあ君達は死にはしないが。」


宝玉は煌々と煌めいて、真理は固有魔法を発動する。


「僕は神様。僕は創造神。世の覇王にあり。大君の名よ。えへへ、凄いでしょ?僕、固有魔法が二つあるんだよ?君達を、殺しはしない。『存在』が元より滅するだけだ。」


じゅどん、じゅどん、と魔法弾が援護に付くが、真理には全く効いていない。


「それじゃあ、いくね。永遠に闇の中を彷徨うがいい!『全てを創造する魔法』!名前そのままなのがとてつもなく解せないけど!さぁ、『存在』よ、滅却しろ!」


まるで其処には元々何も無かったように、銃が転がるだけだった。辺りは静まり返っている。


「よしよし!仕事完了!久しぶりに力を使ったけど、相変わらず絶好調!」


頬を刺す痛みがして、真理はその方向を眺めた。痛みが殺気だと言うのを感じるのに暫くの時間を要したが。


「何だこの殺気……戦争でもこんな殺気、感じたことないぞ……?」



所変わってアリア。


くるくると回って、刺す。単純だが、完璧に遂行しなければ、此方が殺られる。次の車両で拳銃を向けられ、天井と地面を駆け回る。鉛玉が足を掠めた。


動けなくなった兵士を、番犬達は的確に襲っていく。と言うか食べている。


「くっ、!」


殺られる、と思った瞬間、なにもしていない相手がばたばたと倒れる。向こうの車両に居た楓がぐっ、と手を出した。少し肩を竦めて先を急ぐ。


「多いな……っ!」


無謀な敵をやりくりするが、やはり数は暴力である。アリアは麻酔作用のある霧が出る爆弾に火をつけて、投げた。


ぐわぁ、身体が、身体が、動かん!などと見苦しいにも程がある断末魔が聞こえて、アリアは軽やかに車両の上へ登った。


上手く電車の接合部分に爆薬をしかけて起爆する。楓がハンドサインでアリアへと合図した。


『早急に戻って来い。』


アリアは訝しげにハンドサインで返す。


『何故だ?まだ敵が居るかもしれないんだぞ?』


やれやれ、と言った口調 (喋ってはいないが)で楓は真剣に返した。


『早急に戻って来い。倶利伽羅が来た。』

次回予告!アリアと楓のぐだぐだ会話を聞けたり、倶利伽羅とイブキが殺しあったり地味に仲が良いのか分からなかったりと、これからが正念場、千年怪奇譚!

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