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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第十章 天壌無窮蒼空国 月影帝国
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 178 星の赤子

何と割とそこそこ長い間話をしていなかった緑珠様の赤ちゃんのことについて話されたりします〜〜!要するに新キャラってことですね!

「……子供、作ろっかな……。」


ガシャンっ!という音が劈く。これは茶器が割れた音ね、と思い緑珠は恐る恐る顔を上げると。


「…………え?」


目を見開いて、底無しの闇で、伊吹は緑珠を見つめている。


「よぉーっしイブキ落ち着こっか!まずは割れた茶器を直そうねー!そしてその出しかけている匕首を直そうってお前私殺そうとしてるでしょ待って待って落ち着きなさいゆっくり近寄って来ないであの」


「……りょくしゅさまが、ぼくのものにならないのなら、手首と足首をちぎって、へやに……。」


「待って。落ち着きなさい。」


ゆるゆるとイブキは匕首を下ろす。よし。まずは何とかなった。


「……いや、でも、そうです、よね。およつぎ、いりますよね……疎ましいなぁ……。」


「最後なんて言った?」


「いいえ、何でも。」


ほらもうそういう顔でニッコリ笑われたら怪しさ満点だ。何でも無い訳無いだろう。


「な、なら男が、が、害虫がいりますよね、あはは……殺したいなぁ……。」


「本音が出過ぎよ。……と言っても、好きな人は居ないし。何ならイブキでも良いんだけれどね。私は。」


「……あはは。………ははは……ハハッ……ふふふ……。」


それを聞いて、伊吹の瞳から益々光が消えていく。


「壊れないでごめんちょっと冗談言い過ぎたわ。」


「冗談じゃなくて……本気でも、良いんですよ……?」

「倫理観的にアウトよ。さてはて、どうするか……。」


ちらりと空を見遣って、緑珠は言った。


「決めた。子供を作るわ。」


「……えぇ。」


低い、沈んだ諦めた、でも何処か希望を掴もうとする声が響く。


「子供って作れるわよね?」


「……えぇ?」


……ん?何か思っているのと違うんじゃあ……。


「そうそう!作っちゃいましょう!」


「……えぇー?」


そういやこの後予定あったっけ?あれ、無い、そりゃ無いよね、作ってないもん、主があんなこと言うから現実逃避するしかないもん。


「そう!一から作っちゃいましょうね!苗床は何にするかなー……。」


「……。」


緑珠の言葉を反芻して、必死に色々考えていたイブキが発した言葉は。


「……だいじょうぶ、ですか?イブン先生に、頭のお薬もらいます……?」










「そして出来上がった者が此方になります。」


「そんなキ○ーピー三分クッキングみたいに言われても……。」


案外複製人間クローンって簡単に出来ちゃうのよ。」


ねー?、と緑珠はもう一歳児くらいの大きさになった子供に頬をすりすりする。やっぱりもう一回思考し直して。


「えっ……?このこは……?」


「人工培養!」


「……卵子は?」


「人工培養!」


「……精子は?」


「もちろん人工培養!」


「……無理矢理にでもすれば良かったかな。」


「なんか今怖いこと言ってない?」


「いえ別に。……ただ荒療治は必要だったな、とは思っていますが。しかし……。」


と、イブキは当たりを見回して。


「いつの間にこんな施設作ってたんですか……。」


培養液が詰め込まれた緑の筒が、部屋中に沢山ある。壁と床は黒く、そんなど真ん中に不自然にベビーベッドが置いてある。


「秘密にしてたもの。貴方に隠すのが一番大変だったわ。ねー、しゅうり?」


「あうっ!」


「……しゅうり。」


「あう……?」


初めて子供を見た訳でも無いのに、イブキは恐る恐る緑珠の腕の中にいる子供に、恐る恐る触れる。


「しゅうり、さま。」


「あうっ!うーっ!」


「かわいい……。」


「可愛いって。良かったわね、しゅうり。」


「ええと、緑珠様。殿下のお名前は……。」


緑珠はそっと子供をベビーベッドの中に置くと、それっぽい半紙を取り出した。


「『柊李』。柊にももと書いて柊李、よ。」


名前の半紙を恐る恐るイブキは触れる。


「やっぱりほら、お世継ぎが居るでしょう?でも後宮なんて作り出したらもう揉めるしそんなのは嫌だし……。だから作ってみたの!私の複製人間!」


「このこ、緑珠様と全く一緒なんですか?」


「思考回路だけは色々弄って変えたわ。一緒だとつまんないものね。」


安堵した表情を作ると、イブキは勿体ぶって緑珠へと言った。


「……ま、今更緑珠様が誰かと一緒になるなんて無理ですよ。」


「はぁー?何よそれー?」


だぁってぇ、と甘ったるい声で、イブキは緑珠の耳元で囁いた。


「……僕が居ないと、なぁんにも、出来ないでしょう……?」


「……い、言われてみれば……。」


「生活もぜぇーんぶ僕が管理してるし。」


「うぐっ……。」


「スケジュールもぜんぶ知ってるし。」


「そうね……。」


「僕以外と結婚するなんて到底無理ですよね。」


「結構焦ったんでしょ。」


そっと緑珠の首に触れて、酷く冷たい視線で見下ろす。


「……当たり前でしょ?」


「っ……あんた首は……。」


「お嫌、ですか?」


そっと首元に接吻を落として満足したイブキは、ベビーベッドに転がる柊李の相手を始める。


「このこ、緑珠様が授乳したりするんですか?」


「……あんたねぇ。」


はぁ、と深く短いため息を作ると、


「流石に私が産んでないから無理ね……。あっ、でもほら此処に。」


瓶詰めにされたなんか明らかにヤバそうな紫色のうねる触手がある。


「この触手を乳首に当てれば授乳が可能になります。」


「それ百億%えっちな目に遭うやつですよ。」


何言ってんだこいつ、と言わんばかりの緑珠をほっぽってイブキは続ける。


「多分無断転載サイトで『赤ちゃんに授乳しようと思ったら〜』みたいな語り口でえっちな (自主規制)の同人誌でやたらめったら堅いタイトルつくやつですよ!」


「くわしい……こわ……。」


「怖がらないで下さい!」


「私の授乳姿見たかったの?」


「えっ、あ、そりゃまぁ……。ええとその、変な意味は無くてですね……。」


イブキは嬉しそうな、まるで子供を持った父親のような表情を作って。


「貴女が優しい顔をして、自分の全てを見詰めて、人を育てる姿を見てみたいなぁって。……えへへ、そう思っただけです。」


「……貴方って時折、凄く純真で素直なところあるわね。そういうところ、好きよ。」


「綺麗な物は誰だって好きでしょう?ね、緑珠様。殿下は他の誰にも見せてないんですか?」


緑珠様は泣き出した柊李を抱き上げあやす。


「もちろんよ。貴方が襲い出しそうだったから柊李の存在を伝えたの。あーよしよし、泣かないで……。不思議ね、自分の子はどれだけ泣いても辛くならないわ……。」


「じゃ、じゃあ、僕が一番?僕が一番最初?」


「そうよ。刷り込み式でいくなら貴方が父親?」


「……やった。」


小さくガッツポーズをしながら、イブキは綺麗な笑みを作って緑珠の手を引っ張る。


「ねぇ緑珠様、皆に会いに行きましょうよ。殿下を抱いて。」


「……この子、私と一緒なのよ?」


「だからなんです?」


「外に出したくない、って言わないのねー、って。」


やだなぁ、とイブキは子供のようにクスクス笑うと。


「僕は貴女が好きなんです。『蓬泉院 緑珠李雅』であり、『蓬莱 緑珠』である貴女が。」


緑珠が唖然としていると、イブキはひょいっと柊李を抱えた。


「ほらほら行きましょう!今日だけ特別なんですからね!最愛の子を抱いて微笑む聖母みたいな貴女を見せるのは!」


ねー?、とイブキは嬉しそうにぎゅっ、と柊李を抱き締めた。あぁ、研究室の向こう側がキラキラ光っている。


だから。そんな純真な感情で喜んでくれるから。素直さを歪みで隠している、そんな貴方のことが──


「……今行くわ。」


笑みが口元に零れた。











「と、とうとう事に及んだんですね……。」


「そうだったら良かったんですけどね……。」


「凄い、勘違いと思い込みが融合してるわ……普通に複製人間の子よ、このこ。」


ハニンシャは柊李をマジマジと見詰める。


「あう……?」


「……柊李、様。柊李様。……良いお名前を頂きましたね。」


「いつか来たる将来で貴方が仕える主ですよ。」


イブキの一言でハニンシャはもう一度じっ、と柊李を見詰める。


「でもビックリしたよ。緑珠って複製人間も作れるんだねぇ……。」


「前々から動物とかで実験はしてたのよ。……何時か人間を創るつもりでね。」


一つ、聞こえるか聞こえないかの声音で緑珠は呟いた。


「それが幾ら禁忌、でもね。」


「あーっ!お兄ちゃん!中庭に居た……!」


「華幻?どうして此処に……?」


ハニンシャがじー、と見詰める隣でリリーも釣られてじー、と見詰めている。


「どれだけ呼んでも来ないから来たの。……あら、その赤ちゃんは?」


「見るかい?」


真理のその声にまたじーっ、と見る勢が増える。一番最初に見入ったハニンシャに、イブキはさらっと声をかけた。


「かわいい、可愛いですね、赤ちゃん。」


「赤ちゃんに構ってるのも良いですけど、ちゃんとお仕事して下さいよ?」


ばっ、とその声に我に返って顔を上げると、一丁前に大人の笑みをそれらしく作って言うも。


「……お兄ちゃんだからってそんな事言うのは良くないですよ?」


「はぁ!?妬くわけ、妬くわけないです!宰相様の考え過ぎですってば!」


「別に僕何も『妬いてる』なんて一言も言ってないんですけど。」


「……あ。」


「口滑らしましたね。糞ガキ。」


にっこり。効果音が着くくらいの美しい笑みを。


「……虎尾春氷の惨殺。」


「やだこわいーっ!はれんちーっ!」


「今度こそぶっ殺してやるてめぇ!そこで止まってろ今すぐぶっ刺してやる!」


「きゃーっ!ご♡う♡い♡ん♡」


死の鬼ごっこを中庭で繰り返しているさ中、真理は柊李付近に結界を張っているし、華幻は二人の争いをぼんやり見ている。リリーは赤ちゃんをうっとりと見詰めていた。


「ま、この時期が一番可愛いよね。」


「この時期も一瞬で過ぎちゃうものね……。」


「一年、二年……あっという間だからね……。」


「一週間で終わっちゃうから……。おむつはまだ足りるわよね。」


緑珠の一言に、中庭に居た全員が動きを止める。


「……え?」


全身が氷に塗れたイブキが、何とかその塊から抜け出して緑珠のその声に顔をやる。


「あら、殺されかけてるじゃない、イブキ。言ってなかったっけ?柊李は『かぐや姫方式』で育つのよ。」


「…………はつみみ、なんですが。」


ハニンシャが緑珠の方を一瞬向いた時に身体からひっぺがす。


「だから二十歳になるのもあっという間なのよね。ほんと。」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!それじゃああと三ヶ月で殿下は……!」


「そうね。三ヶ月も無いわよ。あと二ヶ月半くらいじゃないかしら。」


周りが全く話についていけてないのを見渡しながら、緑珠は再度言った。


「……あれ、言ってなかったかしら?」


それを聞いて皆が柊李を可愛がったのは、言うまでもない。








じかいよこぉぉぉぉぉく!!!

滅亡に苦しい専門家とかスペシャリストとか呼んでお話したりまた大きく物語が動き出す転換点となるお話。

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