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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第九章 所在不明 ???
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 138 破裂

全てをバカにしたような三人とか激おこな将軍様とかやる気満々な伊吹君がたのぉしくネタばらしをしたりする生き生きとしたお話!

「なぁんて、思ってるんでしょうねー!」


「かっこよく決まったとか思っちゃってるんでしょうねー!」


「見てみて!めっちゃかっこよく足組んでらっしゃるよ!?」


「イッタイですねー!やっぱりクソガキですねー!」


『作戦は無事進行中です!見事に騙されてくれましたね!』


三人はしゃがんで一つの画面を囲む。其処にはあの部屋が映し出されていた。


「で、まんまと騙されてくれた所で……。……本来の作戦決行だね。」


「えぇ。それじゃあ……。」


緑珠は立ち上がると、耳の魔法陣丸石に触れながら言う。


「シャルラインの様子は?」


『上手く纏められた様です。』


こくん、とサポートの声に緑珠はしっかりと頷いた。


「了解。それじゃあ私は本庁から出るわ。」


そして二人をしっかりと見ると、


「真理は撹乱している軍をもっと撹乱させて欲しいの。」


「了解っ!壁を全部鏡にしてあげよう!」


ぴしっ、と軽く楽しそうに敬礼をした真理は、にこにこと緑珠に告げた。


「伊吹はとにかく将軍様の足止めを。指示を出さない様にして欲しいの。」


「御意に。」


イブキは何時も通りの笑顔でそう答えると、緑珠は胸をなで下ろした。


「私は行くから。……後は皆、任せたわ。私も頑張るから!」


それじゃあね、と手をぶんぶん振る主をイブキはぼおっと見ていた。


そんなに後ろ見ながら走るとこける……あぁもう言わんこっちゃない……。怪我はしていないみたいだし、また走り出したから大丈夫か?


「それでは僕達もやりましょうか。」


「そうだね。えっーと、全ての壁を鏡にする魔法って……。」


そんな魔法あるのだろうか、とイブキの思考の片隅に考えが浮かぶが、それは今自分のやる事ではない。そっとあの丸石を触れた。


「すみません、あの将軍様が今居る場所は……。」


『五階です。周辺には兵がいる為正面突破はお勧め致しません。』


イブキは辺りを見回すと、窓が一つ、そして本来は出る予定のない飾りのバルコニーが一つ、付いているのが見える。


「嗚呼、成程。……真理、僕は行きます。」


「了解っと。それじゃあ僕はこの魔法を作動させようー!」


窓を開けて、ぎしぎしと鳴るバルコニーに身体を乗せる。軽く飛んで手すりに乗ると、思いっ切り足に力を入れて跳躍した。


あっさり五階まで飛ぶと、そのまま窓に足を突っ込む。力んだ足が窓にめり込んで、紙のように硝子は破れた。


そのまま滑り込む様にして机に着地をすると、体制を立て直して、神器を脇に添えて一言。


「どうも、将軍様。ご機嫌麗しゅう存じます。」


「……は。」


面食らった顔をして、疑問を声に出すことも出来ず、青年はイブキの顔をじっと見詰めている。


「駄目ですよ。幾ら相手を調べる部署だと言っても、相手を殺せる武器くらいは所持させておかないと。」


「……な、何故、先程の連絡は……。」


あぁ、それですね、とイブキは短く言うと、ぶん殴りたい笑みで、


「嘘でぇすっ!勝手に信じちゃって、ばっかじゃないですかぁ?お頭の硬いお役人さんですねぇ〜!」


青年のあの青い瞳が憤怒により真っ赤に染まる。細剣が勢い良く抜かれた。


「あはは、此処じゃ死人が出ますよ。上でやりません?」


「煩い……!黙れ黙れ!」


「あーもう話聞いて下さい、よ!」


匕首を思いっ切り投げると、鈍い音を立てて青年に刺さりもせず落ちる。


「……あー……やっぱり……人間じゃ無い、というか、生き物じゃないんですね……。」


相手の出方を伺いながら、酷く面倒臭そうな顔をしてイブキは言った。


「お前……!」


「妙だと思ってたんですよ。初めにあった時からね。」


キッ、と睨んでも、見抜かれた真実は変わらない。


「だって血肉の臭いがしないんですもの。変わりに腐敗臭が少ししたので。外側にシリコンでコーティングされてるんですかね?」


「止めろ……!言うな……!」


「腐敗臭の原因は血でした。人間らしく見せるため、死人の血でも入れてたんですか?怪我した時に出血して、即座に魔法で直せばある程度の目は欺ける。……真理が僕の回答と違えたのは、恐らく人間として見た、からですね。」


「黙れっ!言うなっ!喋るなっ!」


「それに匕首を投げて当たった時のあの音。金属の塊みたいな音がしましたね。となると、貴方は……。」


細剣の切っ先が伊吹の首元に向けられる。僅かな瞬間に、新たな匕首を抜いて向きを変えた。


「言うなっ……!俺の本当の事を言うなっ!」


「……何がそんなに認められないのやら……。よく分かりませんね。」


一つ下がって窓に手をかけると、伊吹は屋上まで跳躍する。……あぁ、やっぱり着いてきた。


「俺の正体について知った者は生かしておけない。殺す……!殺してやるっ……!」


「……あんまり強い言葉を使うと弱く見えますよ。」


「煩い!黙れ!言うな!」


……煩いのは此方だ。……そうだ、今此奴を無かった事にして、したら、あの御方は、僕の、僕だけの……。


「……雑念、雑念。忠実である為には、多少の私情の犠牲も厭わない、か。」


ぐっ、と神器を構えると。


「殺したいのなら来なさい。……僕の役目は貴方をあの方の従者にする事です。生憎と鉄の塊をいたぶる趣味は無いので、全力で参ります。」


にこっ、と綺麗な笑みを作って。


「覚悟して下さいね。油断してると一瞬で持って行きますから。」









「んー……鏡の魔法……。鏡面仕上げ……。あ、これか。」


魔力を手に込めて壁に触れると、壁が全て鏡になる。オマケにフロアも改造したから動けなくなるのは必然だ。


「うわ、揺れてる……。」


恐らく屋上の戦闘で建物自体が揺れている。こりゃ手加減してないな。


「壊さなきゃいいけど。」


「居たぞ!」


「うわ。」


数人の敵の声を聞くと、真理はげんなりとした。


「……ん?いやいや、あれは僕じゃない……。」


敵は色んなところに頭をぶつけたりしている。やばいこれ笑える。


「くるっと反転!」


ぴん、と指を伸ばすと、敵の一人がぶつかった壁に吸い込まれるように壁が反転する。


「忍者屋敷みたいだねぇ。」


呑気にそんなことを呟くと、周りから苛立つ声が聞こえて来る。そんな声達に真理は言い放った。


「というかさ、君達。気付いてる?この建物が揺れてること。」


確かこの辺りは地震がほぼない地域だ。ならこういう脅しも使えるかもしれない。


「これはね、この建物の下に溶岩が煮えたぎってて、それが吹きだそうとしてるんだよ!」


しぃん、とフロア事態が静かになると。またがやがやと騒がしくなる。


「う、嘘言うな!」


「嘘じゃないさ。本当だよ?」


少し低い声で、壁に凭れながら真理は続けた。


「将軍様が大変な事になっちゃうかもしれないねぇ。……それでも良かったら、僕の相手をしても構わないのだけれど。」


息を呑む様子が見ていて分かる。あーあ、見事に引っかかってるなぁ。無知はこういう時に損だ。


「吹き出そうとしているのなら、敵の相手はしなくても構わないだろう。よし!将軍様を助けに行くぞ!」


そんな声が遠くから聞こえると、真理はくるりと指で円を描いた。


間抜けな悲鳴が幾つか響いて、真理はさっきとは逆の円を描く。床が抜けて閉じ込めたのだ。


「……さて、と。取り敢えずのやる事は終わったかな……。」


近くにあった窓を開けると、良い風が頬を撫でた。


「あとは任せたよ。息をつく暇もない、大切な……。子供達よ。」


そう呟いて、微笑んだ。









唸る様に、伊吹の目の前に炎が踊る。その眼の先には腕から火炎を放っている青年が居た。


「……普通の人間が腕から炎を出せたりします?」


「お前も普通の人間じゃないだろう……!」


「いやまぁ、それはそうですけどぉ。」


ゆるりと踊るように避けて、炎を斬るように『神鳳冷艶鋸』を振るう。


「僕はそれはそれで馴染んでますから。人間じゃなくても構わない。……価値観がかなり違うのは、結構困りものですけど……。」


あはは、と心にもない笑顔を浮かべる。


「……くそっ……!」


「人間じゃ無いことを受け入れるのも、そんなに悪いものではありませんよ。ただ酷く……。苦しい、ものではありますが。」


「……いい。」


「……は?」


青年は真っ直ぐ、憤怒の瞳をイブキに向ける。


「そういうのは、いい。もう沢山だ。聞きたくない。俺は、俺のやり方で……!」


「……鉄の塊を斬る趣味は無いんですがねぇ。」


イブキは一気に距離を詰めると、青年が細剣を振るうよりも早く、神器に炎を纏わせて振り下ろす。


じゅう、と鉄が溶ける音がして、そのまま軽く下がる。


「ぁっ……あぁ、ぁっ……!」


「いっ……!?」


イブキは薄く悲鳴を上げる青年の前で、耳を塞いで座り込む。


何だこれは。鼓膜が破れる。煩い。千切れる。五臓六腑が、裂けていく。


「い、いた、い……!」


この音はモスキート音だ。人間には聞き取れない音を、自分の耳は聞き取ってしまう。ただ、このまま、音が、高くなり続けたら。


「こわれる……!」


モスキート音が、止まった。顔を上げて、見上げると。


「……。」


引き金に指が、かけられて。


瞬きも出来ぬほんの数刻のうちに、銃口に熱が篭もった。








次回予告!!!!

伊吹君が悟って攻撃を思いっきり受けたり緑珠様がそれを助けたり諭したりするお話!

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