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【完結】ラプラスの魔物 千年怪奇譚   作者: お花
第九章 所在不明 ???
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ラプラスの魔物 千年怪奇譚 137 喧嘩

本庁まで喧嘩を吹っ掛けに来たり正々堂々勝負をしたり機械の進み方に驚いたり戦闘シーンが沢山ある躍動感溢れるお話!

「今日はっ!頑張れる!」


「本庁まで来ましたしね……。」


「出てくんのかな、あの不死の子……。」


「出て来てくると良いわねぇ。」


煉瓦造りの公安警察の本庁前で、緑珠は腕を組んでそれを見据えていた。……周りには既に始末した役人が倒れている。


「相手からしてみれば賞金首が来てるんだから、来てくれると思うのだけれど……。こ、これで来なきゃ、結構ショックよね……。」


「にしてもどうやって呼ぶんです?手続きなんて無理でしょうし……。」


「最初っから正攻法で呼ぶつもりなんて無いわよ。良い?見ておきなさい。」


すぅ、と息を吸い込むと、


「賞金首の蓬莱緑珠が来たわよ!さっさと相手なさい!」


「や、やると思ったよ……。」


しぃん、と静寂が訪れると、真理は緑珠とイブキを手元に背後に下がるを


「ど、どうしたの……?」


「……あの不死の子、存外魔法の使い手だったみたいだ。 」


あの青年が細剣レイピアを構える体制を、光の粒は形作る。そしてそのまま緑珠の首に刺そうとするも、それは止まった。


「おっと。駄目だよ。其処で止まってね〜!」


ぴたり、刺そうとした体制で止まると、緑珠は青年に声をかけた。


「ねぇ貴方。一つ私と遊戯ゲェムをしない?」


「……ゲーム、だと?」


「そうよ。遊戯。」


真っ直ぐあの美しい目を見て、内容を説明する。


「私はね、この国を私のモノにしたいの。奴隷区はもう私のモノだし、表の国も私のモノにしたいの。でもその為には貴方達の力が必要不可欠だわ。」


「そうだろうな。」


「だから、今から遊戯をするのよ。私が勝ったら貴方達を皆従者にするわ。貴方が勝ったら私を自由にしていい。殺すも生かすも貴方次第。」


「……ほう。」


「どう?やる?やらない?」


まるで子供に誘いをかけるように微笑むも、青年の反応は芳しくない。


「やる訳ないだろう。此方としても無駄な戦力は使いたくない。」


「あら、そう。なら此方で握っている公安の汚点を国にばら蒔いて私の国にしても良いのね?……搾り取れる対象が無いのは、さぞかし退屈でしょうね〜!」


緑珠の煽りにぴたり、青年の瞳の動きが止まる。


「……成程な。高が三人で何が出来るか分からんが。それ程までに自信があるという事は何か策でもあるんだろう?」


「無いわよ。力技だわ。」


真理は静止魔法を解くと、青年は細剣を下ろした。


「五分待て。……経ったら進軍して構わない。俺は最上階で待っている。」


そう魔法陣に乗って消えると、緑珠は安堵のため息をついた。


「……ふぅ。上手いこと乗ってくれたわね。」


「乗らない訳には行かないですよ。相手方からしてみれば……。」


「そうだね。それじゃあ……。」


と、真理は耳元にある宝石を触った。


「『秘密結社』から貰った『これ』、起動しようっか。」


「そうね。えーっと、確かこれを縦に……。」


左耳についている魔法陣が描かれた平べったい丸石を縦に撫でると、緑珠の周りを大小様々な魔法陣が囲む。


「のわっ!?なっ、何これっ……!」


『……てす…………すと……えー……陛下!聞こえますか!』


「ひぃぃぃっ!聞こえてる聞こえてるぅっ!」


「こ、これ、は……なれ、慣れない、ですね……。」


「ハイテクだねぇ。」


真理だけが何時もと変わらずのんびりと呟いている。が、緑珠は驚きが止まらないしイブキも結構狼狽えている。


『これは遠隔で情報を伝えられる機械なんです!今日の為に開発したんですよ!』


「い、いや、かいはつ、かいはつ……。」


あんぐりと口を開けている緑珠に、女の声は続く。


『無線を小型化して、こちら側のデータを魔法化したあとその丸石に送ってるんです!だからどうしても熱を持ってしまってですね……。』


「いやいや!そういう事を言ってるんじゃなくて!」


『それじゃあ機器の説明をしますね。』


「……あっ、はい。」


相手の吃驚する程のスルー力に、緑珠はそれだけ呟いた。多分周りの二人も説明を聞いているのだろう。


『時間が無いので詳しい事は話しませんが、基本的な設備を話しておきます。』


すん、と緑珠の前に緑で縁取られた地図が現れる。十枚の地図の中に、幾つか赤に縁取られた地図が見えた。


『これは本庁の地図で、緑は外部からも内部からも確認が出来ている区域です。赤の区域は噂、または確証が得られていない部屋となりますので、完全に信用しないようご了承の程宜しくお願い致します。』


「な、なるほど……。」


『それでは次の説明をしますね。』


「……うん。」


地図が消えて、普通の景色が映る。


『えっと。この浮いている人が喋っているボタン、見えますか?』


「見えるわ。これは……。」


『無線です。個別で話すことも可能ですし、グループ会話も可能です。』


「……はぇ……はいてく……。」


『説明は以上です。何かあったら仰って下さい。取り次ぎ致します。説明、お分かりになられましたか?』


「……何となく……。」


『それじゃああと四十秒で五分経ちますので……。』


「えぇ、有難う。」


よーっし、と緑珠は軽く屈伸しながら、目の前の本庁を眺める。


『五分、経過しました。作戦開始時間です。』


「よーっし!それじゃあやって行きましょっかー!」


「たった三人だもの。気抜いてると殺られるよ?」


「……僕は機械で殺られそうですが、こういう戦い方もかっこよくて良いですね。」


「わっかっるー!……ちょっと僕も酔いそうだけど……。」


イブキはそっと壁に寄って開くと、開いた傍から銃弾が溢れる。


「わーお。凄いことになってるわねぇ。」


『敵陣営、表示致します。』


その声に続いて地図が表示される。入口の三又の路に、六人ずつ居るのが見えた。真ん中の六人が打っているのだろう。


『二階にも同じ陣営が居ます。』


「了解!爆破宜しく!」


『御意。』


倒れていた役人が立ち上がり、懐から携帯爆弾を取り出す。そして二階に思いっきり投げた。


「よし!行くわよ!」


「やはり買収作戦は成功しましたね。」


「お金には頭が上がらないものなのよ。」


崩れた煉瓦造りの本庁に、緑珠は足をかける。そして思いっ切り登った。あっさり二階に手が届く。


「登れた……!えーっと、この後は……」


『十字路まで走って下さい!防炎壁を使って敵の侵入を防げます!』


「了解!」


必死に足を進めると、直ぐに明るい十字路が見える。


「彼処だわ……!」


三人が中央部まで走ると、背後で防炎壁が

閉まる。施錠の魔法がかかった。


「人っ子一人居ないですね。」


「待ってると思ってたんだけどなぁ。」


硝子が蔓延る各々のフロアの真ん中に、滝が落ちている。シダが生い茂り、正に自然その物だ。


「き、綺麗な場所ね……外から見たらこんな場所あったかしら……。」


「幻影魔法で見せてるだけだよ。多分……。」


そっと手を翳すと、机と椅子と書類の山が見える。


「書類仕事は何時になっても嫌ですね。」


イブキはうぅ、と頭を抱える。


「これ綺麗に見せてどうしてたのかしら……。」


「……自慢してたんじゃない?知らないけど。」


でも、と真理は首を傾げた。


「それでも居ないんだね。敵。」


「恐らく自分の兵を控えて居るのでしょう。即座に作戦を立てる自信があるというのは、恐ろしいものです……。」


ふぅん、と緑珠は呟いた。左右を見詰めると、扉が一つずつある。


「『秘密結社』、私達分かれて捜索するわ。」


『了解しました。して、どの様に?』


「右の扉にイブキと私で行くわ。真理は左の扉から。サポートを頼むわね!」


『御意!』


緑珠は真理の目を見て頷くと、そのまま右の扉に入った。











『──ッ──ザッ──……炎──使っ……の侵入を防げます!』


『了解!』


「……よし、ジャック完了したみたいですね。」


大きな窓があるテーブルが横一列に並べられたオフィスの中で、そう男は呟いた。


「どうやら監視カメラもジャックしていたみたいですが、その経路を使って相手のサーバーにアクセス出来ました。……これ、は……『秘密結社』のものみたいですね……。」


ほんの数台の電脳パソコンが置かれた中で、公安の男は短く言う。周りには書類の山があり、とてもジャックをする様な環境には見えない。


しかもその書類も、この案件に全く関係の無い物ばかりだ。


「三人でだけと言いつつ背後に何かあると思っていたが、まさか劣化した政権の役人を雇うとは……。」


はぁ、と青年は深くため息をつく。


「見損なったぞ、蓬莱緑珠。まさか此処まで落ちぶれているとはな。」


「おそらく『秘密結社』の新製品だったのだろうかと思います。テストも無しに……。」


部下の言葉を聴きながら立ち上がると、誰に言うでも無く言った。


「彼奴等が言った通りに兵を敷け。俺が出るまでも無い問題だ。」


「了解致しました。B班、D班は『2ー1(にーいち)』箇所につけ。繰り返す。B班、D班は──」


伝達される指示を聴きながら、『将軍様』と呼ばれる青年は、薄く目を瞑った。


己を蝕む退屈さを、具現化した様に。







次回予告!

全てをバカにしたような三人とか激おこな将軍様とかやる気満々な伊吹君がたのぉしくネタばらしをしたりする生き生きとしたお話!

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