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金色の髪の少女

 

 さあ。今日も一日……頑張ろう。


 目の前のピンク頭はSHR(ショートホームルーム)が始まる前からご就寝なさっているが、気にしない。起きてる方が珍しいし、起きてたら起きてたで絡んでくる。さらに言えば、この前放って帰ったのを未だに根に持ってるのか、低レベルな暴言を浴びせかけてくるからな。


 席替えをしてくれたのはいいものの、結局はこだまの後ろの席という何とも言えないポジションだ。しかし隣が世にいうパリピ系女子ではなく菊川だったのが何よりの救い。落ち着いて授業にも取り組める。さらに菊川はそれなりに勉強もできるようで、お互いに教え合うことも出来る。

 てかよ、運動できて、勉強もできて、イケメン……やはり世の中は何か理不尽だ。


 ガラガラッと、重たい扉を開いて入ってきた女性。茶髪でショートヘア、羽根の髪飾りがトレードマークの国語教師。俺の姉貴、もとい本城夕妃先生だ。普段俺には見せることの無い、余所行きの笑顔を振り撒いている。

 なんだ? 今日はいつもよりやたらと機嫌がいいな。



「えー、じゃ、ショート始めますからね」



 実の姉が目の前で教師として喋っているのはやはり違和感が大きい。姉貴が前で話している時、俺が変な顔をしている、と先週菊川に笑われた事もあって真顔を心がけている。



「突然ですけど、今日から3週間、留学生がうちのクラスに来ます!」



 声を張り上げた姉貴は、やけに満足そうだった。

 え? 留学生?

 こんなテスト前に……と思っているのは俺だけらしい。



「え! まじで? 男? 女?」

「どこの子?」

「どこに座るのかな」



 クラスメイトは皆ノリ気である。俺は、一ヶ月経ったと言えど転校生という立場に変わりない。ここはその空気に乗っかるのが処世術であろう。隣の菊川も嬉しそうなので取り敢えずウンウンと相槌をうった。



「彼はそれなりに日本語も上手だからたくさん話しかけてあげてね、じゃ、鈴風(リャンフォン)くん、入ってきて」



 俺は耳を疑った。数日前に聞いた固有名詞だ。忘れるはずもない。

 鈴風(リャンフォン)だと……?



「エット……皆サン、你好(ニーハオ)。中国から来まシタ。鈴風(リャンフォン)デス。」



 拍手が巻き起こる。まだ彼は俺がいることに気づいていないらしい。

 彼の風貌に戸惑う人も少なからずいるが、流石は文系クラス。外国語系に進みたい人も多いため異文化理解はあるようだ。

 今ひとつ理解出来なかったのが、一部女子(パリピ)共の「可愛い〜」と言う発言。男に可愛いってのが理解不能。

 でも、良かった。また逢いにいくとは言ったが連絡手段がないためどうしようか悩んでいたところだったのだ。



「じゃ、そうね……席、あ、ごめんね。この後倉庫まで取りに来てくれる? はい、誰か手伝ってくれる人いるかなー?」



 先月俺が来たために空席が無くなったらしい。ここは俺が手を上げるべき? いや、来てたった一ヶ月の俺が出しゃばっていいのか? 前の方の席では先程の女子共が「誰が行く?」など話し合ってキャッキャ言っているのが目につく。こんな事で目をつけられたくもないし……


 その時、教室を見回していた彼、鈴風(リャンフォン)、いや、リャンと目が合ってしまった。ぎこちなく笑ってみせる。

 対してリャンは……



「アキト!」



 満面の笑みで手を振ってきた。つられて俺も手を振り返す。

 やばいやばいやばい……みんなこっち見てる。パリピ系に、睨まれてるぅ……。



「あら、ア……本城くん、知り合いなのね。じゃ、行ってあげて?」



 まじか……姉キ……じゃなくて夕妃先生までにっこにこ……。

 リャンも、たいへん嬉しそうで……。



「……わかりました」






 SHRが終わり、俺とリャンは夕妃先生に連れられて倉庫へ。

 廊下を歩いている間中、リャンは嬉しそうに辺りを見回していた。アンティーク調の校舎はやはり、留学生の彼にとっては物珍しいに違いない。すれ違った生徒も珍しいものを見たような表情だ。


 たどり着いた倉庫というのも、これまた古めかしい趣のある小屋で、扉もかなり重い。俺と夕妃先生がふたりしてやっと片側が開いた。



「コッチも、開けマスカ?」


「あ、重いわよ。アキ……本城くん、手伝……」



 ガラガラガラガラ



 え?

 嘘だよな?


 軽々と……



「このくらい大丈夫ですヨ。これより重いモノ、持ち上げるコトあるノデ」



 ああ、そっか……そりゃそーだよな。

 空中ブランコとか出来るんだし……それに、やはり日本人の俺なんかに比べて体格もいい。


 俺はひたすらに感心していたのだが、夕妃先生は随分と彼を気に入ってしまったらしい。



「凄いじゃない! うちの弟もこのくらいしてくれればいいのにねぇ……」



 公私混同するなと言ったのはそっちじゃなかったか? なんか嫌味だし。


 リャンもリャンで、「ソウナンデスカ〜」などとニコニコしている。クソ……俺が隊に入るのあんなに嫌がってたくせに。最近はもっとここに筋肉つけた方がいいだの、ここの関節を柔らかくしろだの。

 たしかに、バリッサとの戦いで身体中ボロボロだったし、Dr.レンにも「もっと鍛えてりゃ……」とか言われたし? でも忘れんなよ、俺は一度も全面的に協力しますなんて言ってな……



「ほら、本城くん。突っ立ってないでこれ持つ」


「ハイハイ」


「何? その態度〜」


「別になんでもありませーん」




 彼女が指さしている先の机とイスを二人がかりで持つ。古いものなのでかなり重いが、このままでは、姉弟(きょうだい)ゲンカが勃発しそうだったので、リャンと共にすぐにその場を離れた。


 全く……姉貴は何を考えてんだよ。そりゃ俺に比べりゃ、リャンフォンの方が愛想もいいけどさ、逆にこの歳の男子高校生が自分の姉にニコニコと愛想ふりまく方が気持ち悪いだろ……



「面白いネ。アキトも、先生も」



 不意に話しかけられ反応が遅れる。

 リャンが俺を真っ直ぐ見つめていた。別にそういう()がある訳じゃないが、彼の視線はひたすらに真っ直ぐで純粋だ。自然と俺まで笑顔になる。

 あの土手であんな表情をしていたなんて思えないくらいに、彼の笑顔には人を惹きつける魅力があるのだ。



「そうか? 俺はあの先生苦手だね」


「お姉さんダカラ?」


「まーな」



 ……………まーな……ッ?



「えっ……?」


「やっぱりネ。苗字(ファミリーネーム)が一緒だったカラ、もしかしてっておもった」



 ……お、恐ろしい子ッ

 転校初日にこだまに見破られ……やってきたばっかりの留学生にまで。いや、今回は俺が悪いんじゃない……。姉貴のせいだ。俺じゃないぞ?



「た、頼むからリャン……このことは」


当然(ダングラン)、もちろんだヨ。ボクらだけのヒミツ」



 彼は器用に、机を片手で支えたまま空いた方の手の人差し指を口の前で立てて見せた。


(かわい……)


 おい、何考えてるんだ俺はッ。リャンは男だぞ……。お前……まさか幻術師か何かか?


 ま、(リャン)ならほいほい周りに言いふらしたりはしないだろう。こだまよりは充分に信頼出来る。今度こそ……今度こそ本当にシメられるからな……





 無事一日の授業は難なく終わり、いつの間にか留学生(リャン)のお世話係に認定されていた俺は彼を途中まで送ることにした。

 先日サーカスが開かれていたあの広場は学校からそれほど遠くない。彼らはまだあそこに留まっているのだとか。



「親父さんとは……仲直りしたのか?」



 あれからずっと気になっていた事だった。

 尋ねた途端、リャンの表情が曇る。答えはノーか。



「それより、チョット大変なことがおきた」


「大変なこと?」



 なんだろう……まさか、風太が逃げ出した……とかじゃないよな?

 だとしたらもっと悲惨な事態だし。彼もここには居ないだろう。



「犬が居なくなっちゃったんだ」



 犬……?



「ショーに出てたあの犬達か?」



 そういえば3匹ほどいたような気もするが……

 なるほど。それでリャンと風太の件がうやむやになっているという訳か。いいのか悪いのか分からないが、リャンの表情を見る限り宜しくない事態らしい。



「ウン。それで、犬使いの人が出ていくって言い出しちゃって……」



 それは一大事だな。

 そりゃ親父さんもそっちに手が取られてるわけだよ。


 不謹慎ながら、リャンがあの後怒られてないか心配だったからホッとした。それに、逃げ出したって言うのもライオンや、トラじゃなくてたかが犬。張り紙はって探せばすぐ見つかるって親父も昔言ってた気がするし。



「ねえ、アキト」


「なんだ?」


「アキトは何処に住んでいるの?」



 えー………なんて答えたら正解だろう。

 あの中はケータイは使えるが、GPSはどうやっても使えないし何処にあるかなんて分からない。


 そもそも、組織の名前を口に出したり、誰かに仲間だと告白(カミングアウト)するのも危険だ。どこで見張られているか分からないと日頃から散々注意を受けている。

 勝手に人を招き入れるのも勿論、禁止(タブー)だ。



「何人かと共同で暮らす宿舎があるんだが、そこに住んでる。場所は他の奴らのプライバシーもあるから言っちゃいけないことになってるんだ。ごめん」



 流石、俺。

 苦し紛れだが、どうにか誤魔化す。ごめんな、リャン。俺が殺されるよりはマシだと思ってくれ。

 ここはリャンのピュアさに甘えさせてもらおう。彼は俺の必死の言い訳にそれ以上は踏み込んでこなかった。そして、今日学校であったことなんかを楽しそうに話すのだ。

 俺もつられて、クラスメイトたちの話を面白おかしく話して聞かせる。俺がこんなにお喋りになったのはいつぶりだろうか……



「それじゃ、ボク買い出しがあるからこの辺でいいヨ」


「え? あ、おう」



 もうこんな所まで来てしまっていたか。傾きかけた太陽が商店街のアーケードを貫いて黒いアスファルトを照らし出す。



「またなんかあったら言ってくれよな」



 アーケードの向こうへ歩いていく背中に呟いた。

 聞こえていたのかは分からないけど、リャンは振り返って手を振った。俺も小さく手を振り返す。



 俺は、久しぶりに大股で歩いて帰路へついた。







 あたりに誰もいないか見渡す。

 目の前には一つの電話ボックス。硝子張りの四角い箱はポツリとそこに存在していた。古びた廃工場の裏手、竹藪がザワザワと音を立てる。中に入ろうと取っ手の部分に手をかけた。少し力を入れないと開かない。

 力を入れようとしたその時だった。



「そこのアンタ。なにしてんの」



 突然声をかけられ俺は驚いて振り返る。

 さっき確認した時は誰もいなかったのに……


 そこにはうちの学校のセーラー服を着た少女がいた。太陽が殆ど沈んだせいで、その表情や風貌はハッキリとは分からない。しかしその声は明らかに俺を威圧するような……そんな声だ。



「お前も関係者か?」



 何をしているかという問いには答えずに返答する。ツカツカと歩み寄ってきた彼女は日本人ではなかった。

 ゆるくウェーブした髪は赤毛で、瞳はアメジストを思わせるかのような美しい紫色だ。留学生? にしては日本語が流暢だな。


 問いを問いで返されて機嫌をさらに損ねたか、ちっこい指をビシィィッと突き出して俺に迫る。なんだよこのチビ。

 今日は機嫌が良いからなんも言わねーけど、次やったらキレるから……



「その冴えない目付き、男とは思えないそのヘタレた身体ッ。アナタですわね! お姉様に怪我をさせた元凶はッ!」

挿絵(By みてみん)


 ……ハァ?


 はっきり言って、発言が滅茶苦茶だ。

 女子は何でこうも突然ギャーギャー喚くのかね?



「お前誰だよ。俺、お前の姉貴とかしらないけど?」



 俺はできるだけ優しい言動を心がけるが、目の前の電気ポット少女の電源コードは抜けないらしい。何やら騒ぎ続けているが声が高すぎて俺の可聴域じゃ無いな。

 放っといて別のスポットから帰るか……



 その時突然、喚き続けていた彼女が静かになった。



「なんだ……人違いだったか? 今日ばかりは俺も許してやるから今日は大人しくお家にかえ……」


「シッ……静かにッ」



 彼女の鋭い静止に黙らざるを得ない。

 奥の竹藪を見つめる彼女は周りの空気をピンと張り詰めている。



「おい、何かいるのか?」


「こっちに、来ます……ッ」



 彼女がそういった途端、高さ5mほどの竹が道路に倒れてきた。ゴゥンッッと大きな音を立てる。何が、何が起きてる……ッ。


 竹藪から何かが転がり出てきた。とっさに通学カバンに手を伸ばす。護身のために持たされている刀がコトリと音を立てた。



(まさか……鬼じゃねぇだろうなッ)



 嫌な予感が脳裏を()ぎる。その影はフラリと立ち上がった。

 そして、目が合ってしまった。


 怯えたような、青い瞳。金色の髪は乱れ、長い丈の美しい衣服は汚れていたり、所々穴が空いていたりする。彼女は俺たちの姿を見ると駆け寄ってきた。



「おい、お前が関係者だと思って訊くけど、あれは鬼じゃねぇよな……?」


「彼女は……もしかして」



 駆け寄って来た彼女の背後。竹藪の中からさらに何かが転がり出てくる。その影は二つ。……人間にしては小さいぞ?

 あれは……猿?



「逃げてください! こ、殺され……る」



 彼女はそう日本語で口走り、俺たちの目の前で倒れた。竹藪の中を走ってきたのだろう白い足は傷だらけだ。

 俺はすぐさま倒れた彼女の元へ駆け寄り抱え起こす。

 酷い熱がある。これでよく逃げ続けられたな……


 竹藪の前からこちらを伺う二匹の猿らしき生き物。こちらの様子を窺っているようだ。距離はおそらく5mほど。

 ただの……猿だよな? いや、でも……何かが違う?



 茶色い体毛に覆われた二匹。4本の足があり、四つん這いでこちらをじっと見つめている。眼が……



(眼が赤く光っている……ッ?)



 思い出すのは、夏の終わり。バイトの帰りに俺を殺しかけたあの女の眼。

 背中が寒くなる。



「ぼさっとしてんじゃないですのッ……!」



 ズバンッッッ



 銃声が響いた。

 その音でハッと我に帰る。


 じっとこちらを見ていた二匹がその音を合図にしたように動き出した。驚いて逃げるのではない。こっちに……来るッ。



「ね、狙いましたのよッ?」



 硝煙を白く引く拳銃を構えた少女は焦って何やら言っているが……どうも、狙ったのに外したらしい。

 そんな間にも猿たちは俺たちに向かって走ってくる。


 目の赤い個体など猿にはありえないはずだ……アルビノ個体という可能性もあるかと思ったが、体毛は一般的な茶色だ。だとすれば俺に残された答えはこれしかない。

『鬼』

 動物にまで作用するとは聞いたことがないけど……それ以外考えられなかった。


 俺は抗体があるため大丈夫だろう。でも、このふたりは……ッ



「早く次の弾打て! もう一匹は俺が……」


「さっきのでもう弾はないですのッ」


「ハァアッ……?」



 今なんつった……弾がないだと?



「それでもお前、関係者かッ」


「ッさいですわね! それよりもいい考えがありますの。その子を連れて早く入って!」


「何指図してんだよッ。関係者以外中に入れちゃいけねーだろ!」


「つべこべ言わないでくださいましっ。責任は私がとってあげますので!」



 この女は何を言ってるんだ……

 上から目線なのは置いといて、正気なのかッ?



「危ないッ」


「クソっ……」



 二匹が同時に飛びかかってきた。

 気を失った少女を抱えたまま地面を転がって回避する。カバンから刀を引き抜いた。動物愛護には肯定的な俺だが……相手が鬼だとしたら話は違ってくる。


 少女を背に庇いながら二匹と対峙する。


 どう考えても不利なのは人間の方。銃であれば問題ないのであろうが、俊敏さや反射神経といった点においては動物の方がはるかに優れている。刀ごときでその総合的リーチの差は埋められない。

 冷静に状況を分析すればするほど、自分たちが不利であるという結果が強く突きつけられた。

 そして得られた答えは……



「お前の案を採用だ! 逃げるぞ、手伝ってくれッ」



 猿を挟んだ向こう側、電話ボックスの横でこちらを見る少女に声をかける。不安そうだった彼女は、何故か急に顔を赤くした。

 なんか怒らせたか? 面倒臭いやつだな……



「さ、三秒後ですの! 走って伏せて!」



 な、何が三秒後なんだ……?

 こっちが逃げようとしているのを察したか、猿がまた俺たちに迫ってくる。刀をその場に放り投げ、少女を抱き上げる。その軽さに驚きつつも猿に背を向けて走り出した。



 三秒、二秒、一……



 少女の頭を守りつつ、硬いアスファルトに伏せる。



 直後。


 強い熱線が背中を焼くような感覚に襲われ、固く目を閉じる。



「今のうちに早くこっちへ!」



 少女の金切り声。猿がどうなったかは分からないが兎に角、立ち上がって電話ボックスへ駆け込む。狭い硝子張りの箱は俺たち三人が入るとかなり狭い。無理やり扉を閉める。



「今の、何だったんだ?」


「私の能力ですのッ。周り、気をつけててくださいまし!」



 番号を打ち込む彼女は、慣れていないのか何度も失敗する。焦れったい。焦りが俺の口調を荒くする。



「何してんだよっ」


「っさいですの!」



 ゴンッガガガガカンッ



 硝子を激しく叩く音。

 赤い瞳が四つ。犬歯が剥き出しで、半分焼け焦げたような顔が覗き込んでいる。やはり死んでなかったかッ。しかし、この中には入ってこれないらしい。中にいれば安全……



 ピシッ



 二匹が爪を立てて殴打し続けた部分にクモの巣状のヒビが入る。

 マズいぞ……早くッ



「出来た!」






 景色が反転し、無機質で広い空間に放り出される。

 その場にいた全員がこちらを振り向く。ただならぬ様子の俺たちと、見知らぬ人物。わらわらと人が集まってきた。



「誰か! 早くレン先生を呼んでくださいっ」



 あらん限りの声を張り上げ、助けを求めた。気を失っている彼女の指先が冷たい。早く処置をしないと……ッ。



「どいてどいてッ」



 集まってきた人混みをかき分けてやってきたのは姉貴だ。俺たちの姿を見て安心したような顔になる。



「帰りが遅いから心配してたのよ……フレイアも久しぶりね?」



 俺に突然喧嘩をふっかけてきた赤毛の少女はフレイアという名前らしい。関係者で間違いなかったようだ。



「お久しぶりですの。夕妃さん」


「で、アキト? その子は……」



 その時、Dr.レンを初めとした医療チームが到着した。少女を見てDr.レンも顔を顰める。



「おい、外の人間連れ込んで……何考えてんだ」



 ど、どうしよう……ほら、やっぱり連れてきたらダメじゃんか……

 しかし、フレイアと呼ばれた少女は不敵に微笑む。まさか俺に(なす)り付けるんじゃねぇだろうな?


 俺の腕の中で気を失う少女は透き通るような白い肌、長いまつげが育ちの良さを窺わせる。

 どこかの国のお姫様と言われてもおかしくない風貌なのだ。

 そんな彼女が俺たちやミュートロギアの関係者だとは到底思えない。


 すると、フレイアがこう言い放った。



「彼女は、クレイス=エストラ。リリーの心臓を護る村の長の娘ですの」




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