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悪の限りを尽くす…つもり  作者: 雷抖
東大陸編
48/51

魔導評討連盟最高審議長…デス

今回から投稿時間が変更になります。

学院の中に入った俺達は、なんやかんや話しながら決定戦の場に向かってた。メンバーは俺とリーナと生真面目とボサメガネ。………なんでこのメンバー?


「……つまり、魔力とはあらゆる可能性を秘めた、神秘的な力なんだよ!」


「そうだったんですね……!」


「………盛り上がってんなー」


ボサメガネことマルスの魔法理論を熱心に聞くリーナ。正直俺はあまり興味がない。


「……それで、ボクが今研究しているのは流動魔法なんだ」


「流動魔法?」


「………」


「そう、流動魔法。天系統の一つだね。天系統は他に風魔法と雷魔法があるけれど、ボクが気になっているのは流動魔法なんだ。というのも、実は流動魔法って適合者がかなり少ないんだよね」


「え? そうなんですか?」


「うん。まぁ、流動魔法自体がそんなにメジャーじゃないから、皆あんまり関心が無いんだけどね。でも、流動魔法を扱える人って大体が魔法のエキスパートなんだよ。魔力も人より多かったりするしね」


「ふわぁ……、そうなんだ…!」


「…………」


流動魔法……ねぇ。


「そもそも流動魔法自体が特殊だよね。何かに変化したりするんじゃなく、対象の流れに干渉するんだから。言うなれば、対魔法用魔法って感じだよね。

そんな流動魔法の研究なんだけど、あんまり捗らないんだよね。そもそも流動魔法を扱える人自体が少ないから、解析のしようがないんだよ。ボクも残念ながら使えないし」


「流動魔法かぁ……」


「………」


流石は筆頭魔導師だけあって、魔法に関する事になると饒舌だな。でもまぁ、俺には関係ないね。全く。これっぽっちも。


「ねぇねぇジオさん。ジオさんは流動魔法って使えるの?」


多分何の含みも企みもなく、ただただ純粋に疑問に思ったから、聞いてきただけなんだろう。けど、リーナがそれを言った瞬間にマルスの眼が変わった。………ここはやっぱりアレだな。


「……んや、俺は流動魔法は使えないよ。闇魔法なら得意だけど」


もちろん隠す。敵か味方かも分からない奴が居る中でわざわざ手の内を晒す様なバカな事はしない。………でもこれで、ジオでは流動魔法は使えなくなったな。仕方ないか。


「そっかー。ジオさんでもダメなんだね」


「…あんまり過大評価するなよ? 前にも言ったけど光魔法も扱えないしな」


「それもそっか」


やっぱり特に気にしていなかったみたいだな。とか安心していたら、次の瞬間にリーナが爆弾を投下した。


「光の魔法文字が読めるだけだったもんね」


「………へぇ」


あーあ、マルスの眼が更に危なくなったよ。普通なら自分の扱えない魔法の文字なんて読めないからな。


「ねぇ、ジオ君……でいいのかな?」


ほら、案の定マルスが話し掛けてきたよ。どうにかやり過ごせねぇかな。


「……そうだけど、何?」


「君って、光魔法を使えないのに魔法文字は読めるんだ?」


「……だったら?」


「いやぁ、単純に凄いなぁと思ってね。だって普通なら、必要の無い魔法の文字なんて覚える意味なんて無いからねぇ」


「……見解の相違だな。それに、覚えようとして覚えた訳じゃなくて、ただ単に暇だったから覚えただけだ」


これに関しては本当だ。一時期、本気で何もやることがなくて、仕方ないから片っ端から魔法書を読み漁っていたからな。あの時は早朝から深夜まで本漬けだったな。いやぁ、懐かしい。


「それで覚えられるんだね、君は」


「………もういいか?」


「まだまだ聞きたいけど、目的地に着いちゃったからねぇ。後で聞かせて貰うことにするよ」


「お断りだな」


関わりたくない奴トップクラスだな、こいつ。

それはさておき、マルスの言う通り目的地に着いた。長い廊下を抜けた先にあったのは、開けた中庭っぽい場所だ。四方は壁に囲まれているけど天井は無く、青空が広がっている。中心には少し小上がりになっている四角い舞台がある。材質は見た感じ魔法抵抗と衝撃緩和が高い花晶岩か? 灰色の中にほんのりと淡いピンク色が混じっているのが特徴だな。


舞台の外は短い芝生が生えていて、所々にベンチのようなモノが置いてある。あとはあれか、壁の側に物理、魔法の結界を展開する魔道具がいくつか設置されてる。近くにあるやつを見た所、上級魔法なら難なく防げる程度には質が良さそうだ。特級魔法になると分からないけど。


そんなこの場所のまんなか、舞台の上には残りの四人が既に立っていた。


「ずいぶんおそかったではないか! なにをしていたかはしらないけど、なにをしようとけっかはかわらないぞ!」


「威圧したいならもっと声に迫力持たせてからにしろよー」


「う、うるさいのだ!」


早速喚いてるティアナを茶化しながら、辺りを見回す。………三人か。


「……さぁ、全員揃いましたよ。いい加減出てきたらどうですか?」


ガイアが虚空に話し掛ける。別にイタイ行動ではなく、様子を伺っている奴らに言っている。そのガイアの言葉に、まずは一人が出てきた。


「………ふむ、流石に気付いていたか」


出てきたのは、黒いコートに身を包んだ男だった。といってもどこぞの黒装束達とは違い、品のある恰好、雰囲気だけどな。


「当然だろう、あんなにバレバレならね。さぁ、残りの一人も出てきなよ」


「ん?」


残りの……一人? 残ってんのはあと二人じゃね? なんて思っていたら、黒コートがにやりと笑った。あ、やっぱり。


「そうか、そこまでか」


「……何がだい?」


黒コートの笑みに含まれた僅かな嘲りを察したガイアが噛みつく。……いやでも、それは仕方ないだろ。


「もういいからさっさと出てこいよ、二人まとめて」


こんな茶番に付き合う気はないから、さっさと答えを言う。すると、ガイアが俺を見た後に黒コートを見る。その黒コートは、僅かに驚いた表情で呟いた。


「ほぅ………。あの方すらも見破るか。中々だな」


「うん、だからそういうのいいから早くして」


「む、せっかちだな。だが見破られているなら無意味か」


「そだなー」


軽い声と共に、黒コートが現れた所とは別の場所から、白いコートに身を包んだ男が出てきた。何だこの黒白コンビ。


「君、君は健闘賞ね。オレっちまで気付いたのはまぁまぁだな」


「………」


ガイアから憮然としたオーラが漂ってきた。絶対フルフェイスの下しかめっ面だな。そんなガイアから俺に視線を移した白コートは、変わらず軽い口調で口を開く。


「そんでもって君! 君はかなり良いね! まさかオレっちだけじゃなくあの人まで見破るなんて。優秀賞をあげちゃうよ!」


「いらん」


「なんだよつれないなー」


「ワイト、お喋りはそこまでだ」


「おっと、ラックに怒られちった。んじゃ頑張れよ、赤暗君」


「変な名前つけんな」


終始軽い白コートが黒コートの隣に移動する。すると、最後の一人がいきなり舞台上に現れた。


「ぁ皆々様初めましてデス! ワタクシは魔導評討連盟にて最高審議長を務めさせていただいております、レイルボ・デアス・ヴィラ・シュールリンゲルと、ぁ申しマス! ぁどうぞ、どうぞよろしくお願いしマス!!」


それは、目がチカチカする服を纏った派手な男だった。…いや、つーか嘘だろおい。本人が来やがった……。ヤバい、これは本気でヤバい。


「おや? 皆様反応が薄いデスねぇ、緊張なさってマス?」


「レイルボ様のインパクトが強すぎただけだと思いますねー」


「はて、そこまで過激な恰好はしていないのデスが……」


「え、マジですか」


レイルボと白コートが話しているけど、誰も突っ込まない。つーか、皆レイルボの姿に驚き過ぎて思考が吹っ飛んでるっぽいな。俺ももしも初見だったら真っ白になるし。ていうか真っ白になったし。


「…とりあえず戻ってこい、リーナ」


「ひゃうっ!?」


茫然としていたリーナの背中をツンと突っついたら、現実に帰ってきた様だ。


「あ、じ、ジオさん…。えっと、あの人さっきなんて言ってた?」


「ん? どれだ? 名前? それとも役職?」


「えっと、役職…」


「おっと、それならば今一度申しマス! ワタクシは魔導評討連盟最高審議長のレイルボ・デアス・ヴィラ・シュールリンゲルと申しマス! 以後、お見知りおきをデス!」


「魔導評討連盟……最高審議長!? それって、魔導総戦の最高責任者じゃ!?」


え、そっちでもトップなの? いやまぁ、そうか。じゃないと色々出来ないもんな。……コイツが最高責任者でいいのか?

リーナの言葉に、他の奴らも覚醒した。


「そ、そうか、そういえば最近最高審議長の代替りがあったな…。…しかし、まさか審議長自らこの場にいらっしゃるとは…」


チョビヒゲの言葉にレイルボが答える。


「やはり、良き人材はこの目で見定めたいデスからねぇ。…中々粒ぞろいで期待出来そうデスね」


あー、マズイ。俺的に最大のピンチがやってきたよ……、どうしよ。

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