フルフェイスと生真面目とボサメガネ
ふぅ、間に合った。けどだいぶ短いです。次が長いかも。
「……ガイア・ブルートーン…だったか?」
「ん、覚えてくれていたんだね、ジオ君」
そうか、セインスは団長だしな。自分の代わりとして騎士団の誰かを寄越すのは当然か。…それにしても、よりにもよってこいつか。何でこうも俺が関わった奴が出てくるかな。狙ってんのか?
「む? しりあいだったのか?」
俺達の会話から判断したティアナがガイアに尋ねる。
「えぇ、ちょっとした出来事の最中に」
あれをちょっとしたで済ませていいのかは謎だけど、かといって根掘り葉掘り追求されても困るからな。主に俺が。
「しかしなるほどね、団長の言葉は正しかった訳だ」
「んぁ?」
「あぁごめん、こちらの話だよ」
今完全に聞こえる様に言った気がするけど、厄介な事になりそうだから止めておこう。
そんなこんな話をしていると、また新たな人物がやってきた。
「………君達、こんな所で何をしているんだ? わざわざ道を塞いで立ち話なんて、邪魔なだけなんだけど」
至極当然な事を言ってきたそいつは、くすんだ金髪といかにも真面目です的な姿をしている。あれだ、口うるさいリーダータイプだ。
「む? なんだクライトか。きさまもわざわざワタシのふみだいになりにきたのか」
「カースメイル。今日こそは君の傲慢な物言いと態度を改めさせて貰うぞ」
「ふん、できるものならやってみろ。……きょうがさめた、ワタシはもういくぞ」
憮然としたティアナはそう言って学院に向けて歩き出した。
「おっと、じゃあ僕も行かなきゃね。それじゃあね、ジオ君」
続いてガイアも後を追う。……なーんか、どっかで似た言動の奴がいた気がするけど……別にいいか。
そんなことを考えていると、クライトとかいう生徒の後ろからボサボサ頭のメガネが現れた。
「はぁ、ふぅ、ちょっと速すぎだよソーグラナス君。ボクは身体を動かすのは得意じゃないんだからさ」
息を切らしながらクライトに話し掛けてきたメガネ。……こいつ、かなりヤバい。下手するとセインス以上に厄介だ。
「だから常日頃言っているではありませんか。少しは身体を鍛えた方がいいと」
「いやね、それは分かっているんだよ。ただ、いざ実行しようとするとね、急に魔力の最適化とか魔法と空間の融和性が気になっちゃってね?」
「動きたくない事の言い訳なら要りませんよ」
「相変わらず厳しいなー、ソーグラナス君は」
はぁ、とため息を吐くボサメガネ。………話している事こそ情けないけど、油断出来ない何かを感じる。……何者だ?
そんな俺の考えを読んだ様な事をチョビヒゲが呟いた。
「まさか……、【煉霜卿】…か……?」
……煉霜卿? 何その変な名前。
「んん? ボクの事かい? 出来ればボクの事はネルフェンって呼んで欲しいね」
「も、もしかして、王国筆頭魔導師のマルス・ネルフェン様ですか!?」
リーナが若干興奮気味に問う。…王国筆頭魔導師か、どうりでヤバい雰囲気を感じる訳だ。といっても、普通の人なら気付かないだろうけど。
「そんな様なんて要らないよ。気軽にネルフェンさんでいいよ」
「…まったく、あなたはどうも筆頭魔導師としての自覚が足りていない様ですね。」
「えぇ、だって面倒じゃない」
雰囲気云々を抜きにすると、結構仲良くなれそうな感じがするな。そんなボサメガネがふと何かに気付いたかのように俺を見た。
「………へぇ」
それだけ言うと、ボサメガネ………マルスはクライトに向き直り口を開く。
「ソーグラナス君、早く行こうか」
「……遅くなったのはあなたのせいですけど、どうかしましたか?」
「いや、面白いものが見れたし、この後も面白いものが見れそうだからね」
そう言って、ちらりと俺を見るマルス。…筆頭魔導師には流石に隠し通せないか。そんなマルスの様子を怪訝そうに見ながらも、クライトは頷いた。
「まぁいいです、それなら早く行きましよう。こんな場所に長居する必要性はまったくありませんからね」
言って、二人が去っていく。…つーか、俺達もいい加減行こうぜ。
「リーナ、そろそろ行こうぜ」
「あ、そ、そうだね」
リーナと連れ立って歩き出すと、キノコが慌てた。
「きゅ、キュルス殿、僕等も行かないと!」
「お、おぉ、そうだな!」
こうして、代表者と推薦人全員が揃った。いよいよ、魔導総戦代表決定戦が始まる…………長いわ。




