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悪の限りを尽くす…つもり  作者: 雷抖
東大陸編
35/51

二人の実力

 人間、極限状態になると、信じられない力を発揮するわよね。


「フッ…フッ…」


 迫りくる溶解の舌を紙一重でかわしながら近付き、着実に傷を増やしていく。


「ゲギョォォォッ!!!」


「ハッ…!」


 当てられない事に苛立っているのか、段々と粗雑に、しかし更に素早く攻撃してくる大蜥蜴。とはいえ、攻撃自体が単調になっているなら、例え目で追うのがやっとの攻撃も避けられる。


 そうして避けながら斬り続けてどれぐらい経ったか。遂に、大蜥蜴にかなり大きな傷を与えられた。そしてそれを境に、大蜥蜴はその動きを急激に鈍らせ始めた。


「グゲキョ……」


「セァッ!」


 そして致命的に動きが鈍くなった瞬間を見計らい、憎き邪魔尻尾を断ち切った。


「グギィァァ!!」


「ヤァァァ!!」


 残る力を振り絞り、暴れまわる大蜥蜴の首を、寸断する。


「ゲグッ……!?」


「これで…」


 終わったと、思った。背後で、切り落とした尻尾が、跳ねた。そして、無防備な私を、打った。


「ぁ……」


 それは、そこまで威力の高い一撃ではなかったし、何かの布石でもなかった。その一発を最期に、大蜥蜴は絶命し、その姿が消え失せたから。けれど、既に限界だった私には十分過ぎる一撃で、私は力なく倒れた。


「……ダメ、力が…入らない…」


 何とか意識は保っているけど、身体に力が入らない。…仕方ない、少し休もう。


 しかし運命はそれを許さない。


「ブヒ、ヒヒヒ…」


「!!!?」


 のそり…と、何かが立ち上がる。それは、特に描写もなく吹っ飛ばされた最後のオークだった。


「ブリュヒ…ブリュヒヒ」


「や、やめろ…来るな…!」


 生命の危機だったからか、私の姿のせいか、一部を膨らませた豚が、ゆっくりと、しかし確実に、私に迫ってきた。


「くっ…、こんな…こんなのって…!」


 立ち上がる事はおろか、這いずる力さえ残っていない。このままでは、私は、あの豚に……。


「き、騎士として、屈する訳には…いかない!」


 ほんの僅かにだけど、力が戻る。これなら…と思って腕に力を込めた時、目の前に影が。


「ぁ……」


「ブヒィィヒヒヒッ!!」


 もうすでに、やつは、めのまえに、いた。


「……ぁぁ」


 豚が手を伸ばしてくる。私は目を「ブギ」きつく閉じ、全てを拒んだ。


「………?」


 けれど、何も起こらないまま数秒が過ぎる。いえ、途中で何か聞こえた様な…。恐る恐る目を開けてみると、そこには何も居なかった。


「え………?」


 何が起こったのか、状況が把握出来ない。更に数分が経過し、辛うじて魔力が僅かに回復したので《治球》を唱えて身体を癒す。


 何とか動ける程度には回復したので、立ち上がる。一体何が起こったのか。


「………あ」


 "それ"を見つけて、私は全てを理解した。


「そうか、そういうことね」


 それは、岩だった。先が尖った岩。先端が汚い血で染まった岩。


「上から降ってきたのね」


 見ると、天井には他にもグラグラしている岩が見受けられる。先程までの戦闘で崩れそうになっていたのね。


「ふぅ、幸運だったわね」


 そして私は、出口に向けて歩き出す。漸くここを出られそうね。


「ふぅ、皆と合流したら、ひとまず休みたいかな」


 なんて呟きながら通路を進むと、やがて光が…。



「「「ゲギョッゲギョッ」」」


「ほう、まさか単独でヘヴリグを討伐するとは、少々見誤っていたかな?」


「………」


 辿り着いた先は、煌々と明かりで照らされた大きな部屋で、黒衣の男が一人と、大蜥蜴が三体待ち受けていた。


「ククク、その様子だと、既に戦闘力は残っていない様だな。…しかしオーク共の繁殖用に捕らえたは良いが、逆に殲滅されるとは、やはりあの改造ではダメだったか」


「………貴様…」


「うん? 何を怒っている? 繁殖用だったからこそ、生かしておいてやったのだぞ? むしろ感謝して欲しいな」


「ふざけるなっ!!」


 黒衣の男に剣を向ける。


「貴様は絶対に許さない! 捕らえて牢獄に繋いでくれる!」


「………状況が理解出来ていない様だな」


 男がパチンと指を鳴らすと、大蜥蜴達がわさわさと私を取り囲む。


「っ…!」


「……ふむ、オークの繁殖用にと思ったが、ヘヴリグの玩具にでもするか」


「おっと、それは聞き捨てならないね」


「誰だ!」


 唐突に、黒衣の男よりも向こうから声がした。聞き覚えのあるその声の主は、壮麗な剣を抜き放つ。


「貴様…、騎士団の者か! どうやってここに…!? そんな報告は…」


「あぁ、向こうの連中なら既に捕縛済みですよ」


「ば、馬鹿な!?」


「いやぁ、大変でしたよ? 何せ貴方の目がある限り、向こうの位置は掴めないのですから。…まぁ、貴方が丁度何かに目を奪われていたので、どうにかなりましたけど」


 その言葉に、男は私を見る。


「…そうか、この娘は囮か…」


「え…」


 囮?


「あぁ、テトラス。その事については後で説明するから、ちょっと待っていて」


 そう言って、【明光騎士団】団長、セインス・カースメイルは、高らかに宣言する。


「無駄な抵抗は止めて、大人しくしろ。さもなければ、斬って捨てるぞ」


「……ふん、貴様一人で、こいつらを倒せるとでも?」


私を取り囲んでいた大蜥蜴がが、セインス団長に接近する。


「…つまり、大人しくするつもりはないと」


「当たり前だろう。…さぁ、やれ!」


 男の声に、大蜥蜴達が団長に飛び掛かる。


「ゲギョォォォッ!!」


「うるっせぇぞデカトカゲ!!」


「ゼイヤァァ!!」


「さて、では私も……フッ」


 団長の後ろから、カルス隊長と【閃鈴】の隊員が飛び出して大蜥蜴を迎え撃った。そして団長も一体の大蜥蜴を押し止める。


「ったくよォ! テメェのせいで人手不足だぜこんちきしょう!」


「あはは、もういいじゃないですか、しつこいなぁ」


「笑って済ませられる問題じゃねぇだろうが! 無事なのが俺を含めて五人しかいねぇんだぞ!」


「それで制圧出来るんですから、優秀ですよね」


 隊長と団長が何かを言い合っている。そういえば、他の皆の姿が見えない。何かあったのかな?


「っと、ちょこまかとウザッたらしいトカゲだなおい! 《剛扇火(ごうせんか)》!!」


「もっとスマートにいきましょうよ。《光彩刃(こうさいじん)》」


「「グゲァァ!!?」」


 カルス隊長は扇状に広がる荒れ狂う炎を放ち、セインス団長は光を纏った剣で大蜥蜴を切り裂いた。どちらも、私では扱えない魔法だった。


「…チッ、意外としぶといなコイツ」


「ですね」


吐き捨てる様に言う隊長。でも、大蜥蜴は所々が黒く焼けていて、かなりの痛手だと思う。それに団長の方に至っては、右後ろ足のつけ根から尻尾のつけ根までを斜めに切り裂いている。もうあれはトカ/ゲって感じね。


「……これが、【明光騎士団】の力という訳か。だが、ヘヴリグの真価はこの程度ではない!」


 男はそう叫んで、再び指を鳴らす。すると今度は、何処からともなくオーク共が涌き出てきた。気持ち悪い。


「ゲギョッ!」


「あん?」


「ほう」


「マズい…!」


大蜥蜴がオークを喰らう。すると、先程戦ったモノと同様、傷が再生していく。


「へぇ、メシ喰って再生ね」


「それなら」


 二人が同じ様に剣を振りかぶり、同時に口を開く。


「「一撃で仕留める!!」」


「《覇撃閃(はげきせん)》!!」

《光凰斬(こうおうざん)》!!」


 同時に降り下ろした剣からは、異なる魔法が放たれた。

 カルス隊長からは、身がすくむ様な迫力が込められた不可視の一撃が。

 セインス団長からは、光輝く鳥の様な姿をした神秘的な一撃が。


「「グギャッ……!!?」」


 せっかく再生した大蜥蜴だけど、今度は跡形もなく消し飛んだ。…これが、特級魔法使いの実力…か。


「さぁーて、あとは邪魔なザコを一掃すればおしまいか?」


 オーク共を睨み付ける隊長に、団長は首を横に振る。


「いや、あと一体居るよ」


「あ?」


 団長が促した先には、【閃鈴】の先輩(私目線)が大蜥蜴相手に四苦八苦していた。


「……ま、放っといても何とかするだろ」


「そうですね」


 あっさりそう言ってオーク殲滅を開始する二人。…先輩、頑張って下さい!

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